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夏空の下  作者: 大和屋
4/8

九尾

両手に手錠をかけられている私は、無力だった。

(ラーメン、チャーハン、カレー)

おいしい食べ物の名前が浮かぶ。

あの時、男に背かなければ、今頃おいしい食べ物が食べれたのだろうか?

役人たちが、私たちにご飯を配るために空けておく隙間から、他の牢をのぞいてみた。

その穴の横幅は、給食を乗せるお盆の横幅とほぼ一緒だった。

他の牢の人たちは、おいしいご飯を食べているのだろうか。

例えば、暖かいカレーや、熱々のスープとか・・・

・・・いや、違う。

そんな豪華じゃない。

私みたいな高収入の家で育った人には、カレーやスープが豪華なんてありえないかもしれない。

でも私がカレーやスープを豪華と言ったのは、予想していた料理よりも、皆が食べている料理が遥かに質素だったからだ。

どんなメニューかというと、お粥と漬物、黒豆という、いかにも罪人への待遇として、相応な物だった。

・・・獣の気配がする。

射抜かれるような視線を感じる。

「本当は腹が減ったんだろ。」

「え?」

声のした方を見ると、九尾の狐がいた。

「意地を張るな。腹が減るのは、誰でも同じだ。」

なぜか説得力のある声で、狐は言う。

「川にでも行くか。」

狐は私に聞いた。

「別に、魚なんていらない。」

私は冷めた声で言い放った。

「・・・あっそう。」

狐の気配が消えた。

振り返ると、そこには、焼き魚が5尾乗ったお皿が置かれていた。

私は側に添えられていた箸を握り、魚を一口、口に入れた。

塩味がして、とてもおいしい。

・・・あの狐、最初から渡すつもりだったんだ。

どうしてだろう?

私は罪人なのに。



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