漫画
私が見つけた物。
それは、おっさんに送られた賞状だった。
『宮廷医療指導者 ナバ殿』と印刷されてある。
あのおっさんの名は、ナバか。
令和からしたら、ものすごく変な名前だ。
「へい、渇芽水と花紫だよ。」
「ありがとうございます。」
薬草を受け取ると、宮廷まで戻った。
「買って参りました。」
マウ様に報告した。
マウ様は寝転がっていた。
「御苦労。」
マウ様はそれだけを言い、再び目を閉じた。
「他に何か命令は?」
暇が大嫌いなので、聞いてみた。
「何も無い。宮廷の金を使い、買い物でもしてきたらどうだ?」
宮廷?
私の頭にハテナマークが浮かび上がる。
「しかしながら、マウ様が努力して貯めた金銭を、私の我がままで費やすのは少々気が引けます。」
親の金で買い物をするのならともかく、主君の蓄えで買い物をするなどもっての他。
「別に、私の金じゃない。死んだおやじとおふくろの遺産だ。」
・・・私と同様に、少々口の悪いお方だ。
「私に欲しい物など、肩書きと権威ですよ。まあ、どれもこれも、マウ様からしたらくだらない物でしょうけど。」
「肩書きならいくらでもあげるわ。そうね、侍女筆頭ってのはどう?」
「ありがとうございます。」
肩書きなど、自身の欲望から生まれるものにすぎない。
でも、肩書きが欲しい。
それが私の悪い所。
「それでは、何かあったら知らせて下さい。それと、漫画とか、ありますか?」
「あるわ、地下室にね。無料でいつでも読めるから、遠慮はいらないわ。」
この宮廷、とってもお得。
宮廷の金銭を使って買い物ができるし、漫画がただで読める。
私は部屋を辞し、地下室へ降りた。
漫画マニアでも驚くほど漫画が並んでいる。
「あっ。」
どうやら、検索機能があるようだ。
私が大好きな『太陽の女神』という漫画を検索してみた。
すると、前から十五列目とモニターと表示された。
「十五列目、十五列目、十五列目・・・あったっ。」
『太陽の女神』シリーズは、知る人ぞ知る大人気漫画だ。
環境破壊が進む世界を舞台とした物語。
環境破壊が進み、次第に太陽も光を失っていき・・・
そこに現れたのが謎のエコ集団『ヒカリ』だった。
そのエコ集団『ヒカリ』は世界に光を取り戻そうと、犯罪に手を染めて行く・・・
という物語だ。
「・・・新刊、出たんだ。」