漆黒の梟
かつて常世と呼ばれていた庭を追放された日
僕は思い知ることになる
飛び込んだ新しい世界に
僕の居場所など最初から無かったのだ
飛びかたを知らないと生きてはゆけないこの世界では
望まれる事の無い埃と同じなのだ
瞳を伏せた先には虚無の世界が広がる
まるで無限の暗闇
空気にすらなれなかった僕を
小さいころから知っている温かな羽が包む
僕より少し早く生まれた片割れはいつも優しい
貴方へと伸ばしかけた手を隠し悪態をつく
曖昧な距離感がもどかしい
成長するたびに開く距離
遠い貴方の影を追っていた僕は
もどかしさの意味にようやく気付いた
この世界は貴方で満たされている
近付く程に変わってしまう距離に焦り
依存する程大きくなる恐怖
拒絶される未来に怯えた
貴方の幸せを願っていた筈の僕が
自分を見失ってしまう程
貴方に執着している
情けない仮面の下に狡猾な顔を隠したまま
僕は夢の終わりを待つ
嫉妬に狂いそうな長い長い日々
許されない罪を抱え
繋いだ絆に絡み付く枷は
鈍い痛みと罪悪感にまみれ天を壊す
幸せな罪深い僕達
嵐の中で逃げ惑う鳥達
凍えてゆく世界
あぁ夢の終わりがやって来た
瞳を伏せた先には虚無の世界が広がる
まるで無限の暗闇
常夜へ墜ちてゆく底の知れない恐怖
荒ぶる風に繋いだ絆は絶ち切られ
振り返った闇の中に貴方を見た
けたたましい鐘の音が響く
突然閉ざされた背に響く貴方の声
繋ぎ直した手は烏に啄まれ喰われたのだろうか?
僕だけが現世に引き戻され
斜陽の空の下
貴方の居ない世界にただ一人立ち尽くす