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短編集  作者: 燐火
25/39

「白」



ジリジリと肌を焼く熱気がやけにまとわりついていた。

八月、お盆だなんだと実家に呼び戻されていた。


赤く染まった日はずるずると居残り、地面に濃い影を残している。

あたりの木々が赤黒く留まる。


実家近くのコンビニはさほど遠くはないとは言え、都会と比べれば数はなく、近くもない。

けれど、散歩程度にはちょうど良い距離感だった。


風が止まり、熱気が止まる。

日の赤と影の黒が強烈な違和感となって目に焼き付いた。


影の黒の中に、白と赤が見えて立ち止まる。


小さな白蛇。

赤い血が流れ出ていく様が止まって見えた。


踏みそうな場所に横たわるその白をそっと掬った。


木の根元にそっと白い細長い肢体を横たえる。

ぐちゅりといかようにも扱えそうなそれが、やけに小さく見えた。


じぃと、見つめて。


風が吹いた。

熱気が頭に立ち上ってくる。


そういえば、飲み物を買いに来ていたのだ、そう思い出して夕日をすがめた。

時折吹く風に影がゆらめいている。

暑くて暑くて、汗が噴き出すように体表面を流れ落ちる。


数歩、歩みを進めて。

ふと振り返れば、黒い影に包まれた木の根元に、小さな白は見当たらなかった。



夜半、熱気はおさまることなく、時折吹く風すら生ぬるい。

田舎らしく畳に敷かれた布団に、時代錯誤な蚊帳が天井から吊るされていた。


火のきえた部屋でじっと座っていた。

からからと扇風機が回る。


タオルケットに、じとりと汗が滲む。

寝巻きがわりのTシャツが既に気持ち悪い。


ちりん。

鈴の音がした。


目を開く。

月明かりが庭に降り注いでいた。


ちりん。

鈴の音、先ほどよりも大きい。


タオルケットを傍に投げ捨て、蚊帳を出る。

窓が開け放たれた庭に、不審な影は何もない。


ちりん。

今度は耳元でなった。


振り返っても何もない。

もう一度庭の方を見て、縁側に見慣れぬ箱があった。


白い箱だ。

夕方、赤の中で見た小さな白を幻視する。


青い闇の中で、静謐に光るその白。


取り上げたそれは小さく軽い。

周囲は未だ、夜の闇に包まれていた。




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