3-10
エルドは自室に寝かされている。
国王の謁見室でゼオは一部始終を話す。
あの、悪魔のような映像も全て。
「記憶を戻したのか?」
「…わかりません」
エルドが何をしていたのか、ゼオには明確にわからない。
ただあの時に見たあの映像は、間違いなくエルドだった。
「エルド…もしかするとリュベールに行ってお師匠様にあって何かあったのかもしれない」
「お師匠?」
「あ。やべ。リュベールの魔女です。たまたま知り合いな高齢の魔女です。」
慌てる。
ダリアとの、約束を忘れていた。
この前エルドが朝から姿が見えなかった日、エルドの魔力の気配はリュベールの方角だった。昼頃には帰ってきていたのでまさかと思ったが。
「その魔女に会えるかな?」
「えっ」
グレンは焦る。
「…聞いてみます」
***
「お初にお目にかかります。アース国王陛下。リュベール国、皇室付き主席魔法使い、ダリュベリア・ル・ソーレドル・ガバネと申します。」
グレンの師匠であるダリアは、皇室付きの格式高い魔法使いのため、リュベール王室に正式な申請をだし、実現した。
今度は魔法映像ではなく、本体がきている。
「多忙だろうに、すまないな。」
「いいえ、リュベール国王陛下からも、アース国の為に助けは惜しまぬようにと仰せつかっております」
「感謝するよ」
レオリオは柔らかく微笑む。
ダリアは優雅に礼をする。
「さて、聞きたいのはうちの魔法使いについてなんだ」
「魔法使い…ピンクの髪のエルドとかいう魔女ですか?」
「そう。最近、エルドがあなたに会いにきたかな?」
「…はい」
「何を話した?」
「魔法使いから抜き取った記憶のありかについて教えただけです」
「お前がエルドから記憶を抜いたのか?」
「そうです」
「記憶を戻す事ができるのか?」
「はい。簡単です。抜き取った記憶の玉を飲むだけです」
ゼオが言っていた。
湖から何かが出てきてそれを口に入れていたと。
「じゃあ、やっぱり記憶を戻したんだな〜」
ふーと、諦めのようにため息をついた。
「国王陛下は、あの魔法使いがすごく大事なようですね」
「大事…というか」
「魔法使いに私は言いました。その記憶はもどさないほうがいいと。内容が、馬鹿みたいに残酷なので。だけど、今はそうしたいからするらしいです。」
ダリアの話し方が少し軽くなる。
「私が彼女に出会った時はそれはそれはひどい状態でした。200年前。髪もザンバラで、顔はげっそり。ひどく痩せこけてて。体にはいくつものあざ。私はリュベールから、ラグナにある任務で行っていたので彼女の事情を知っていました。正直、これほどまでの扱いを受けた魔法使いをみたことはありません」
「事情とはなんだ?」
「国王陛下はラグナのリアーナ公女の噂をもうご存知でしょうか?」
「知っている」
「アレは、皇室側に修正された記録ですから」
まず、リアーナは幼い頃魔塔に軟禁され、その魔力を調べるべくラグナの主によって魔法の教えといくつもの実験をされ調べられていた。
その後その血を受け継がせる為に若くしてラグナの皇室魔法使いユグナ家長男と結婚。
そして不運な事に、ユグナ家長男に気があった第一皇女から陰湿な虐めが始まり、皇女の誕生パーティーにて、皇女が複数の使用人を使いリアーナを辱めようとした事件によりついに魔力が、暴走。
その場にいた使用人数名と皇女が死亡。
皇室は、皇女殺害の罪でリアーナを処刑を敢行。
だが、リアーナは魔塔の主の手で黒魔術によって死なないように呪いがかけられていた為、ギロチンが降りた後でも体が修復され生き返り、その最中についに逃亡した。
「ちなみに、リアーナ公女はリュベールとラグナの魔力を併せ持つ異端児の為、ラグナではある目的のために魔法使い達に重宝されます。」
「目的?」
「ラグナ王室の地下にある魔獣の門の解錠です。リュベールには妖精がいますが、本来ラグナには魔力をもった化け物、魔獣がいます。だけど、あまりにも強靭で手懐ける事が難しい為、門をとじてあるのです。
その鍵となるのが、門に魔法をかけたとする、二つの魔力を併せ持つ異端児なんです。」
「それで指名手配か?」
「そうでしょうね。永久にリアーナを皇室にとらえ、門の開閉を自由にできれば他国への牽制にはなりますし。
魔獣を従える為の魔法使いさえあれば問題はないでしょう。
なので、この魔法使いのラグナへの引き渡しについてはリュベール国としても反対いたします。アース国、またはリュベールにて保護が優先です」
「それなら、アースで預かりとしたままで問題ないな」
「はい。リュベール国王陛下もそれを望んでおられます」
「承知した。ダリアといったよね。君がいてくれて助かったよ。本人は、記憶がない、忘れたの一点張りで。正直記憶を、戻させるのは嫌だったんだ……」
アース王は思っていたより気さくで温厚のようだ。
そして、混血の魔法使いのことがよっぽど大事のようだ。
アースには、なんの縁もないだろうに。
「光栄でございます」
ダリアは礼をした。
「今日、ゆっくりしていきなよ。グレンとも話すればいい。魔法教えたの君なんだろう?」
ニッコリとレオリオが微笑む。
「……はい……」
グレンに魔法を教えたのがダリアだとバレている。
言ったのか?
あのクソガキ。
と、心の中で王子を睨む。
そして、温厚な国王陛下からなんとなく冷ややかな冷気を感じる。
「グレンが、真面目に勉強してるって諜報員から聞いて安心していたんだ。まさか魔法だとは思わなかったけど」
「こっ、国王陛下、第四王子様は他の勉強もきちんとされておりました。魔法はちょっとした郊外活動のようなものですよ」
ほほほほと、口元に手を当てて笑う。
「そうか。それにしては本格的に魔法使いになったように見えるけどね」
目を半眼にして見下ろすように笑っている。
どうしよう。
誰か助けてー
「陛下、失礼します。魔法使い様が目を覚まされたようです」
助かった…
ナイスタイミング混血!
と心の中でガッツポーズをする。
「それでは、魔女殿、ゆっくり滞在していってくれ」
「ありがとうございます」
深々と礼をして、国王陛下の退出を見守った。
グレンのやつを大至急探す事にした。




