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ダンジョン・マイホーム  作者: red axe
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第一話 幻想と現実の狭間で。

高校二年生 帰宅部の遠野セイヤは放課後に、同じく帰宅部の親友神崎トオルの家でゲームをするのが日課となっていた。

「セイヤの家ってなんか変わってるよな。」

しばしモンスターを画面越しに狩るのに夢中になっていた俺に親友のトオルは携帯ゲーム機の画面から目を離さず、唐突にそんな事を呟く。

不意にそんな事を言われて、心当たりのある俺は内心かなりぎくっとした。

「な、なんでそう思うんだ?」

俺の家の内部事情は他人に話してもきっと信じないし、そんな事話したら頭のおかしなやつだと思われる。

だって、そうだろう。家の中が〈幻想界〉になってるなんていえるか!

家の中には大きな城だってあるし、迷宮みたいなダンジョンだってある。

外見だけは普通の家だ、内装も普通。

ただ一カ所にその〈幻想界〉の入り口がある。

「いや別に。ただ今までセイヤの家に一回もいったことないなぁ、て。お前の家族の顔も見た覚えないな。」

俺はしばし返答に困った。

「あ、いや、すまん。聞いちゃまずいこと聞いたかな。」

トオルは申し訳なさそうにこちらを見る。

「えっと…父さんは海外に長期出張中なんだ、もうずっと家には帰ってきてないよ。」

「母さんは病気がちでずっと家にこもりきりなんだ。」俺は続けて、「病気がうつるとまずいから人は家な上げるなって言われてるんだ。」

いつもこの手のことを聞かれたら、ありがちな嘘をつき適当にごまかしている。

本当は父さんも母さんも家の中にいる。それも、家の中にある巨大な街に…。

しかも、仕事は…怪物退治。俺も何度か手伝わされた。

「そうなんだ…セイヤも大変なんだな。」

あぁ、大変だよ! こないだなんか武装したリザードマンの群れと戦わされ、危うく死ぬところだった。


幸いコイツは鈍感で、詮索しないタイプなのでつるみやすい。

俺はトオルくらいしか付き合える友人がいない。


流石にこれ以上聞くのはまずいと思ったのか、トオルは話題を変えてきた。

「お前て帰宅部の割にごつい体してるし、筋トレとかしてんの?」

「あんまジロジロ体見んな、気持ち悪い。そういう体質なんだよ。」

確かに自分では意識してないが大分筋肉ついてきたな…。

毎日、化け物相手に重たい剣ふりまわしてりゃあ、無理ないな。

「いいよな、俺の腕なんかすごい細いし。」「モテるために、筋トレしょっかなー。」

毎日ゲームばっかりしてる奴がよく言うよ…。

「それにお前、なんか顔ハーフぽいし…、羨ましいよ。」

そう、俺は実はハーフだ。現実世界と幻想界の。

母が〈幻想界〉の人間なんだ。


その後トオルと一時間くらい他愛ない話で盛り上がった。

化け物と戦うなら画面越しが一番だよ。

俺は、群がって来るゴブリンの大群をボタンを駆使してなぎ払っていく。

〈幻想界〉に帰ったら、このゲームみたいな事をリアルにやらなければならない。

俺はつかの間の休息を楽しんだ。


外へ出ると、あたりは薄暗くなっていた。


「じゃあ、また明日学校でな!」。

トオルは玄関のドアの所で俺に手を振っていた。

「また、明日な…。」

俺は手を振り返し、小さく呟いた。

明日も生きていられますように…。






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