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短編集  作者: 燐火
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精霊王の子孫

精霊王の血を引く者は知っている。


過去の古い古い御伽話を。


ただ、御伽話を知る者は皆、王に聞かれると口を閉ざす。


それも、その御伽話は王の先祖の話だからだった。





「あっ!おばあさま!」


たっとかけ行く町の流行をかたどったワンピース姿の少女。ありきたりな亜麻色の髪に遮られた美しい顔はキラキラと輝いて見える。


「…あら?どうしたの、レアン」


レアンと呼ばれた少女はまだ40にも見えない美しい初老の女性に抱き着いた。レアンは少女らしく女性に尋ねる。


「ねぇ、おばあさま。私にはおばあさまと同じ精霊王様の血が流れているのでしょう?」


少女と女性の顔立ちは驚くほどに似ていて、人間とは思えないほど美しかった。2人の持つ瞳の色は美しい銀色。人にはあらわれるはずのない色と言われていた色だった。


「レアン、もう少し場を考えてちょうだいな?…取り敢えず、私の部屋で話しましょう」


少女と同じく亜麻色の艶の良い髪をした女性はにっこりと笑い言った。手をつなぎ、2人は女性の部屋へと消えた。


高級そうな造りの良いソファに座った2人は横に並んでいた。侍女の入れてくれたお茶に舌鼓をうち話を始める。


「さっきの話はどこで聞いたの?レアン」


そう聞く女性の目は真剣だ。


「昔ね、王城にお母様が連れて行かれそうになっていたときね、私は箱の中に隠れていたのだけれど、お母様が泣きながら言っていたの。”私は精霊王の血なんて引いてないわっ”って。兵士の人たち?は精霊王の血をお母様が引いてるなんてこと一言も言っていないのに。だから、知っていたの。あの男の言っていることが本当なんだって」


一気にしゃべった少女は女性を見てにっこり笑う。年に似合わぬ大人びた笑い方だった。ただ、目はレアンも女性と同じく笑っていなかったが。


「…。そういうこと…。レアン?そのことは誰かに話した?」

「いいえおばあさま、私だって馬鹿じゃありませんもの」


にっこりと2人は笑いあうが少々恐ろしく感じて、2人のそばに控えていた事情を知っていた侍女は1歩2人から離れた。そんな些細なことに2人は気がつかず、笑いあう。


「まぁ…あなたの母は」

「自業自得ですよね、おばあさま」

「…そういうことになるわね…」


***



古い古い、御伽話をしよう。


昔々、精霊王様はとある1人の男性に恋をしました。その男性も、精霊王様に恋をしていました。両想いだった2人はすぐにくっつき愛し合い、一人の女の子をもうけました。


その生まれた女の子は、とても美しくまた、二親から愛されて育ちました。それゆえか、その子は性格も容姿もすべてが完璧と言われるほどになったようです。そうなれば、もちろん沢山の男性から求婚されるようになりました。


しかし、その女の子は幼いころから心に決めた婚約者を持っていました。その婚約者も、未来的にはその女の子と結婚をする気でいました。


しかし、それは一人の愛に狂った男性により壊されてしまったのです。


ある日、その王族であった男性はその女の子をさらい、監禁して無理矢理、事に及んでしまいました。


幸いにも、女の子に子は出来ませんでしたが、婚約者や、二親がその女の子を助け出した時にはもう狂ってしまっていました。


その女の子の心は、10年も根気強く接した婚約者によって救われましたが、母である精霊王様と父は許さず、その男性に呪いをかけました。


その呪いは、精霊が見えなくなり、声も聞こえなくなり、契約もできなくなり、嫌われる呪いでした。


その呪いは、その男性の家族である、王族全体にまで及びました。それも、その男性を甘やかして育てていた王族のせいでいろいろな人が迷惑をこうむっていたからであり、その一端にその女の子の事があったからでした。


その男性の血を引くものは、呪いを解こうとしましたが、それもできず、そのまま時は流れました。


幾年もの時がたち、長き時を生きるものでさえ、その出来事を忘れた頃。


男の血筋は、その時と変わらぬまま、とある国の王族のままであった。


その男の血筋は、すでにその出来事を忘れ去り、呪いだけを解こうと躍起になっていました。


呪いを解くために、男の血筋のものは精霊に頼もうとしましたが、それは無理でした。何しろ、精霊に嫌われるようになっていたからです。


しかし、男の血筋のものは見つけ出してしまったのです。精霊の血を引くという者を。


それは、精霊王の血を引くという者でした。男の血筋のものたちは歓喜しました。何しろ、これで呪いがとけるかもしれなかったからです。


その精霊王の血を引く者を夫(と子)から引き離し、その者を妻とした男の血筋のものは知りませんでした。


それが未来の災いにつながるということを。


それが精霊王たちの逆鱗に触れるということを。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




*レアン


精霊王の血を引く者の子供。男の血筋のものには隠れていたから見つからなかった。見つかっていたら連れ去られていたのでラッキー。小さいころから頭がよく、母に精霊王の血を引くことは言わないようにときちんと言い聞かせたが、母は少々頭が緩かった。神童ともいえる子で、精霊王の血が結構強めの子。先祖返りみたいな。


*おばあさま


精霊王の血を引く者であり、レアンの祖母。古い御伽話を小さいころから聞かされていたがゆえに、人に対してあまりいい感情は抱いていない。幼いころから頭がよかった。ただ、あんな頭の緩い娘を生んだことが少々…。若々しい。この人も精霊王の血が強い。


*お母様、精霊王の血を引く者


レアンの母であり、ただいま王城に監禁中。少々頭が緩く、失言をした。もう出られないから、せめて娘は守るためにと、娘の事は絶対に話さないよう精霊に誓った。そのため、娘は安全。夫はレアンの祖母に預けている。泣き暮らしをしていて、男の血筋のものに色々と言われている。それで余計泣くという悪循環。


*お母様の夫


ただいま、妻をとられて、妻を取り返すために奔走中。でも無理かなぁって半分あきらめている。義母のところで娘であるレアンと一緒に過ごしている。


*侍女


祖母の幼いころから精霊王の血を引く家で侍女をしているベテラン。一族でその家に使えているので、古い御伽話も知っていた。彼女のいれる紅茶は絶品。


*精霊王様


とある男性に恋をして、夫にした行動力のあるお方。娘をさらわれた時には天変地異を起こしかけたほど怒った。呪いだけにしたのはある意味すごいと思うと真顔で言ってのけた。強い。


*精霊王の夫


精霊王に恋をして、その精霊王に夫にされたある意味すごい人。ただいま、精霊になって王様とラブラブしてる。娘も精霊で家族そろって楽しく生活している。


*精霊王の娘、女の子


婚約者と一緒になる前に男によって純潔を奪われた超かわいそうな子。今ではあんまり気にしていないけれど、婚約者と父と息子たち以外の男性は苦手。完璧超人。


*娘の婚約者


女の子と一緒になる前にかっさらわれた。男には身分を無視して殴った。殴り殺しそうなところを、精霊王とその夫が止めた。何しろ、殺されると苦しみを味わらせにくい。それで、止めた。傷が治ったころにもう一度殴りに行こうと決意したある意味強い人。


*男


女の子に恋しちゃって、手に入れるためにさらって監禁してことに及んだ人。ある意味狂っていた。小さいころから皆に甘やかされていたので、何でも手に入るとか勘違いしていた人。罰は下った。


*男の血筋


呪いを解きたい!となって精霊に頼めないから…と精霊の血を引く者を探したある意味執念深い人。ただいま精霊王の血を引く者を監禁中。さっさと呪いを解いてくれっ!



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「早く呪いを解いてくれよっ!」


暗い部屋でもれる嗚咽を聞いていると、こちらまで欝々としてくる。その部屋の中心にいる人影はそのまま、嗚咽を漏らしつつ答えた。


「…し、知りませんっ……そん…なの…知ら…ないん…ですっ…」


それでもと、もう一つの扉のほうに立つ人影は声を荒げた。


「お前は精霊王の血を引いているんだからそれぐらいできるだろうっ!!」


『そんなことするわけないでしょう?』


部屋の中心にいる人影に寄り添うようにして現れたものはそう言いながら、笑っていない目を細めた。



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