世界の崩壊
こんな世界なんて壊れてしまえっ!召喚魔導師長だった女性はそう怒り吠えて召喚した。
中から出てきたのは古代より世界に害悪をもたらす悪魔。
「「全部…壊れてしまえ」」
そして、2人は手を組んだ。
炎は山を焼き尽くし、海は街を飲み込んで、残るは荒野だけとなった。残った町や村も災害や獣に飲み込まれて人々は冥府へとひかれてゆく。世界が壊されてゆく中、人々は逃げ惑った。
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神々は知っていた。世界が壊されて行くわけを。自らが犯してしまった大きな大きな過ちを。だからこそ神々は許せなかった。自らを省みず、過ちを捨て去るだけの人々を。同じ過ちを繰り返す人々を。そして、神々は人々を見捨てた。ただ、過ちを止めようと、捨て去らず償おうとした人のみを助けるために。
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「なぜ我らを神は助けん?我は王なるぞ!」
と意味もなく家臣に吠える王は畜生の類にも見えた。豪華な王城は災害に耐えられるほど強くもなく見るも無残な状態だった。それと同じく、生まれた時から真綿にくるまれたようにして生きていた王はみすぼらしい廃屋のような避難場所にも、自身のみすぼらしい格好にも耐えられなかった。それに、これまで、王が困れば神はいくらかの助言を与えてくれた。それがないことも王にとっては堪えたのだろう。錯乱して家臣に喚き散らす王のもといそこにはいないはずの女性の声が響いた。
「ふふっ…神はあなたたちを見捨てたのよ。私をあなたたちが一度見捨てたようにね」
誰だっ!という声はなかった。その女性の声は昔彼らがよく聞いた声だったのだから。
「っ!…召喚魔導師長っ!」
そう。召喚魔導師長が彼女の昔の役職。くだらないことで切り捨てられた彼女に王は女性だからいいだろうと言ったのだった。
「ふふっ…どう?豚さんたち。馬鹿にしていた女性に、馬鹿にしていた召喚魔導師にこれから命を奪われるのよっ!」
彼女が言ったとおり、彼らは豚のように肥え太っていた。性根も豚に近かったであろう。何しろ、全員貴族で長いことその役職について甘い汁を吸っていたのだから。
「なんて…なんて面白いことなのっ!!」
そう杖を彼らに向けて嘲笑う彼女は明らかに狂っていた。ただ、そのことを彼女に向けて言うことはもう彼らにはできなかった。いつの間にか動くことができなくなっていたからである。
これは彼女の彼女を見捨てた世界への復讐だった。別に世界さえ滅んでしまえばよかった彼女は、その復讐をやり遂げた時、もう残る物はなかった。彼女が召喚したのは古代より世界に害悪をなすという悪魔。彼女はなんでもとるがいいという約束のもとその悪魔と契約した。
「ふふっ……サヨウナラ。豚の皆さん?『ラスト・フィナーレ』!!」
彼女がそう呪文を叫んだ瞬間、どこからともなく表れた悪魔が魔力を解放した。
世界が軋んだ音を立て、バラバラと崩れ始め……。
***
壊れた世界の残骸を背に、悪魔は彼女の魂を片手に、ニヤリと嘲笑った。
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*彼女
召喚魔導師であり、とある王国の召喚魔導師長の座についていた。重要役職に就く者の中で唯一女性だった。が、くだらないことで解雇され、行き場を無くされた。そのため、世界に対しても、人々に対しても怒りを覚えていた。その怒りを全身全霊に込めて、召喚したところ、古代より世界に害悪を与える悪魔が出てきて、驚いたがちょうどいいと思って契約をした。やり切って、満足して死んだ。ただ……。
*王と彼ら
とある王国の重要役職に就く者達。全員男性。くだらないことばかりやって、部下たちを尻拭いに奔走させていた。甘い汁を吸っていたので豚。死んでも、神々から見放されたのでいいことはない。
*神々
世界の管理者であり、創造者たち。古代より世界に害悪を与える悪魔を倒せないからと封印だけしてほおっておいた方々。今回の世界破壊により、これから大変なことになる。
*古代より世界に害悪を与える悪魔
世界が作られたころから、世界に害悪を与えるという存在。実質は創造した世界を神々の一人にぶっ壊された可哀想な元神。いきなり呼び出されて、驚いた。けれど、良い女性を手に入れられたし、世界も壊せたしラッキーって感じ。これから、この娘どうしよっかな~?妻にしてもいいよね?眷属にしてもいいし。どうしよっかな?って感じ。
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「くっ!何故あいつが今頃出てきたんだ!」
そう言って顔をしかめる美しい男性のように見える生命体。こいつこそが、俺を悪魔に落とした張本人である。
「今頃?これでもずいぶん我慢したんだよ。第113号さん?」
神々は番号によって管理される。3桁のこいつは中間管理職にまで出世したということだ。古い神ほど力を増し、番号が小さいほど力が強い。当時は下っ端だったが、今では6桁ものの神がいる。そう考えれば、ずいぶん高い地位についているものだ。
俺が、当時は第113号だった。俺が悪魔落ちしたことで、第114号だったこいつは第113号になったのだ。こいつの世界で生まれた悪意の塊をこいつは俺の世界に落としてきたのだ。俺はそれを止めようとして、逆に悪意に侵され、世界を壊されたのだ。
「っ!0番の悪魔っ!なぜお前がここにっ!」
今頃気がついたのか…。0番の悪魔…ね。やはり、俺の力はだいぶ大きくなっているらしい。こいつが全く気がつかずに空間を割ることができるようになったのだから。
「何故?そんなの簡単だろう?お前なら知っているはずだ」
ニヤリと嗤って言えば、こいつは顔を青ざめた。
「す…すまなかったっ。当時の事は水に流してこれから関係を築こうっ」
そう保身のためだけに言うこいつは彼女の復讐相手とまったく同じに見える。ただ違うのは外見の美しさだけか。
「…それ…アノ時聞きたかったなァ第113号の元友人サン?」
そう笑いかけた俺は、こいつにゆっくりと近づいていった。
「っ!…うっ…うわぁ~~~~~!!!」
絶叫が白い空間に響き渡った。
血まみれになった第113号を片手に、俺は彼女の今後を考えてニヤリと笑った。
(う~ん…あの子はやっぱり妻にしようかな?いい子だし。面白いし。可愛いし!よし、そうしよう)
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*0番の悪魔もとい、古代より世界に害悪を与える悪魔もとい、元第113号
実質は創造した世界を神々の一人現第113号にはめられて壊され、悪意に堕ちてしまった可哀想な元神。力は0番認定されるほどに強く、世界最古の悪魔ともいわれている。今まで現第113号に復讐しなかったのは力がまだきちんとついていないと考えていたから。そして、召喚魔導師長の女性は妻にされることになる。
*第113号もとい、元第114号
0番の悪魔を嵌めて悪意に落とした張本人ではあるが、そこら辺はうまく立ち回ってそのままの地位にいた。元から性根は小悪党の者であり、今まで断罪されなかったのが不思議なぐらいである。小悪党らしく隠す能力だけは異常に高かった模様。そして、無残にも殺された。同じ様な存在に殺されたがゆえに、消滅という道をたどることになる。




