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2-2

アドレ伯爵邸の一室にエルドは寝かされた。


伯爵邸の医者を来させ診療もさせたが、原因不明だった。

とりあえず、安静にといい医者は引き上げ、また明日来る予定だった。


「教会に行くまでは全く普通だったのですが…」

「具合が悪くてもコイツはいわないだろう。それに、いつも無表情で無口で気配もないに等しいから誰も気が付かなくて当然だ」


「移動魔法で無理したんでしょうか?」

「寝て治るならいいがな」


レオリオはベッドで眠るエルドのそばに椅子を置き、じっと見ていた。

隣に立つアルベルトを見上げる。


「伯爵邸のメイドに世話を頼んでおります。陛下は晩餐の時間ですので、まいりましょう」

「…わかった」


主人はどうにも心配でそばを離れたくないような雰囲気をしている。

この魔女にどうにも執着しているようだ。


それでも、陛下としての仕事があるのでついているわけにもいかない。

どうしたものか。


***


その夜、伯爵邸から離れた場所にあるトリスタンの港

夜の漁にでている船が一隻。


「親分!!」


「なんだー?しっかり網を持て!」

引っ張るぞー!


「あれ、なんだ??」


海底に光が見える。


「とにかく、引っ張れ!」


男4人がかりで重く大きな網を引っ張り上げる。


大量の魚が船の上にビチビチとあがる。

その中に光る大きな塊が一つ。


「これ、人間じゃないか?」

「子供だ…」

「子供が寝てる…

「生きてるのか?」

「わからねぇ」


男達は魚そっちのけで子供に声をかける。

息はしているようだが、光っている原因がわからず不気味である。


「親分?」


一人の年長の男がようやく近づき、息を確かめる。


「息してる…船ん中連れてくぞ。毛布よこせ。あと二人は魚、任せたぞ」


子供を抱きかかえ、中に進んでいく。

抱き上げると、光が消えた。

10歳ほどの年頃で、髪がボサボサだが金髪の短髪で少年のようだった。

みずほらしい、服を着ていて体のあちこちにあざがあった。


とりあえず、その子供を街に連れ帰ることにした。


***


エルドが寝てまるまる1日がたとうとしていた。

医者がまた来たが、やっぱり原因不明のまま。

すうすうと寝ているので疲労の線が高い気もする。

熱が相変わらず高い。

でも、苦しむ素振りもなくスヤスヤと寝ている。

レオリオはエルドの額の桃色の髪を触る。


「子供?」

「はい。トリスタンの港に子供がうちあがったようです。」

「死体だろ?あの教会で聞いた子供じゃないか?」

「いえ、生きているそうで、海底から引き上げた網と共にうちあがったそうなんですか、まるで魔法のように体が光っていたそうです。」

「まほう…」


「その少年ですが、街の漁師の家に流していたようなんですが、ちょっと目を離した隙にいなくなったそうです」


「…なんだと?」


「探しますか?」


「…見回りついでに見かけたら保護するように騎士達に伝えろ。優先は街の安全だ」


「トリスタンの港は離れているので、こちら側に子供の足で来るのは難しいのでは?」

「そうか…港付近担当の警備員はこのことを知っているよな。保護したらここに連れてくるように伝えろ」


「かしこまりました」


***


コンコンコン

「はい」

トリスタン教会に近衛騎士が尋ねる。


「これは、騎士様、どうされましたか?」


「先日、港の方で少年が一人見つかったようで…

ご存知の方はいないかと確認に来ました」

騎士は教会のシスターに尋ねる。

すると、シスターはギクリとした様子を見せる。

「少年…」

「はい。特徴が10歳ほどで短い金髪をしているようです」

「えっ」

シスターは何故か青ざめる。

後ろから男が出てくる。

「知らないな。だが、死んでるんだろ?」

「いえ、生きているようで…ただ保護した後に行方を絡ましていて…こちらにくる可能性もあるかと…」

男は真っ青になったが、首を何度もふる。

「知らないな。ここにもしも来たら保護しておきますよ」

「そうですか。ではよろしくお願いします」


近衛騎士は帰っていった。


出て行った後、シスターと男は顔を見合わせた。


「どうしますか…」

「生きている…やっぱり、化け物だな」

「ここにくるかしら…」

「こないはずだ。来たってどうせどんな間に合うかわかっているだろう。だけど、国王の近衛騎士達に見つかったらまた面倒だ…」


ごくり、と唾を飲み込む。



***


エルドが倒れて三日目の夜。

トリスタンの街の中心部。

家の屋根の上、シュンと人が現れる。

金色の髪と、緑の瞳の少年だ。

ふぅ、と一息つき屋根の上にへたり込む。


「疲れた…」


へとへとだった。

港の家で目が覚めてから、無我夢中で逃げた。

家の机に置いてあった果物だけ拝借して、隠れたり、休憩したり、少し寝たりしてやっとここまで来た。


「意外と遠かったなぁ…」


この大きなお屋敷は知ってる。

街で知らない人はいない。

アドレ伯爵様の邸宅だ。

目的はあと少し。

ただ、叶うならここでちょっと食べ物を貰いたい。


伯爵邸ならちょっと貰ったってわからないはずだ。


また、瞬間移動する。

邸宅の中に侵入して、厨房を探す。

暗い。

見つかったら絞首刑かもしれない。

だけど、いかなきゃいけないところがある。


だけど、その時、何かを感じた。


なんだろう。

この感覚。

何かに引き寄せられている。


少年はその何かに向かって瞬間移動した。


パッと移動した場所でキョロキョロとあたりを見渡す。

(だれもいないのか?)

ふと、机の上に果物が置いてあるのに気がついた。

(ラッキー)

もぐもぐと果物を頬張る。

全部飲み込んだあと、ベッドに誰か寝ているのに気がつく。

(あれ?やべ、誰か寝てる)

ギョッとして逃げようとするが、引き寄せられるものがあり、意を決してベッドに近寄る。

(なんだ?この感覚…)


ベッドには綺麗な女の人が寝ている。

スヤスヤと寝ている。


なんとなく、頬を触る。


「熱が…」


熱が高い。

でもなんだろう。

この感覚。

自分の中にあるふわふわとしたものと同じものがこの人の中に感じられる…

でも、少ない…

少年は知っていた。


「少なすぎて、起き上がれないんだ」


すこし、わけてあげれるだろうか。

なんとなく、本能で察した。

少年は両手を彼女の体の上にかざす。

すると、青い光が体を包んだ。


しばらくして、光がなくなる。


もう一度、頭を触る。

熱がなくなった。


少年はじっと女の人を見る。

ドキドキする。

もしかして、自分と同じなのか。

話してみたいな。


だけど、いかなきゃ。

最後に会いに行かなければ。


「またね、お姉さん」


少年は、ふっと消えた。


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