喧嘩
侍女というのは、真面目に仕事をする女性・・・という訳でも無いようだ。
私以外の侍女は、勤務中であっても御菓子を食べたり漫画を読んでいたりする。
なら、自由時間なら真面目に働いて・・・いないようだ。
まったく、呆れる。
仕事など、頼まれた事しかやらない。
私たちのような下級の侍女でも、勤務中に遊んでいる侍女がたくさんいるのに、上級の侍女なんかはもっとひどい。
勤務中に宮中の金で豪遊したり、歌を歌っていたりする。
それでも給料は私たちの10倍以上だ。
まあ、少なくても取りあえず給料はもらっているので、文句は言えないが。
「ねえ、あなた。これ洗濯しておいて。」
上級の侍女が、私に仕事を押し付けてきた。
「ごめんなさい、今忙しいので、御自分で。」
私は今、異国に文を書いているのだ。
内容は、なんか分かんないけど同盟締結を申し入れる内容だ。
「あんた、下級のくせに私に逆らう気?」
下級も上級も関係ない。
お前らはただ、豪遊しているだけ。
何の役にも立たない、生きる意味の無い奴らだ。
「黙ってないで何か言えよ、クズ。」
その場にいる同僚たちは、皆、知らんぷりをしている。
「何か言えっつってんだろ。」
上級の侍女は、私の頬を殴った。
そこまでされては、さすがの私も限界だ。
上級の侍女の胸ぐらを掴み、髪をものすごい力で引っ張った。
「お前なあ、役立たずの分際で何言ってんだよ。私はお前らより何倍も何十倍も働いている。それなのに、お前の給料は私の10倍以上だぞ。いいか、今から言う事は、お前みたいな低知能な奴でも分かる話だ。給料もらってんなら命懸けて働けよ。」
「な、何で私があんたみたいな年下から教えられなきゃならないんだよ。お前みたいなガキから教わる事なんて1つもねえよ。」
「アホか、お前は。聞くけど、お前何歳だ。嫌なら、その細い指を一本ずつ嚙みちぎってやろうか?」
「・・・36歳。」
「何だ、中年か。化粧で顔ごまかしやがって。あのなあ、お前さっき年下に教わる事なんて1つもねえって言っただろ。マウ様はどうなんだ?マウ様は今年で18歳だぞ。年下に教わる事が1つもねえくせに、年下の言う事聞くって頭大丈夫か?それとも、嫌々マウ様に仕えてんのか?私を殴った事を謝れ。断ればマウ様に、お前が嫌々仕えていると報告する。」
「・・・」
どうやら、言い返せないようだ。
「分かったら職場に戻れ、お前といるだけで部屋の空気が重くなる。消えろ。」
私は中年の女の髪を離した。
中年の女がドンと尻もちをつく。
「ざまあみろ。」
中年の女は逃げていった。
私は驚いた。
学校でエースと呼ばれた私が、こんな性格を隠し持っていたなんて。
やはり、刺激が足りなかったのだろうか。
・・・少し、頭を冷やそう。
実際私も、怒るとこんな感じの言葉遣いになります。