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「その口で一体何人の女を口説いたの?」
「愛」について。みっつめ。
ふふってわらう。
あらあらあらと言う言葉は飲み込んで。
送られたグラスは、手を冷気で包みこむ。
あまり知られていないレディキラーのカクテルを手に、私は目を細めた。
あちらのお客様からです、そう告げるバーテンダーの貼り付いた笑みに口端を吊り上げる。
カウンターに肘をつき、あちらのお客さんとやらを眇める。
暖かな美貌、あれでふにゃりとした笑みを向ければ、男女問わず堕とせそうな。
けれど、その顔に乗っているのは、なにもない。
男をじっと見つめたまま首を傾げて、グラスにくちづける。
ふっと、男が笑った。
ニヒル。
その一言が脳裏に反射する。
少しどきりと高鳴った胸に、とんでもない男だと、場の空気さえ酒の肴としてカクテルを含んだ。




