脅迫
私が今生活している世界は、私の江戸時代のイメージにかなり近い。
でも、ダンスクラブやカラオケは普通にある。
風貌がちょっと古くさいだけなのだから、我慢しよう。
「ラティマー、私に弟がいる事、知ってる?」
マウ様が聞いてきた。
「いいえ、知りません。」
「そう。お願いがあるの。私の弟の料理を買ってきて欲しいの。献立は何でもいいからさ。」
「かしこまりました。」
私は買い物籠を手に、市場へ出かけた。
どうやらこの世界は、人間が普通に獣に変化するらしい。
特殊能力、か。
ん~と、献立は~?
カレーにしよう。
私はカレールーとニンジン、じゃがいも、牛肉を買った。
宮廷に戻り、カレーを作り終えると、急いでマウ様の弟がいる部屋へ向かった。
「失礼します。」
私は堂々と入った。
「マウ様の弟はどこにいらっしゃるのですか?」
私は高級な着物を着ている女性に聞いた。
「誰があんたみたいなブスに教えるか。帰れ!」
「・・・マウ様の命令で、マウ様の弟である方の夕食を持って参りました。」
上級な着物を着た女性は立ち上がった。
お香の匂いがぷんぷんとただよう。
次の瞬間、カレーが床にぶちまけられた。
「帰りな!こんな料理、ガンジ様は好きじゃないよ。」
「ガンジ様、とは?」
「はあ?そんな事も知らずに給料もらってんのかい。バカだねえ。帰れ!」
私は仕方なく部屋を出た。
出る間際に言う。
「マウ様は私を侮辱する者に対して6千万円の罰金を払わせると言っていました。ですが、あなたの家にそんな金は無い。どうします?このまま傲慢な態度を取り続け、家を滅ぼすのか、私に謝り、家を守るか。どちらを選びます?」
「・・・ごめん。」
「許しません。」
「・・・ごめん・・・なさい。」
「それでよし。それ、片付けとけよ。」
私は部屋を出て行った。
私は気付いていた。
あの女はもう長くない、と。