「白」
ジリジリと肌を焼く熱気がやけにまとわりついていた。
八月、お盆だなんだと実家に呼び戻されていた。
赤く染まった日はずるずると居残り、地面に濃い影を残している。
あたりの木々が赤黒く留まる。
実家近くのコンビニはさほど遠くはないとは言え、都会と比べれば数はなく、近くもない。
けれど、散歩程度にはちょうど良い距離感だった。
風が止まり、熱気が止まる。
日の赤と影の黒が強烈な違和感となって目に焼き付いた。
影の黒の中に、白と赤が見えて立ち止まる。
小さな白蛇。
赤い血が流れ出ていく様が止まって見えた。
踏みそうな場所に横たわるその白をそっと掬った。
木の根元にそっと白い細長い肢体を横たえる。
ぐちゅりといかようにも扱えそうなそれが、やけに小さく見えた。
じぃと、見つめて。
風が吹いた。
熱気が頭に立ち上ってくる。
そういえば、飲み物を買いに来ていたのだ、そう思い出して夕日をすがめた。
時折吹く風に影がゆらめいている。
暑くて暑くて、汗が噴き出すように体表面を流れ落ちる。
数歩、歩みを進めて。
ふと振り返れば、黒い影に包まれた木の根元に、小さな白は見当たらなかった。
夜半、熱気はおさまることなく、時折吹く風すら生ぬるい。
田舎らしく畳に敷かれた布団に、時代錯誤な蚊帳が天井から吊るされていた。
火のきえた部屋でじっと座っていた。
からからと扇風機が回る。
タオルケットに、じとりと汗が滲む。
寝巻きがわりのTシャツが既に気持ち悪い。
ちりん。
鈴の音がした。
目を開く。
月明かりが庭に降り注いでいた。
ちりん。
鈴の音、先ほどよりも大きい。
タオルケットを傍に投げ捨て、蚊帳を出る。
窓が開け放たれた庭に、不審な影は何もない。
ちりん。
今度は耳元でなった。
振り返っても何もない。
もう一度庭の方を見て、縁側に見慣れぬ箱があった。
白い箱だ。
夕方、赤の中で見た小さな白を幻視する。
青い闇の中で、静謐に光るその白。
取り上げたそれは小さく軽い。
周囲は未だ、夜の闇に包まれていた。




