表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/35

1-3

「陛下、ガリオール男爵が来ました」

「通して」


アルベルトの言葉に顔も上げず書類にサインをしながら返す。


執務室に恰幅のいい男が入ってくる。

顔を下げて国王陛下に、挨拶をする。


「アースの栄光があらんことを。国王陛下、お呼びだていただきありがたき幸せ。ガリオールと申します。」

「挨拶はもういいから。顔を上げろ」

「はっ」


すっと男爵は顔を上げる。

国王と目が合う。


「……」


何だこの男は。

レオリオは男爵を見て何か違和感を感じた。

思わずじっと見てしまう。

なんだなんだ?何かがおかしい。

だけど、わからない。この男は今日初対面だ。だけど感じる違和感。

レオリオの第六感が騒いでいる。

だけどわからない。


「陛下?」

「あっ、すまん。港の件だ。港の騒動のことで話があった。」

「あぁ、その件ですね、お手を煩わせてしまい申し訳ありません。船のものや、担当にも厳重注意しております。今後騒ぎのないよう徹底いたします」

「貴殿の管理する船ばかりではないが、多くはお前の船の物らしい。被害でも出ようものなら本腰を入れて罰するからそのつもりで」


威圧感のある笑顔を見せる。

笑っているのに、どこか冷たく恐ろしい。

稀代の冷徹君主と言われる国王は、普段温厚で感情豊かだが、躊躇いなく親兄弟を殺す一面を持つ。

そのオーラを感じ取る。


男爵はガバッと体をふせる。

「かしこまりました」


ふわりと、何かが香る。

何の匂いだ?


「男爵、香水でもつけてるのか?」

「?いいえ?そのような趣味はございませんが…」

「…まぁ、いいか」


もう下がっていい、と指示をする。

ガリオール男爵は深々と礼をして去って行った。


レオリオは彼に対する違和感を拭えないままなんだかもやっとしていた。


「アルベルト、あの男何かおかしくないか?」

「…おかしいですか?いいえ?特に何も」


わからない。

モヤモヤしてしまう。


「ところで、陛下今年は建国祭はいかがいたしますか?去年は状況的に中止しましたが、今年は…」


レオリオの表情が、くらくなる。

パーティーの類はカットしたい。

そんなことしてる暇があったら仕事するし、休みたかった。


「…今年も中止したいな…」

「次の定例会で議題であげましょうか。陛下は中止の方向で、と」


行けるはず。

だが、定例会にでてくる狸どもが反発する可能性が高い。

一年に一度の、建国祭くらいやれ、と。

面倒だ。


***


サンザには広い森がある。

大きな森で、魔獣がでるから誰も入らない。


そこに彼女はいた。


ピンクの肩までのふわふわの髪の毛と薄緑の気怠げな瞳。

黒いフード付きのローブを羽織り、茶色の短いズボンにロングブーツ。


10代半ばほどの年齢に見えるその少女。


ふわりと空から光の粒になり現れた。


森の中にひっそりと小さな湖がある。

大きな満月の夜。

湖の水面に月が写っている。

月の光にてらされて、月の日にのみ咲く月光華がぽつぽつと湖の周りに咲く。


これが薬になるのだ。


カゴにたくさんつむ。


「こんな時間にこんなところで何をしている」


声がした。

ビクッとして見上げる。

今まで誰にも会ったことないから油断していた。


男が立っている。


顔がよく見えない。


「………」

「おい」


近づかれて、その顔がやっと見えた。

どこかで見た顔で記憶を辿り、ハッとする。


黒い髪に赤い眼。

国王に似た男がそこにたっている。


思わず後ずさる。

気づかないフリをしなければ。

どうする。


「何をしている、と聞いた」


「…花を摘んでいただけです」


「こんなところで?」


「ここにしか咲かない花です」


「ここが何処だかわかっているのか?」


どこもなにも、森だ。

昔から通っている。


「ここは、城の領土だぞ。どうやって入った?」


目をぱちくりさせる。


「歩いて」

「歩いてくるには城壁を越える必要がある」

「…」

「どうやって入った?」


城壁なんか知らない。

いつも瞬間移動だから。

一年に数回来るだけだったけど、ここが城内など気が付かない。

そもそもいつのまに城内になったのか…


「おい」


考え込んでいると、男が顔を覗き込んできた。


赤い眼と至近距離で、目が合う。


「どうもすみませんでした」


ぽつりと言い、男の顔に手をかざす。


「何をする」


一瞬だった。


光の粒になって消えた。


「え?」


そこにいたはずの少女は瞬く間にいなくなった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ