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2-1

ある日の午後、エルドは執務室へ呼ばれた。


「東部へ行く」


なので一緒にこいということか。


「御意。移動させればいいでしょうか?」

「いや、馬車で向かう。騎士団も連れて行くからな」

「私はどうすれば?」

「馬車で行くぞ」

「…馬車…」


不思議な顔をしている。


「馬車が嫌なのか?」

「面倒ですし、初めてなのでよくわかりません」

「そうか、初めてか。よかったな」


サッサと行くぞと腕を引っ張られる。

レオリオの準備は出来ていた。


東部へ向かう意味ならわかる。


先日の洪水による、被害の確認だ。

そして、支援物資の運搬も兼ねている。


あれよあれよと、すっかり準備の出来ていた馬車に放り込まれた。

目の前にレオリオが座る。

エルドの隣にアルベルトだ。

エルドは借りてきた猫のように馬車の中でダンマリだった。


「どうした?」

「……どうもしてません」

「馬車がそんなに嫌だったか?」

「いえ、珍しいだけです」


エルドは窓の外をじっと眺めている。

普段景色など気にせず移動をしている為、こんなにゆっくりと外を眺めるのも初めてだった。


「エルド様には珍しいでしょうね。東部まで2日はかかりますから。ゆっくりされてください」

「………2日?」

「はい。2日です」

「………は?」


このスピードで2日???????

信じられなかった。


「エルド?」


馬車は2つ。

その後ろに荷馬車がさらに2つ。


1日遅れでさらに荷馬車は東部へ向かう予定だった。


エルドはふぅ、とため息を吐く。


そして、ブゥンと大きな魔法陣を展開した。


次の瞬間、馬車は全て消えた。


***


「あれ?ここ、東部だな」

馬車の手綱を握っていた従者がキョトンとあたりを見渡した。

景色が一変した。さっきまで首都サンザの街を抜けた森に差し掛かっていたはずだったが、気がつくと丘の上だった。

丘の下には街が広がっている。

向こう側が家が破損していたり、木が倒れていたり、土砂のあとがある。


間違いなく東部だ。


レオリオは驚いて、エルドを見た。


「………おい」


「………2日は、無理です」


魔女は移動時間に耐えられずに全てを移動させた。

2日かかるところを一瞬で移動させたのだ。


これには全員驚いて、外に飛び出していた。


「へっ、陛下!!!ご無事ですか?!」

「これはどうしたことでしょうか?!!」

あわてて全員馬車から飛び出してくる。


「魔女様の力ですか???」


「………そうだ。皆無事か?」

「我々は無事です!いや、すごいですね!!!!」

騎士達はわぁわぁ喜んでいる。

当の魔女といえばしれっとした顔で馬車に座っていた。


いや、楽だったけども…

こんな大々的に魔法使って大丈夫なのかと不安になった。


「いくぞ」


レオリオは冷静に指示して、馬車に乗り込む。


エルドは黙ったままだ。


「エルドー!!魔法使う時は先に言え!」

「……御意……」


怒られた。

しかし、二日もこの狭い中に閉じ込められるなど耐えられなかった。


エルドはレオリオの顔を見ずに外を見ていた。


***


アース王国の東部に位置する街トリスタン。

今回、この街が1番被害が大きかった。


東部を大きく治めるのはアドレ伯爵だ。

この前会議でレオリオに怒られていたのは、同じく東部に領地を持つカール侯爵だった。


「陛下、お越しいただき誠に有難う御座います。トリスタン民も、たいそう喜んでおります」

アドレ伯爵は東部にて領民や被害の修復にあたっている。


領地にあるアドレ伯爵邸にて今日は宿を取る。


「ですが、予定では2日後では…?」

「予定が早まったんだ」


聞くな、と言う目で訴える。


「それより、現状報告しろ。物資を運ぶのはあと場所とか指示しろ」


被害のあった場所を歩きながら話す。


「御意。ご覧の通り、川の氾濫でトリスタンの川に近い場所に位置する家が水に浸かりました。

川からはずいぶん離れた場所だったのですが…

これについては現在教会や。保護施設で過ごしております。

川に流された者もおります。

もう、諦めでしょう。

あとは川の周辺は基本的に農作物だったので、こっちはもうダメです。再度の収穫まで

どれくらいかかるか…」


「そうか。東部の他の地域からしばらくは供給を分け合う必要があるな。あと、近隣地域からも支援を送るように動く」


ぐちゃりぐちゃりと、足が泥に浸かる。

レオリオは、それも気にしない。


「ひどいな。」


「陛下が来てくださっただけでも、民衆はずいぶん力づけられたようです。いらっしゃった時の馬車をみて泣いている者もおりました。」


「災害の後は強盗、火事が多発する。見回りは強化させているか?」

「そこまではまだ手が及びませんで…」

「夜の間、連れてきた騎士達を見廻らせよう。今休ませているから」


「え?!でもおつかれではないでしょうか?」

「大丈夫だ。全員ピンピンしている」


伯爵にはレオリオが鬼のような男に思えた

だろうが、事実誰一人疲れていないのだ。

夜の警備はもともと予定していたので、今のうちに休むよう指示している。


問題ない。


一行は、教会へと向かった。


中には避難しているトリスタン市民がいる。


レオリオが入ると、民衆は皆頭を伏せた。


「顔を上げろ。大変な思いをしたな。復興にはちゃんと支援をする。気をしっかり持て」


それだけ言うと、皆涙を流して喜んだ。

ありがとうございますと汚れた服の男や妻と思える女。

子供、老人達、皆また頭を下げた。

30人ほど集まっているようだった。


そして、去ろうとすると


「陛下!!!」

「こら、レイチェル!」


一人の少女が飛び出す。


「ゼオが…!」

「こら、やめろ!」

少女の手を掴み下がらせる。


「ゼオ?」


「あっ、おそらく、川に流されたと思われます。不幸な事故で……孤児だったのですが…」

「えっ?!」


父親の言葉に驚いたように少女が振り返る。


「流された…」

「陛下、申し訳ございません。運が悪かったと、もう諦めております。引き止めて申し訳ありませんでした」


頭を深く下げる。

少女はありえないと言う顔をして見上げている。


一行は教会を後にする。


「友達だったんでしょうね。流されたなんて可哀想ですね」


アルベルトがレオリオに話しかける。


レオリオはどこか引っかかる顔をしていた。

だが、その時。


バタン


後ろで何かが倒れる音がした。


「えっ、エルド様?!!!」


後ろをついてきていたエルドがいきなり倒れた。


「エルド!!!エルド?!」


レオリオは駆け寄る。

返事がない。

意識はなく息はしているが、体が熱かった。


「陛下、私が伯爵邸へ連れて行きます」

アルベルトが手を伸ばした、それよりも早くレオリオが抱き上げた。


「行くぞ」


「はっ、はい」


伯爵邸へ急いだ。


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