「秘密の逢瀬」
とろりと甘く、蜂蜜のようにとろける瞳に、焦がれた色が見えた気がして、顔を近づける。
互いを互いの水晶に閉じ込めて、今度は確実に捉えた君の焦がれた懇願の色に、少し悪戯をしたくなって、耳に吐息を近づける。
薄赤く染まったその肌は、思う以上に甘い。
唾液で光を反射するそこに夢中になったように装えば、小さく微かな、やぁという君の声が漏れた。
とろりと理性を溶かされ、我慢ならず紅く映える唇を自身のそれで塞ぐ。
ん、と口内に互いの声を響かせて、それと共に水音が広い部屋に小さく響いた。
プハリと夢から覚めたように口を離す。
君と繋ぐ銀の糸に、小さく笑って、そのまま首に唇を寄せる。
キュッと吸い上げれば、赤く咲く花に、ちくりとした痛みが走ったのかどこかはっきりした……けれど、甘いままの瞳をむけてきた。
「ん?」
そう首を傾げて見せれば、君はいきなり俺の首筋に顔を寄せた。
ちくりと走った痛みに、お揃いにしたのか、そう思って、顔を上げた君と目を合わせて笑った。
電子音が空間を引き裂く。
携帯のアラームが、この逢瀬の終わりを告げていた。
その数秒後、予鈴の鐘が鳴り響き、そっとため息をついた。
首筋を顕に、花を咲かせている君がなんとも愛らしくて、目に毒だ。
貪りたくなるほどの激情を抑制して、自身のシャツのボタンを止める。
シュルリと首元のリボンをつけ終えた君は、まだ少し甘さを含んだまま、名残惜しげに告げた。
「もう、いかないと」
「また、放課後に、な?」
俺よりも低いその頭を撫でて、触れるだけのキスを交わす。
もう一度だけと請われ、もう一度触れるだけのキスをして、君は決心したように部室を出た。
その顔があまりにも可愛くて、崩れそうになる表情と、ほてったままの顔をなんとか冷まして部室を出る。
ガラリと教室の扉を開けて中に入れば、修羅場だと思っている友人が進捗について尋ねてきた。
どうにかなっているよと既に出来上がったことを隠して伝え、椅子に座る。
多少イライラしていても作品の話だと誤解してくれるのはありがたい。
次の授業なんだっけ、そう聞けば、古典! と食い気味に返答があった。
古典の教科書とノートを机の上に出し、窓の外を見上げる。
唇にかすかに残った熱を、そっと指でなぞった。




