表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/35

3-6

ーーーリアーナ・ルイスにおける報告書


ラグナ王国

200年前、第15代ルイス公爵家の長女。

7歳まで公爵家で過ごすが、その後生まれながらの魔力の為、ラグナ城、魔塔にて預かりとされる。


その後、15歳の時、家同士の婚約により、代々皇室魔法使いとして使えるユグナ伯爵家長男ダンと結婚する。


一年後、皇室内で開催された皇女誕生パーティーにて魔法事故を起こす。

暴走した魔力により、当時の第一皇女が巻き込まれて事故死。

皇族殺害の罪で死刑宣告。

だが、リアーナは処刑前に逃走。

今も見つかっていない。


リアーナは国内でも歴代上位の魔力の持ち主であり、危険。

また、その魔力は非常に特殊である。

見つけ次第、王国へ報告。

また生死問わず王国へ献上すること。


リアーナ逃亡により、ルイス家は一族全員処刑。

ユグナ家は永久に皇室付き魔法使いとして、首輪を嵌められることとなった。


***


報告書を見たレオリオはぺっと紙を捨てた。

紙は意図せず床に落ちる。


「………思いのほか、内容が、重い」

「はい。重いです」


アルベルトも、かなり引いていた。

ルイス。

どこかで聞いた名前だと思ったが、ラグナ史に残る大きな事件だった。

過去に本で読んだ。


「200年も前の事ですが、現在も指名手配されておりなおかつ公爵家の無惨な事件として今でも語られている為、簡単に情報が手に入りました」


諜報部に指示して、報告書が上がるまで2週間もかかっていない。

魔力を持つものの悲しい末路。

そして、エルドが記憶を捨てるに値する充分な理由だった。


「ルイス公爵令嬢… 貴族だったのか。どうりで佇まいや動作が綺麗だし、作法やダンスも知っているわけだ。平民でアレはおかしいと思っていた」


この報告書の細かい部分についてはもう、本人からの確認は不可能だ。

皇室が絡んでいる為、なおさら詳しい動機は揉み消されているだろう。

はぁ、とレオリオはため息をつく。


「ダメだ。絶対に、ラグナには渡さない」

「まだなんの取引も要求されてないですよ」

「エルドはここにいるんだ。絶対に、渡さない。というか、そもそも、エルドは王を詐術にかけようとした犯罪者だ。その代償で我が国に支えている。だから引渡しは、不可能だ」


「わたし、その話聞いてませんが…」

詐術??

と、アルベルトの頭にはてなマークが生産される


「とにかく、きたら速攻俺にもってこい」

聞かん坊のようにレオリオは捲し立てた。


アルベルトがため息をついている。

「ですが、ラグナが引き渡しの要求をしてきたとして、逃げられますかね」

「俺に対しての不敬罪があるからな。何百年前の犯罪者を未だに指名手配してるとしても俺の方が有利だ。そして、アースという大国を敵に回すハメになる」

 

ふぅ、とアルベルトもため息が出る。


「エルド様の記憶を戻してもらって、事の詳細をお伺いしては?」

「…」

「この、報告書、おそらくラグナ王室側に不利な事は伏せてあるので、何か裏があると思います」

「それでも、捨てるほどの記憶を戻させるのは嫌だ」


「陛下…」


もう、完全に魔女にハマってしまっているように見える。

陛下はどうしていつも、こう不安な事態に巻き込まれるのだろう。

不敬になるが、主人が不憫だった。



そして、外ではふわふわと、シャボン玉がとんでいた。


***


街の薬屋にエルドはいた。


老婆の姿でいつものカウンターに座っている。

瞼を閉じて、寝ているように見えるが、魔法で出したシャボン玉の追跡映像を見ていた。


スッと目を開ける。


リアーナルイスの報告書を見た。


別に驚くものではなかった。

他人の記録をみるかのような気分だ。


ラグナに連れていかれて、処刑されてもどうせ私は死なない。


ただ、ひとつだけ気がかりがある。


カランカラン

店に客が来る。


「こんにちはマダム」


オーディンだ。

最初にきてから何度か訪れていた。

購入するものはいつも変わる。


「いらっしゃい。今日はなんだい?」


柔らかく微笑む。


「今日は、なんにしましょう。何かありますか?」

「媚薬はもういいのかい?」

「はい。知人のお手伝いで購入したものなので」

にっこりと微笑む。

「そうかい。だけど目的がないとおすすめなんてできないよ」

「そうですよねぇ」


何しに来たんだか。

初めて来た時から怪しいそぶりだった。

何が目的なんだろうか。


「あぁ、そうだ。手荒れに効く薬はありますか?」

「あるよ」


スッと手の保湿剤を出す。


「あぁ、助かります」

「お貴族様には手荒れなんて無関係そうだけどね」

「ははっ、私じゃないですよ。屋敷で可愛がってるメイドですよ」


なるほど。

お代を受け取る。


「あれ?これ、どこかで見たな。」

オーディンが保湿剤の入れ物を見て思う。

小さな陶器の入れ物に入れている。


「あぁ、お城で見たんだ。城のメイド達がこれを手に入れたってはしゃいでいるのを見かけた。この店で買ったものだったのかな?」


ニッコリと、笑う。


「そうかもね」


エルドは曖昧に返す。


「それじゃ、また来るよ」


パタンと、扉が閉まる。


言動行動すべて怪しく見える男だな。

どこに穴が掘ってあるのやら。


***


「ダリアさん、だから勝手にここに入ってくるのはダメですって」


グレンの東の塔の自室。


グレンの向かい側に、透ける女が立っていた。


『だって。連絡してくれるって言っときながらちっともよこさないじゃないの。薄情者。

私のことを一ミリでも悪く喋ったら呪いをかけてあげるから。

私が危険を省みずに魔法を叩き込んであげたのに。アースの国王に殺されたら王子のせいだからね』


本体ではない映像の状態で、女がぴーぴー喚いている。


「今兄上に見つかったら、隣国への密告者を疑われて処刑される」

『実の兄弟にそんなことする?』

「する。兄上は、世間では冷徹な王様で実際外面は温厚で明るいけど、怒らせたら一瞬で切るっていうのは本当。ためらいもしない」

『怖っ』



ぶるりと震える。


「第四王子様」


コンコンとノックの音がする。


「!はい」


女は急いでひゅっと消える。


「どうぞ」


そこにはエルドが立っていた。



「え?珍しいね。どうしたの?」


「いえ…他の魔力を感じたのでお伺いしたまでです。大丈夫でしょうか」

「…」

するどい


「他の魔力?俺1人だけど」


エルドはじっとグレンを見ている。


「そうですか。それは失礼しました」


スッと視線を外し、退室しようとする。


『ちょっと待って』


エルドは立ち止まる。


振り返るとそこに、ボヤッと女の姿が現れる。


銀髪の長いウエーブのかかった髪。

瞳の色が薄い茶色で真っ白な肌。

すらっとした体型で、ふわふわとした踊り子のような服を着ている。


『あなた、どこかで…』

女はエルドにかなり近づく。

顔を至近距離でまじまじと見る。


「王子様」


エルドが呼ぶ。

ドキーンとグレンがびくびくしながらエルドを見た。


「この人は俺に魔法を教えてくれた人で、勝手に魔法で来たんだよ!俺が呼んだわけじゃないし、別に密告とかじゃないんだよ!」


この場をエルド以外の人間が見たら大変なことになっただろう。


『私はただ、弟子の様子を見に来ただけよ〜』


「…そうですか」


女はまじまじとエルドを見て、考え込む。


『あなた、どこかで…どこかで会ったのよ。どこだろう… 思い出せ思い出せ…』


女はうーんと考え込む。


「痴呆だな」


ギロリと睨む。


『むかつく。すぐぶん殴ってやれないのが悔しいわ』


映像なので無理だった。


「リュベールの魔女」


『そうよ。あなたは…リュベールとラグナの混血ね』

「えっ、そうなの?」


グレンが驚く。


『え?知らなかったの?』

「聞いてない。まぁ、エルドと最近知り合ったばかりだからね」

『教えたでしょ?リュベールの魔力の特徴。青いオーラがリュベールで、紫はラグナよ。

この子、ふたつが混ざり合ってて特殊なの。主な魔力はリュベールで、意識せず出るのはラグナね。』

「なるほど」


ふむふむと、勉強している。


『そう。すごく特殊なのよ。それを、どこかで昔会ったことがあったけど…』


「…」

エルドは黙っている。


『もういいや。思い出せないわ。多分何百年も昔のことよ。』


ヒラヒラと手を振った。


『お嬢さん、私がここにいたことは内緒にしてくれる?アースの国王に怒られたくないから』

「…」


エルドはグレンを見る。


「エルド、内緒だぞ。兄上にバレたら俺めっちゃ怒られる」


「第四王子様に従います」


『今日は弟子の様子を見に来ただけだから。特に用事もないし、アースに用はないの。だから帰るわ。グレン、またね』


「はいはい」


ぶらぶらと手を振る。


ぽん!と消えた。


はぁーっと、グレンが息を吐く。


「エルド、頼むから兄上には言わないでくれよ…」


「承知しました」


「エルドは、あの人知ってる?なんかあったことがあるとか言ってたけど。」

「わたしも、わからないです」

覚えがある魔力だが、どこでかは思い出せない。


「あの人、リュベールでは有名な魔女なんだ。リュベールのある森に住んでて、たまに皇室の仕事も請け負ってる。

俺が留学したときに魔法を教わったのがあの人」

「そうですか」

「リュベールの魔法使いと会ったことある?」

「さぁ、どうでしょうか」

「忘れたの?」

「思い出したら言いますよ」

「そうして」


そして、部屋を出た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ