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1-9

城でぼんやりと空を見ていたら、いつものように呼ばれた。


ガリオール男爵の奥方である。


男爵といえば、サンザの経済の中心人物で、輸出入でも上位に入る。

港ではかなり力がある人物として顔が広く、ガリオール男爵に歯向かう人物はうらで消される


何故、奥方と契約を結んでいるか。

数年前、ガリオール男爵は世間に知られずとして突然失踪した。

男爵不在となったことが世間にバレれば現状の経済、治安の統制などがまったくの無に帰る。

また、ガリオール男爵夫人は夫と共に事業を行なっていたが、この時代に女の力などでまわせるわけもなく、当然矢面に立つのは男爵であった。

また、屈強な港の男たちをまとめるのも、女では難しい部分があった。


そのため、男爵が失踪したときは途方に暮れた。

世間には療養中ということにして隠した。


そんなときに魔女と出会い契約をしたのだった。

それから、男爵になっているが行方不明の男爵が現れることはなかった。


そして、今。


エルドはいつものように男爵夫人の部屋に現れる。


「魔女様、ごきげんよう」


夫人の様子がいつもと違う気がする。


「こんばんは」


いつもあったどこか不安な様子がなかった。

ガシッとエルドの手を掴んでくる。


「魔女様、夫が、夫が戻ってきました」


目を潤ませながらエルドに訴えてくる。


「…それでは、契約終了ですね」


エルドは素早く契約解除の魔法を使おうとする。

だが、それよりも早い何かがあった。


「これからも、私達に強力してくれませんか?」

ぎゅっと両手でエルドの手を掴み離さなかった。

「夫は帰ってきましたが、まだまだ魔女様のお力を借りたいのです。」


欲に満ちた目でエルドを見てくる。


「…約束は完了です。契約は終了です」


エルドは冷たく言い放つ。


「どうしてですか?お金ならこれからも同じように渡します」


いつもなら、別に断る理由はなかった。

だが、今は違う。王様との契約があるので、ここで、終わらせておくのも都合がいい。

夫人の願いは叶ったのだ。


「契約終了です」


パァン


拳銃の音が鳴り響いた。


拳銃の弾はエルドの心臓を貫いた。


その場にバタンと倒れる。

床に血溜まりが広がる。


「…断らなければ死ぬこともなかったのにな」


部屋の影から本物のガリオール男爵が現れる。


「アンタ、ちょっと殺すことないじゃないか」


夫人が話しかける。


「俺は正直、こんな訳の分からない小娘なんて信用ならないからな。死んじまった方が安心する。」


ケッと吐き捨てる。


「アンタの代わりに何年も頑張ってくれてたんだよ?」

「この小娘が?信じられないな。俺はずっと記憶をなくしてあちこち彷徨ってたんだ。さっさと探してくれた方が良かったよ。」

「でも、殺すことないわ。説得したら彼女の魔法で私たちの力になってくれたはずよ?」

「魔法?」

「そうよ、この子は魔法使いでその力でずっと…」


だが

そのあと夫人は何も言えなくなる。


「どうした?」


振り返って驚愕する。


夫人の顔は青白くなり、ぶるぶると震えていた。

首元に手を押さえ、何かに耐えている。

だが、束の間。


ブシュッ


一瞬だった。


バタンと夫人の体は倒れる。

口や鼻、耳から大量の血が噴き出たのを男爵は見た。


男爵の体も血がかかっている。

呆然とその場を見つめた。


「どう…なっているんだ?」


目をあらんかぎりに見開き、夫人の体を凝視する。


その奥で、ボウっとエルドの体が光り始める。


光が溢れ、やがて光と共にエルドは、消えた。


男爵は何が起こったのか未だに理解ができず、ただ夫人の体を見つめ、そして


叫んだ。

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