「さいしょからやり直したい」
目の前に映るハッピーエンド。
文句のつけようがないほどの素晴らしきそれに対する不満を飲み込む。
ただ、喜びを爆発させる彼らから一歩離れて、ただ、眺める。
なんでだろうか、目にした先から色彩が奪われてゆく。
彼らの服についた赤黒い血が、天に突き上げる剣の銀が、やけにちらつく。
結局のところ、最後に自分が幸せになれるような道を閉ざしたのは自分なのだ。
自分の未来を決めたのは、必然のようで、自分の選択。
きっと、いくつもの選択を誤って。
いくつもの選択でやり直せる機会はあったというのに誤ったまま、このくそくらえなハッピーエンドまで辿り着いてしまった。
自分にとってはハッピーエンドとは程遠く、けれど、他の全てにとってみればハッピーエンドなのだろう。
バットエンドだなんていうつもりはない。
なぜならこれは確かにハッピーエンドなのだから。
自分の心だけを取り残した、そんなハッピーエンドだ。
死んでしまった彼女がどうしても頭から離れない。
彼女、敵国の彼女。
偶然、彼女のいた村を潰したという味方の報告を聞いて、彼女の死を知った。
一度だけ、たった一度だけだけれど、敵だと分かっていただろうに助けてくれた彼女。一目惚れだったのだろうか。何度も陰ながら見に行った。
…本来ならば、敵国とはいえ一般市民を殺すことはいけないことである。けれど、仕方がなかったのだと騎士は嘯く。相手との戦闘に夢中になって、巻き込んでしまったのだと。事故だったのだと。
彼女の死が目の前じゃなくてよかったと思う自分と、手の届く範囲だったら助けられたのかもしれないのにと思う自分がいる。
彼女を殺した味方が憎いと思う自分と、彼女は敵だから仕方がないという自分がいる。
ぐるぐると思考が渦巻いて、なにもかも放棄してしまいたくなる。
この、ハッピーエンドの先は空虚な未来だ。
決められる全て。
嵌められる枷。
もし、彼女が生きていたのなら、それだけでも希望だったのではないか。
枷も、彼女になら喜んで嵌められたのに。そんなことはあり得ないけれど。
最初からやり直せたらいいのに。
そうしたら、自分は彼女を死なせるようなことにはならなかったのではないか。そう、思う。




