「硝子の心×鎖国」
外の世界は優しいかしらそれとも厳しいものなのかしら
***
世界平和。
かりそめのそれを保つために作られた全国中立の学園。世界に名高い賢君や淑女を世に送る世界一の学園だ。13から入学を許可されるそこは、入るのも出るのもなかなかに難しいと話題である。
素晴らしい学園といえども暗部はある。
いつだって、どこだってそうだ。
いじめ。
入るのができる子達が多いとは言え、未だ13になったばかりの少年少女だ。それももっぱらが甘やかされた貴族や商人の子らである。自身の責任を自覚しているものもいる一方、考えなしの賢い馬鹿といった矛盾したものもいるのは事実である。そう、そんな考えなしの馬鹿にいじめられる哀れな少女がちょうど1人いた。
***
ミコ・オーバ。
遠国よりこの学園に入学した13の少女。成績はどれも優秀で先生からの覚えも良い生徒だ。
身分がないと言うことを除けば。
本人は何も言わないものの従者をつけず、食堂ー世界の国ほとんどの料理が食べられるが、いささか高めーを利用しないのだ。手ずから作られた質素な弁当に、周囲は少女は平民だと思い、その優秀さをねたんだ。
そして運の悪いことに少女の学年には、大国の王子が2人、王女が3人ととんでもなく重なった年度であり、それによって学年の多く4分の3以上が貴族なのである。
そんな中で1人優秀すぎる成績を取る少女が注目されるのは必然だった。平均60の中、最高得点、95を誇り、次点の80をとんでもなく引き離す少女。やっかみを受け、貴族からの嫌がらせが来るのは当然だった。
そして幸か不幸か、事件は重なる。
卒業パーティーの日であった。
少女のではなく、少女の3つの学年の。そんな中でミコに、貴族の少女たちは堂々と嫌がらせを行った。
「このようなものたちばかりですのね」
飲み物を被ったまま少女は言った。その声はなぜかその場に響いた。
ただの少女の声である。周囲はざわついていた。当然のことならながら、小声であった。
それは響くとも思えないものであった。
けれど、その声が響いた。一瞬にして場は静まった。
「帰りますわ。国に」
「御子様」
再びざわめきが戻る前に、発された少女の言葉にどこからか黒い人が現れた。
東国に伝わる忍のようなものであろう。その格好をした人に周囲はまたもやざわめく。
東の果ての国が、まさか、とざわざわしだした周囲をよそに彼ら2人はただただ話を続けた。
「帰られるんですね。やっと」
「えぇ、ここまでされたら帰るわ。外の御人は厳しい方ばかりでした、とね。そう伝えるわ」
「かしこまりました。では帰りましょう。ミコ様」
***
そして。
東の果ての国は外交路をほぼ完全に閉ざした。東の果ての国として代表が外に出ることもなくなり、定住予定や知り合いがいないと入れないようになった。また知り合いがいたとしても、悪人は完全にシャットアウトされるようになったのだ。
外の世界は優しさもあったかもしれないけれど、厳しかった。人々の心が乾いていたのだもの。満ちようとせぬ心は満たされないし満たせないものなのよ。そう後につぶやいたミコはなんとも悲しげであったという。




