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短編集  作者: 燐火
23/39

銀は微睡む、銀の未来を

前回の続き。


 ロン しなやかな弦の音がなる。故郷で聞いたハープの音色ともまた違うそれ。

 より力強く、空気を震わせるその音を呼び声にするように、柔らかな緑の光が差し込んできた。


 薄明るい畳の敷かれた部屋の向こうに亜麻色の板敷の廊下と緑の美しい初夏の箱庭がある。

 まだ痛みの残る体をゆるりと起こした。


 ロン ロン 竪琴をつまびく青年は、起き上がった私をみて、虹色の目を細めた。


 一体どうしたんだい、そう笑いながら聞いてくる青年。

 竪琴は、青年の手で柔らかな音色を奏でていた。



***


 爪が弦を弾き音を奏でる。

 やわらかく、物悲しげな音階は穏やかな初夏をそのまま映し取ったようでもあった。


 余韻を残して竪琴から手を離す。

 布団の中で膝を抱えてこちらの音を聞いていた少女に僕は近寄って隣に座った。


 こんな形で人としばらくぶりに触れ合うことになるなんて、全くもって想定外にも程があった。

 撫でた少女の頬は、同じ形をしているとは到底思えないほどに柔らかい。


 これから。

 二人で過ごすこといなるのだろうと"見た"未来に笑みをこぼす。


 人にしては珍しい銀の髪に青の目を持つ少女。

 ぽつり、ぽつりと話し始めたことは、集団意識の強い人間にはありがちなこと。

 とくに、不況であればあるほど、社会が未熟であればあるほどに簡単に起きることだ。


 いじめというにはよりひどく、きっと、少女の言う"村八分"よりも女としての砦が破られなかっただけマシであろう状態であったのが、"見"ればわかってしまう。

 それでも、そんな過去をおくびにも出さずに僕に質問してくる少女に絆されてしまったのだろうか。

 そうでなければ、僕のあの過去の辛い記憶を面白おかしく語ることも、笑うこともできるはずがない。

 少女をここに泊めようとするはずがない。


 そして、僕の名を少女に伝えるわけがないのだ。

 本当に、"見"たとはいえ、信じられるような未来ではない。


 とはいえ、僕自身、今僕がこうなっていることも、昔の僕には信じられるようなものではないのだから、それはそれでほおっておいても問題はないのだろう。

 "見"た未来と違う思いを今は抱いていたとしても、きっと、その未来になってもおかしくはないのだ。


 光がだんだんと午後の眩しさへと変化していく。

 廊下の向こうの空を少女とゆったりと眺める。


 布団に寝っ転がって少女に寄り添うように眺める空。

 その空はすでに昨日のものとは違ってしまっている。


 段々と重くなっていく瞼に銀の髪が目に映った。

 口が勝手に動く。


 一度も起きたことのなかった、未来を告げる言葉をそっと少女に伝えていた。

 少女が青い目を見開いたのを最後に僕の意識は落ちていった。


 "光をあつめよ、そなたの力にして変化の源を"

 それこそ、銀の少女と虹の青年の未来へと繋がっているのだから。



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