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美少女って近くにいるのかも?

「では、3週間後に迫る春の体育祭兼球技大会について、みんなの案をまとめていきます」


 ホームルームの時間、教卓の前で癒しの天使こと桜井さんが委員長っぷりを発揮していた。


 なんて可憐なんだ……。やっぱり桜井さんとは仲良くなりたいよ!


「じゃあアンケートの集計結果をもとに――」


 あぁ、素晴らしい!なんて素晴らしい可愛さ!


「男子の種目はサッカーとバスケで女子は――」


 ダメ!輝きすぎだ!



 ビュン! ガツッ!



「痛っ!?」


 天使(桜井さん)に見とれていると、どこからか知らんがボールペンが投げられた。


 あまりのダメージに立ち上がっちゃったよ!


「や、山田君?どうしたの?」


 教卓の天使(桜井さん)やクラスのみんなの注目を浴びてしまった。


「な、なんでもありません!どーぞどーぞお話を続けて下さい!」


 と、天使(桜井さん)に笑顔を見せ、席に着く。


 ったく、誰だボールペン投げやがったのは!



「……バカ」


 ユージにボールペンを投げたのは千葉春菜。


「デレデレしちゃって……」


 なんて呟いていた。



「以上で本日のホームルームは終わります。残りの10分くらいは自由に過ごしてください」


 桜井さんはやりきった顔をしている。たかだかホームルームでも責任を持って務めを果たしてくれている彼女を俺が抱き締めてあげたい!


 まぁ、無理なんですよね……。現実は厳しいなぁ、二次元に行こうかなぁ。


「……現実を見ろ」


「うっ!」


 俺の心を読むかのように(実は)隣の席の東さんが言葉を発した。彼女は俺のことは見ていない。だが、確実に俺に言っていることは確かだ。


 このヘタレ野郎と呼ばれて16年!そろそろ名誉挽回?ん?汚名返上?何だこのべたべたな間違いは!名誉は返上するもんだ!汚名は挽回するもんだ!(※こいつは馬鹿です)ここでいっちょ、東さんとコミュニケーションを取ってフラグを建設してやらあ!


「あのー、東さん?」


「……」


「あの……」


「……」


「あずまさーん……」


「……」


 無視ですか東さーん。


「……何?」


 おおっ!反応してくれた!


「え、えーと……その……」


「用がないなら話しかけるな」


「す、すいません……」


 フラグを立てること、それギャルゲーの主人公にのみ可能な仕事だと我見つけたり。


 俺じゃ、こんな難攻不落の鋼の城塞、無理だぁ!


「……」


「……」


 そして授業終了のチャイム。なんか、どっと疲れた。せっかく癒しの天使である桜井さんで

俺のすべてを回復していたのに。




「ユージ、掃除行こ」


 放課後になり、千葉――改め春菜から掃除のお誘い。これはデートのお誘いと考えていいよね?


 昨日の放課後の一件で俺たちの中は急激に進展、これはもしかしたら!


「き、今日も一緒に帰る?」


 ありえるよね!!


「あ、部活だからパス」


「そ、そっか〜」


 ですよねー。


「で、でも誘ってくれたことは素直にうれしいよ」


 む!この反応は!?やっぱり?やっぱりなの?


「千葉……いや、春菜。お前、絶対俺のこと好きだよ――グハッ!」


「はいはい。言ってろ、ヘタレ」


「で、でもでも内心、思ってくれてるんだろ?あれだよな、ツンデ――ボフゥアッ!!」


 俺の親友ポジション顔も今ので、いっきに背景キャラ顔になっちまった。くそ、手が出るツンデレは主人公が困るから、やめて作者!


「そういやさ、ユージ」


 今では掃除中に会話することは俺たちの楽しみになっている……ごめん、俺の楽しみになっているに訂正。だから、春菜の方から話しかけてくれるのは凄い嬉しい。


「ん?」


「あんた、美佳子のこと好きなの?」


 ぶふうぅぅっ!!


「なっ!?な、なに言ってますの春菜さん?わたくし、女の子であるならば誰でも等しく愛していますわよ。……いや、まぁ桜井さんとは仲良くなりたいかなぁ程度ですよ、はい。そ、それに春菜さんとももっと仲良くなりたいっていうか……」


「え?あ……わ、私もあんたと――」


 少し春菜の顔が赤くなった気がした。


「あ、でも今日の朝見た赤いランドセルの似合う女の子……」


「ん?」


「いや〜、運命感じちゃったよ。俺と彼女の間は赤いランドセルで結ばれているってさ」


「は?」


「やっぱり可愛いのは何歳でも正義だね!」


「……」


「ど、どうしたの春菜さん?そんなに肩を震わせて……?」


「お前は……お前はずっと悪じゃあ!!」


 彼女の拳は俺の背景キャラの顔にめり込んだ。そして俺は意識を失った。 




 気が付けば、もう5時近く。春奈も部活に行ってしまっていてさびしく歩く帰り道。ていうか、誰でもいいから起こしてくれてもよかったよね。水道の前で倒れてたっていうのにさ。


 なんて、文句を言っていると前方で銀髪の幼女を発見!あれは絶対に、東さんで間違いない!!いや、幼女っていうのは正しくはないんですけど。


「東さーん!」


 とりあえず一人さびしく帰るよりは美少女と歩いて帰りたい!たとえそれが会話のないものだとしても!それがヘタレの限界なんだから!!


「……山田」


 東さんは俺を発見すると珍しく驚いた顔をした。これはレアなものを見た。


「……山田、家こっちなんだ」


「うん、まぁね。東さんも?」


 彼女は黙って頷く。あれ、なんか今胸がキュンとなった。


「……」


「……」


 俺の前を歩く東さん。もちろん会話はない。


「……」


「……」


 変わらず俺の前を歩く東さん。もちろん会話なんてあるはずがない。


「……」


「そろそろ会話しませんかっ!?」


「……しません」


 また胸がキュンと!そういえば朝も赤いランドセルの女の子に……俺、ロリコンなのか?


「……着いた。私はここで」


「え、あ、うん。ってここ俺の家じゃん!」


 脳内でロリコンを正当化しているといつの間にか俺の家の前まで来ていた。


「東さんの目的地って俺ん家?」


「……」


 東さんは俺の家と向かいの家を交互に見る。ちなみに俺の家の向かいの家は東という名字の人だ。


 ん?東?


「ま、まさか!?」


「……お向かいさん?」


 う、うっそおおおおおおおおおおん!!!!


 なんで今まで出会わなかったか不思議でならないんですけど!!



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