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2-4

伯爵邸についてすぐ、レオリオはアルベルトに指示をする。


だが、ここで問題が起きる。


アルベルトは、子供がいないことに気がつく。

「あれ?」

「さっきまでここにいましたよね?」


噂の子供のいきなりの登場と、魔女の回復に驚いたが、メイドに指示を出していたところだった。


「エルド、調べられるか?」

「捕まえてくればいいでしょうか?」

「まかせる」


シュンと消える。


「魔女様は大丈夫なのでしょうか?いきなり目覚めておられ驚いたのですが…」

「魔力の枯渇が原因らしい。魔法の使いすぎだ。馬車4台と大勢の人間を東部まで移動させるのが、彼女の限界みたいだな」


それでも相当すごい。


「なるほど」

「あと、あの少年は、どうするのですか?」


レオリオは手で顎を触りながら考え込む。


「なんとなく連れてきたんだが、どうするかな…」


「え?」


「エルドが魔力の感知をして追いかけたら、ちょうど街人が彼を殺そうとしているところに出くわした。まぁ、昔から迫害されていたんだろうな。魔力があるのは間違いないから、連れてきたんだ」

「なるほど」

「サンザに連れて帰ってから検討でもいいだろう。」

「何故、逃げたのでしょうか」

「まぁ、当然だろうな。迫害されて生きてきたんだ。どこへ行っても安心できる場所なんてないだろう。煮て食われると思ってるんだろうな」


レオリオはクックックっと、不気味に笑う。

アルベルトは、その不気味な姿に少し引いた。


***


ゼオは瞬間移動で森の中へ移動した。

いつも父親や、近隣の住民から逃げていた隠れ家がある。


「…はぁ」


驚いた。

皇帝陛下に捕まるとは。


夜中の暗い小屋の中。

ずるずると壁を背にして座り込む。


今までたくさん叩かれたり、酷い言葉を言われたりしてきたけど、

もううんざりだった。

一人で別の土地へ移ろう。


ふっと目を閉じる。


シュンとエルドが現れる。


「うわっ」

驚いて体が跳ねる。


「…何故逃げるの」


同じ力を持った人間のお姉さんだ。


ごくりと唾を飲み込む。


「なんでって、国王陛下は俺を捕まえて、調べて殺す気だろう?」

「…」


エルドは、ピクリと反応する。

デジャヴのような感覚がくる。


「さぁ。どうだろうか」

「え?」

「王様があなたをどうするかはわからないけど、命令だからつれていかなきゃ」

「ヤだよ。せっかく逃げたのに」

「監禁されていたのか?」

「そうだよ。母さんが死ぬまではまだ叩かれたり、酷い言葉を言われるとかで、まだ動けたけど、病気で死んだ後はあいつに家の奥に閉じ込められた」

「移動魔法つかってなかった?」

「瞬間移動ができるようになったのは数日前だよ。それまでは言葉をこっそり頭に送ったり、怒った時とかに物が破裂したり浮いたり傷を治すぐらいだった。」

「あの日、外で騒ぎが聞こえたけど、俺は外の状況もわからないし、何があったのか分からずただ水がどんどん部屋の中に入ってくるから溺れるのが怖くてどうしようもなくて、水がとうとう首まで上がってきた時、死にたくない外に出たいって思ったら移動できたんだ」

「…へぇ」


エルドは、いつものように光をぽつぽつと出す。

近くにあった椅子に腰掛けて話を聞いていた。


「お姉さん、体は大丈夫なの?」

「大丈夫。魔法の使い方もろくに知らないのによく魔力の移動ができたね」

「……なんかさ」

「?」


ゼオはエルドをまっすぐに見ている。


「お姉さんから同じ感じがしたから」


「同じとは」


「力が一緒?とかなんとなく思って、あとは適当」


才能があるのかな。

エルドはぼんやりと思う。

同じ感じね。

魔力を持つものは迫害される。

その力を怖がられ嫌われて彼のような待遇となる。


「王様は、無闇矢鱈なことはしない。体を調べたりはしない。それはもう何百年も前に終わっている。」


「じゃあ、なぜ?」


「さぁ。でも、王様は、あなたを殺すくらいならリュベールの魔法使いにあずけるとおもう。あなた、私と同じくらい魔力もっているから」

「そうなのか?」

「そう」


エルドの無表情と、無機質な目がじっと彼を見る。

同じ苦しみを知っているような目だと勝手に思った。


「行きましょう」


手を差し伸べる。


ゼオは、その手を掴みかけたが

パッと消えた。


***



その後、エルドが手首をぎゅうぎゅう縛って陛下の前につれたきた。


ドサっとやや乱暴に床に置かれる。


「陛下、これを握っていていただけませんか」


手綱をレオリオに渡す。


「何すんだよ!!化け物め!!!」


いや、おまえも同類だろう。

と、レオリオもアルベルトも、呆れる。


何度も魔法を使おうとしているようだが、魔法が使えない。

手綱を握っているのがレオリオだからだ。

彼は魔力を無効化させる。


「なんで、移動できないんだ?」


愕然としている。


レオリオはどこかで見たやりとりだと思った。

王族の赤い目の力だった。


ゼオは抵抗をやめてガクッとしている。


「おい」


レオリオが話しかける。


「なんだよ」


ゴツンとアルベルトが拳骨をくらわす。


「お前!国王陛下の御前だぞ!!!言葉を慎め!!」


いってーと、涙ぐむ。


「うるさい!俺は化け物とか魔獣とか言われてきたんだ!捕まったら殺されるって分かってんだぞ…!?」


エルドがキュッと指を摘んで横に引くと、ゼオの口がきゅっと閉まった。


無表情でやってのけるところが怖い。


はぁーと、レオリオはため息をつく。


「別に殺そうなんて考えてない。そんな鬼畜じゃないんだよ俺は」


ギロッとレオリオを睨む。


「威勢のいい子供は嫌いじゃない。俺もそうだったから。」


ポンポンと頭を撫でる。


「ゼオ、何歳だ?」


エルドが指を離す。


「…13歳」


「13???グレンとそんなに変わらないじゃないか」


ふーんと見る。

迫害されてて栄養がいきわたってないからか、随分小柄だ。


「魔法使いになるか?」

「え?」

「サンザにきて、魔法使いの勉強をするんだ」

「……はぁ?」

「エルドが師匠になってやれ」


エルドが無表情で何かを訴えてきている。

なんだろう。

初めて表情で言葉がわかる気がする。

レオリオはちょっと感動した。


「命令だ」


「御意」


「アルベルト、あとは任せた」


「かしこまりました」


レオリオは部屋を出て行く。


アルベルトはメイドに指示をしている。


エルドはゼオを見る。


ホラ、殺されなかっただろう?と目で訴えた。

ゼオは目をパチパチさせている。


「次逃げたら、全身から血が噴き出て死ぬ呪いをかける」


エルドはゼオに脅しをかける。

ゼオは恐怖で全身から血の気が引いた。


***


ゼオはメイドに連れて行かれた。

風呂に入れられ、身なりもちゃんとしたものに着替える。

ボサボサの髪の毛も整えられる。


すると、もともとの整った顔立ちと金髪。小柄だがバランスの取れた体のせいか貴族の子供のように見えた。

エルドと同じだ。


だが、その口調や態度、仕草は平民のそれであり、城に連れて行ったら矯正が必要だ。

いずれは王室所属魔法使いに育て上げる。


エルド曰く、魔力はエルドと同等。天然の才能もあるらしい。


そして、新しい魔法使い見習いを連れて、サンザへ戻る日が来た。


「瞬間移動を使いましょう」


エルドはレオリオに抗議していた。


「ダメだ。お前ぶっ倒れたの忘れたのか」

「忘れておりません。何日もこれの中にいる方が苦痛です。」

「自分の限界を弁えろ」

「先日は、前の日に魔法を使っていたので疲れてただけです。今日は万全ですし、万が一倒れたとしても、魔力を補充できるスペアがおりますので」


ポンと、ゼオの肩を叩く。


「…陛下… 帰りは我々と騎士だけですので問題ないのでは?」


荷馬車は雇いなのでほっといてもいい。

帰りは馬車2台だ。


「…ゼオ。お前こいつが倒れたらすぐ回復できるか?」


「回復魔法はもう何年も使ってるし、俺元気だから全然できるっつの…」


ゼオはまだ何かに納得していないような顔でブスッとしながら答える。


ゴツンとアルベルトが拳骨を喰らわす。


「言葉を慎めとあれほど言ったはずだ!」

「…」


ゼオはべーっとアルベルトに下を出している。


このやりとり何度めだろう。

1日に一回は見ている。


「アルベルト、せっかく拾ったのに叩きすぎてアホにならないようにしてくれよ…」

「しかし!陛下!!!」

「まぁ、帰るか」


全員乗り込み、エルドは魔法を使う。

東部をようやく後にし、サンザへ戻った。



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