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場面変わりすぎじゃないか?

「山田ー、どこに行く気なのー?」


「うっ!?」


 ど、どこと言われましても。あ、あはは。


「あんた、あたしと同じで水道の掃除当番だよ。忘れてんの?」


 は、はい。掃除当番です。でも今日はほら、中学時代の友達が一緒にハンバーガー食べにいこって言うからそっちを優先してバッくれようと思ってるんです……なんて死んでも言えん!


 俺の前に君臨するこの少女、名を千葉春菜。茶髪のショートカットでいかにも運動部ですよねーといった感じの元気少女だ。しかし、中学時代は『下田坂二中に千葉春菜あり』とまで謳われた不良少女で一度俺は中学時代にぼこぼこにされた経験がある。まぁ本人は覚えていないようだが……。


「き、今日は用事がありましてですね。だからき――」


「却下だね。とっととやろー」


 こっちの話を最後まで言わせない千葉。うぅ、すまん中学時代の友よ、今日は行けなくなりそうだ。



「そういやさ、今日の用事ってなんだったわけ?」


 二人で水道をたわしやスポンジで擦りあいながらきれいにしていると千葉が急にそんなことを言い出した。


「あ、いや別に。大したことじゃないよ。中学時代の友達が今日、一緒にハンバーガーでも食おうぜって。ま、まぁ無しになったんですけど……」


「ふーん。中学時代かぁ」


 感慨深そうに思いつめる千葉。はっ!?中学時代の千葉はそりゃもうすごい暴君ぷりだと聞いている。もしかして地雷踏んだ!?


「あたしは中学時代にそんな遊びに誘ってくれるような友達はいなかったな」


 え?以外にも乙女的な反応!?そして少しさみしそうにうつむく千葉に俺は少しどきりとしてしまった。


「あんたはいいよね。友達も多くて、なんか悲しいことなんてなさそうで」


「お、俺だって悲しいことはいっぱいあるよ!」


「え?」


「今まで一回も告白でオーケーもらったことないし、告白されたこともない。毎日毎日下駄箱にラブレター入ってると思っても入っていたことなんてないし、曲がり角でパンを銜えた女の子とぶつかったりしたこともないもん!悲しすぎて現実を逃避したことあるよ!」


 なんか言ってて涙が出そう。今日家に帰ったらふて寝してやるんだから。


「ぷ、あは、あはははは!告白はどうしようもないとして最後のなんてあるわけないじゃん!マンガの見すぎじゃない、山田?あははは、おかしい!」


 腹を抱えて満面の笑顔で笑っている千葉。なんか千葉が元気になってうれしいのか、それとも俺の悲しいことを笑われているのが悲しいのか、俺の気持ちは非常に複雑。


「ま、まぁ元気になったんなら良かったよ。やっぱ千葉はそっちの方が千葉っぽい」


「なんだそりゃ?」


「暗い顔より笑ってる顔の方が似合うってことだよ、さて水道も使う人が『え?きれいすぎて使うのためらっちゃうんだけど……』ってくらいピカピカにしたから今日はもう戻ろうぜ」


 なんか急に恥ずかしいセリフを言ってしまったことに気づいて俺は千葉から逃げるように教室に戻った。


 千葉は『あたしは部活がこれからあるから、じゃあね山田』といってそのまま校庭へ向かった。そういや陸上部だったな……。しかし別れた時のあの笑顔は正直に言って可愛かった。もしかして千葉は俺のことを……ってないよなー。



「あれ山田君?」


 教室に戻ったらそこには我がベストマイエンジェル・桜井美佳子と銀髪無口ミステリアス幼児体型として陰で人気を誇る東空さんが残って何かの作業をしていた。さん


「さ、桜井さんも東さんも何をやってんの?」


「……関係ない」


 東さんにキッと睨まれる。この人、小さい割にすごい怖いよぉ。いや、可愛いんだけど目が鋭いというか、なかなかひとになつかなそうな猫みたいな印象です。見た目だけでいえば俺、めっちゃ好みの子よ?


「もう空ったら。ごめんね、山田君。私たちは今、今日取ったアンケートの集計をしてるの」


「アンケート?あぁ体育祭で何やりたいとかそんな感じのだよね?」


「うん。体育祭でやりたい種目を集計中なんだ」


 ニコッと笑う桜井さん。そんな顔を見るたびに俺の心は癒される。桜井さんってばやっぱり天使だ!いや女神だ!


「……美佳子。そいつはいいからやろ」


 ……ぐはっ!なんかこの子に言われただけで俺の脳髄までダメージが。東空、なんて毒舌……恐ろしい子っ!


「え、あ、うん。じゃあ続きしよっか」


 コク


 桜井さんはいそいそと作業を再開し始める。そのしぐさ一つ一つがたまらなくグッド!さらには東さんの『コク』と頷くところがまたグッド!おいおい、なんだこのグッド2人組は!最高じゃないか、もう一度言わせてくれ、最高じゃないか!


「じゃあ俺は邪魔すると悪いみたいだから俺は帰るね。2人とも頑張って作業を続けてくれ。また明日ー!」


 俺は2人に満面の笑顔をプレゼントして颯爽と教室を出た。ちょっと今の俺、かっこよくなかった?ねぇ?



「……やっぱりうるさい」


「そういうことは言わないの」


 かっこいいとは思っていないみたい。




「ただいまー!」


 俺は勢いよく家の玄関のドアを開けた。やっぱり家に帰ってくると落ち着くなー!


「おかえり。洗濯物あったら出しておいて」


 俺を出迎えてくれたのは俺を生んでくれた大切な母ちゃんだ。昔は銀行で働いていたけど今は専業主婦として家の家事をしてくれてる。母ちゃんの料理はとてもうまい。これは友達にも自慢できるぞ。


 とりあえず言われたとおりに洗濯物を出す。そのあとは自分の部屋でスーパー賢者タイムだ!


「あれ?おにぃ、お帰りー」


「お!ただいま、エージ」


 こいつは俺の弟の栄司。特に秀でてるものはないけど、兄である俺を慕っているよき弟だ。

ちなみに俺たち兄弟は仲が超良いぞ。これで妹だったら俺は……えへ。


「じゃあ俺は部屋に戻るから、何かあったらすぐに呼べよ、マイブラザー」


「了解」


 お互いに敬礼のポーズをする。こういうノリのいいところは俺が丹精込めて鍛えたのだ。うむ、中学2年生にしてはなかなかいいノリだ、兄さんは、いや師匠はとてもうれしいぞ。



 今日はなんか女の子といっぱい会話できたなぁ。とりあえずコタローのやつとは明日は口きかないとして……桜井さんと、千葉は仲良くなれそうだ。2人とも俺に好意をもってくれたりしたら主人公として締まるんだけどなぁ。問題は……東、空さん。ぶっちゃけあそこまで露骨に俺が嫌いな子は久しぶりだ。で、できればで、いいんだけど仲良くなりたいなぁ。


 うん!今日はとりあえず自分にお疲れ様でした!!




「なんか告白されてから妙に山田君意識しちゃうなぁ」


 桜井美佳子。



「山田かぁ。おもしろやつだね、やっぱ」


 千葉春菜。



「……山田、ユージ……」


 東空。


 意外にみんなまんざらでもないのか!?





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