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あれから、一年が経った。
お師匠様は結局姿を表すこともなく、死んだとされた。
ラグナ国とはあれから貿易以外は何もない。
静かな物だった。
そして、城内に魔塔が作られた。
そこには、生まれながらの魔力で捨てられた者、迫害されていた子供が連れてこられている。
まだ、年若い子供ばかりで城の使用人が面倒見ながら魔法使いが魔法を教えている。
魔塔の管理者は当然第四王子様だ。
そして、魔法管理や、その他の業務を指導しにリュベールから使いの魔法使いがきており、ダリアもたまに遊びにくる。
***
「ゼオ、身長その辺でストップしてよ。」
「ダリア様、無理言わないでくださいよ」
「だあって、せっかくの美少年なのに、伸びたら可愛くなくなっちゃう」
ブーブーいう。
ダリアはゼオがお気に入りだ。
熱心に魔法を指導してなにかと食べ物を与える。
ゼオは今過去の成長を、取り戻すかのようにぐんぐん成長している。
「ダリアさん、さすがにゼオに手ださないでくださいね…俺なんか嫌…」
グレンはダリアに釘を刺す。
「私だって弁えてるわよ〜」
ダリアは恋人もしょっちゅう取っ替え引っ替えしてる。
そんな、彼女が外を見て言う。
「そろそろ」
「何がですか?」
「んー」
話を逸らした。
「パーティーにはゼオも出るの?」
「俺は裏方ですよ。国王陛下の誕生日パーティーですよね?」
「そう。国王陛下がついに貴族たちの反論に折れて花嫁候補を探そうって言う裏の名目があるパーティー」
リュベールからも王子や姫君が来る予定だ。
ゼオは下を向いて少し悲しげに話す。
「国王陛下はお師匠様のことをずっとまってたのにな」
「引きずりすぎなのよー。たかが女1人よ。次!サクッと次!男ならスパッと諦めてさっさと次行かないと!子孫残しそびれるわよ!」
※個人の見解である
「ダリアさん」
「何?」
「あの日、本当はお師匠様があんなことをするって知ってたんじゃないですか?」
ゼオが悲しげにダリアを見た。
「…なんで?」
「お師匠様の攻撃とダリア様の結界後の移動の魔法のスピードがあまりにもタイミングが同じで。最初からわかっていないとできない魔法でした」
「…そんなわけないでしょ〜。わたしの腕がよすぎるからよ」
フィッと顔を背ける。
本当は、その通りだった。
そうしてほしいとお願いされた。
全ては魔女の想定通りに進んだ。
国王陛下との契約破綻の魔法がちゃんと予想通りに機能するかが問題だった。
国王陛下の固有の魔力。
魔法を"打ち消す"魔力。
契約した相手のエルドも打ち消してくれるはず。そしてこれはアース国に伝わる龍の魔法。
その辺の魔法使いの呪いに負けるはずなかった。
ダリアは、頬杖をついて外を見る。
一番簡単で手っ取り早い方法。
そう、あの子が言った。
女なら守られてなさいと、随分勝手なことをベラベラ言ったけど、実際、彼女が1番望むことが、国にとっても一番簡単な方法だった。
国王陛下が、好きなのかと聞いたら
相変わらずの無表情で目を逸らされた。
肯定なんだろう。
素直じゃないな。
だから、一つ教えてあげた。
「噂好きの妖精が、こんなことを言っていたわ」
話すと、驚いたように表情が少し明るくなった。
本当かどうかわからない話だったけど。
叶ったらいいと、思う。
しかし。
この一年、何度もアース国王陛下に殺されるのではないかとヒヤヒヤしていた。
自分は混血の魔法使いの死に加担した協力者である。
バレたらもう命はないかもしれないとドキドキしていた。
顔を合わせるのはこれからも絶対に避けようと思う。
***
「アルベルト、これ、伯爵へ持っていけ。」
「はい。かしこまりました」
ペンのざらざらとした音と紙のこすれる音。
レオリオは真面目に公務にあたっている。
いつもと変わらない日常だ。
ただ公務に向き合う。
そして、明日は嫁を選ぶ。
はぁ、とため息をついた。
今でも忘れられなかった。
エルドがいきなり現れるのでないかと期待してしまう。
あの時にみた笑顔が忘れられない。
笑ったのがあれ一度きりだなんて信じられない。
あんなの、忘れられるわけがなかった。
目の前にいたことさえ魔法だったのかな。
守りたいと思ったのに、幸せにしてやりたいと思ったのに。
あの、優しくて不器用な魔法使い。
結局、何もしてやれなかった。
ペンで、ガリガリと文字を書き続けながら考える。
エルドがいなくなってから何百回も考えたことだった。
何度かあの砂となって変えた場所へ行き、湖にも行った。
だけど、いなかった。
あの、薬屋にも行った。
何度か足を運んだら、ある日扉が開いていた。
驚いて中へ飛び込んだ。
だが、そこにいたのは
「国王陛下?」
オーディンだった。
「なんでお前がここにいるんだ」
わかりやすく不機嫌になる。
ラグナを連れてきた元凶。
顔を見ただけでイライラする。
「アースの太陽に栄光と祝福を。いや、ここはもともと私のものですからね」
「どういうことだ?」
「この店の本当のオーナーの息子が、私の祖父にあたります。事情があって来れず代わりに私が来ました」
そういえば、息子の帰りを待っていると話してくれたことがあった。
「爵位を継ぐ際にこの件を耳にしまして、興味があり来てみたら営業していたので驚きました。」
「オーナーの息子の代わり…」
「祖父は妾の子の為、ここで暮らしていましたが、ジェハイド家の後継の関係でジェハイド家へ引き取られました。母親には高額な金銭を渡して息子とは離縁させました。それから会うことが許されずに戦死しました。私の父親にその件が語られましたが父は病弱で対応できず、代わりに私が」
「…なるほどね」
「もしかして魔女様が曽祖母になっていたのでしょうか?」
「なんでだ?」
「随分前に曽祖母の墓を見つけてまして。なのに生きて店頭に立っているからおかしいとおもうのは普通でしょう?」
ニコニコと話してくる。
おかしいと思いながらも店にかよってたのかよ。
エルドから店に来ている旨は報告を受けていた。
「いつのまにか、この店は開かなくなりました。ある日、店の権利を正式に引き継いで中に入ると、紙が置いてありました。」
「え?」
レオリオが驚く。
「"契約完了"と書かれていました。なんのことでしょうか?」
オーディンは両手のひらをひらひらさせる。
頭に思い出される魔女の声。
ちゃんと全てわかってたのか。
思わず顔を背ける。
「知らないよ。じゃあな」
レオリオはそう言って店を出る。
カランカランと相変わらずの音がした。
フードで顔を隠して街を歩く。
絶対、エルドとあのリュベールの魔女は共犯だ。
気に入らない。
だけど、それがきっとエルドの望みだった。
あの無表情が見せた最後の笑顔がその証拠だ。
だから、受け入れなければいけない。
明るい晴天の空の日だった。
自分の気持ちとは裏腹な天気に嫌気がさす。
明るい気持ちにさせてくれたらいいのに。
そう思いながら、今日も、窓の外を眺める。




