3-9
ラグナ王宮
ガシャンガシャンガシャン
部屋の花瓶や置物を片っ端から下に落として割っている。
男はうずくまり苦しむ。
「うっ…」
「くそっ…早くリアーナを連れてこなければ…」
顔を上げたその額には、呪いのような紋様がぐるぐると渦巻く。
ズキンズキンと頭が痛む。
耐えられない痛みに頭を床に押し付けた。
黒いオーラが滲む。
「…可哀想に」
ハッと後ろを振り向く。
そこには、20代ほどの男が扉に寄りかかり男を見ていた。
「ユグナ、大丈夫かい?」
「殿下…」
男はラグナ王室の、国王。
ビルド・ウィルソン・ラグナという。
可哀想と口では言いながら、表情はどこか明るい。
「…ユグナの最後の人間だから、自分を大事にしないとな」
スッとダンに近寄り、額に触れる。
紫の光がダンをつつむ。
「ありがとうございます…」
「リアーナの処刑の時の呪いで君がずっと苦しんでるなんて、彼女は知りもしないんだろうな」
ダンは、床に座り込み、ふぅ、と息を吐く。
「本当です… あんなに僕が愛してあげていたのに理不尽でしかない…」
「愛したねぇ… イジメあげたの間違いだろう?」
ニヤリと、ダンは嫌な笑いを見せる。
「可愛くて可愛くて仕方がなかったんですよ。それは、皇室も同じでしょう?幼い頃から城に閉じ込めて、魔塔のジジイの餌にした」
「昔の話さ。魔法使いの研究は必要なものだから仕方がない。時代の犠牲者さ」
やれやれと手を挙げる。
「ラグナとリュベールの混血児。当時の公爵の愛人として取り込んだリュベールの娘の間に生まれた奇跡の子供だ。それが未だに生きているなんてな」
「リアーナは、死なないんじゃなくて、死ねないんですよ。魔塔のジジイ達がリアーナが幼い頃にそう魔術をかけてたんです」
貴重な存在だからいつまでも生きるように。
リュベールとラグナの混血児など、互いの魔力の反発で生まれる事はあり得なかった。
だから、当時の魔塔の主はリアーナを監視した。そして、その魔力を研究したのだ。
だが、その呪いは多くの生贄上に成り立つ黒魔術の為皇室には秘密にされていた。
リアーナが、処刑された時にその魔法が初めて効力を持ったのだ。
ラグナ国王は冷ややかな目で見る。
気持ち悪い男だと思う。
今はこの男がラグナ国の魔法使いを統率している。
何百年も、皇室に従いながら一人の女を追いかけて生きている。
まぁ、リュベールの魔力を持つ魔法使いがラグナの手に入れば、それはそれで役に立つ。だから、アースへ書状を書いた。
アース国王が連れてくるかはわからない。
リアーナはアース王の寵愛を受けているらしいし。
アースの王は若くして大帝国アースをまとめた恐ろしい男だ。
争いは、避けたい。
いくら魔法使いがいても、数では叶わない。
そして、あっちにはリュベールが付いている。
「魔獣の門が私たちだけで開くなら、リアーナなどもうどうでもいいんだがな。」
そう言って部屋を出て行った。
「……」
皇族はプライドもないのか。
ダンは国王の背中を睨んだ。
だけど、もう少しだ。
ダンは鋭い眼光を窓の外へ向けた。




