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3-11

「……」


起きたエルドはしばらく布団の上で膝を抱えていた。


「エルド様、お水飲みますか?」


メリルがいつも通りに対応する。

窓のカーテンを開けて、太陽の光を入れる。


「…いる…」


はぁ…と深いため息をつく。

体が重い。

というか、心が重い。


尋常じゃないレベルの何かがのしかかってきていた。

水を体に取り込んで、布団から出る。

いつものように服を着替える。


記憶を戻した。

取り去ったリアーナルイスの数十年の最初の記憶が体に戻った。


コンコンコン


「…どうぞ」


レオリオだった。


「…思ったより元気そうだな。」

「?どうかされたんですか?」

「昨日倒れたらしいから」

「…はい。大丈夫です」


沈黙が流れる。


「その、記憶を戻したのか?」

「…はい。戻しました。気になる事があればどうぞ」


ハキハキと答えてくる。


なんだか、拍子抜けだった。

もっと落ち込んでいるのを、予想していた。


「……本名はリアーナルイスでまちがいないか?」

「はい。間違いなく私がリアーナでした」


そりゃそうか。

もう報告書やダリアの話で確定しているのに改まってきくことでもないのに、つい聞いてしまった。


「ラグナの魔獣の門については知っているか?」

「…知っていますが。何故それを?」

「リュベールの魔女から聞いた。」


それなら、自分のこともなにもかもこの王様にはバレているのだろうか。

それは、嫌だと、思った。


思わず言葉を詰まらせる。


「……どうした?」


レオリオはエルドの顔を覗き込んだ。


レオリオの赤い瞳と目が合う。


こんなの、予想していたことじゃないか。

あの、報告書を見た時から知られていたことじゃないか。


違うのは、他人のことではなく自分のことになったこと。


それだけでこうも違う。

だけど、知っていたとしてもそれは彼には関係ない。

そう言い聞かせる。


「魔獣の門は開けられますね。だけど、開けませんから安心してください」


開けたらとんでもない事になる。

本当は、私のような存在はさっさと消えたほうがいいのに。

そう思う。


無表情な瞳がゆれる。

すると、目の前が暗くなり、温かくなる。

ぎゅっと、レオリオがエルドを抱きしめていた。


「王様」


ぽんぽんと背中を撫でられる。


「大丈夫だよ。エルドはここにいるんだ。ラグナには渡さない」


目を見張る。

驚いて、黙る。


「お前を奪いに来た奴は片っ端から切って城門に吊るしてやるから」


ギロッと壁を睨んだ。

温和な国王陛下の、冷淡な表情。

それこそ、前王達を冷酷に切り捨てた男の隠してる本性だ。


「恐ろしいですね」


「お前はエルドだ」


よしよしと頭をなでる。


その感覚がくすぐったい。

溶けそうな感覚に眩暈がする。


「王様」


「なんだ?」


「お腹がすきました」


その言葉に驚く。

そして、レオリオは、ははっと笑った。


***


「イタタタ!ダリアさん、俺王子だって忘れた?!」


レオリオに解放されたダリアは真っ先に弟子の元へ行き、耳を引っ張った。


「忘れたわ。私の弟子だった頃は王子なんかじゃなかったもの。わたし、騙されたのよ!それに!私の力ならあなたなんか一捻りよ!」


勢いよく捲し立てる。

ゼオはその光景をじっと見ていた。


「おい!ゼオ!助けろ!」

「王子様、俺には無理です」

ゼオは呆れて見ていた。


「ダリアさん、俺ほんとに何も言ってないからー!兄上が無駄に感が良すぎるだけ!」

「うるさい!わたしすっごく怖かったんだから!あの目!アース国王は恐ろしいのよ!わかってる?私すぐやられちゃうんだから!」

「わかってますよ!後でちゃんとフォローしますから!」

「ほんとにしなさいよね!」

キーキー喚く。


「ふぅ」

グレンが一息つく。

ゼオはたいへんだなぁ、と魔法薬を作成しながら見守っていた。


「王子様、国王陛下には魔法は効かないんですか?」

「えーと。全部って訳じゃないけど、精神魔法、呪いの類は全く効かないし、意識的に相手の魔力を無効化できる。国王の爵位を正式に継いだら、アース国の代々の力が受け継がれる。

赤い目の中に濃い赤の紋様が入るんだ」


「へぇ。じゃあ、もし第四王子様が王位を継いだらどうなるんですか?」

「いい質問だな。俺はもう王位はつげない。魔力があるから。だからきっと、兄上はダリアさんが気に食わないはずだ。俺に王位を譲る算段だったから…」

「ちょっとー!さらに怖いこといわないでよ!」

ダリアが半泣きで訴える。

「わたし、今日はグレンの部屋で寝るわ。

一人じゃ怖くて寝られやしない…」

「一緒の部屋にいても兄上はやるときはやりますよ」

「…もぉ、いや」


ガクッと項垂れる。


「なんで、国王陛下はグレンに王位を譲りたかったのよ…」

「…最初はただ、自分には合わないって、俺の方が国のためになるって言ってたんだけど。ここ数年は多分…」

グレンは黙る。

「何よ」

「いや、なんでもない」


ぐらぐらとダリアはグレンの服を掴み揺らした。

「ダリアさん、俺王子ー!!」

「ちっ」


ダリアはパッと手を離す。

「ふー。それより、ラグナ側の引き渡し要求、こっちが拒否して簡単に引き下がるんですかね?」

「……引き下がらないでしょうね」

何百年と探してきたものがようやく見つかって。

リアーナが死ねばそれで収まる。

だけど、彼女は死なない。

もしもラグナが強硬手段にでるのなら、申し訳ないけどリアーナを封印してリュベールに連れて行く。

リュベール皇室はそこまで想定している。

そして、あの男。ユグナ。

あの男がやっかいだった。



「それにしても。あなた可愛い顔してるわね」


ダリアはゼオをみてそう言った。

ゼオは急にふられ、ドキッとする。

グレンはまた始まった。と、やれやれと首を振った。


「私と一緒にリュベールにおいでよ。私が魔法おしえてあげるよ」


ニコニコと話しかける。

年上の美人な魔女に話しかけられてドキドキする。


「いえ、俺の師匠はエルド様なので…」

「ちぇっつれなーい」


ふいっと拗ねたように顔を背けた。


***

静まり返った夜。


エルドは湖にいた。


「待たせた?」


そこに、リュベールの魔女、ダリアが現れる。


「無事に記憶を戻せてよかったわね」


「ありがとうございました」


湖の湖畔に2人の魔女が向き合っていた。


「さて、思い出して早々で悪いけど真剣にこれからを話しましょうか」

「…」


エルドは無表情だが、無気力だったその瞳に光を宿していた。


「あなたは、どうしたいの?記憶を戻したかったのは何のため?」


「……王様が困るのは見たくないと思った」

「それだけ?」


こくりと頷く。


はぁーっとダリアは意味わからんという顔をする。


「あなたね。今まで散々人に利用されてきたんだから、もっと自分のことを守らなきゃダメよ。国王陛下はあなたの記憶戻したくなかったって言ってたし。そうすればよかったのよ。ラグナが攻めて来ようが何しようが、あの国王には魔法は効かないんだから。簡単に殲滅できるんだから」


ダリアは一気に攻めた。


「女なんだから、辛い過去なんて綺麗さっぱり忘れて男に守られてればいいのよ!」


ビシッとエルドを指さした。

だが、この温度感はエルドには伝わらない。


「女はオシャレして綺麗になって、パーティーで踊って、男に貢がれて好かれて愛されて、そんな生き物でいいの!」

※あくまで個人の見解である


フンッと、鼻息荒く捲し立てる。


「そうね。そんなふうに生きるのもいいと思う」


エルドは想像した。

ドレスで着飾って、レオリオの横に立つ自分を。

パーティーで手を引かれる自分を。

そんなものは幻想でしかない。

叶うはずもない夢だ。

だけど、そんな夢を見るぐらいに自分は変わった。

何百年と過ごしてきたけど初めてだった。

それだけで、満足だ。


「…リュベールの魔女」


「なによ混血」


「お願いがある」

「え?また?」


ダリアが呆れた目でエルドを見た。


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