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親友が主人公で主人公が親友で?

 県立下田坂高校1年5組、舞台はここから始まる。



「へー」


「ちょっと!真面目に聞いてる!?」


 とりあえず俺(山田雄司)は昨日、告白してふられたことを小学校からの親友・村上虎太郎、通称コタローに報告していた。なのにコタローときたらさっきから『へー』だの『ふーん』だのばっかりなんだよ!?ひどくないですか!?


「だってお前、まだ高校に入ってから2週間だぞ?なのに……17人ってなんだよ」


「可愛い子多いんだもん!誰も付き合ってくれないし、だからだから……」


「そのプラス過ぎる行動力とマイナス過ぎるヘタレ具合が見事に打ち消しあっちまってるな」


「なぁ親友?俺どうしたらいい?彼女作るにはどうしたらいい?」


 お前だけが頼りだよぉ、コタロー。


「そう言われてもな。かっこよければ自然と女の子はよってくるんじゃないか?」


「それはかっこいいやつしか言っちゃダメなセリフだろ?俺、自分のこと、かっこいいとか、思った、こと、ないし、どっちかって、言うと、キモいし、俺、俺……」


 駄目だぁ、涙こらえられないよぉ。


「な!?す、すまんユージ。落ち着けー、落ち着けよぉ、泣くな。お前はキモくなんかないぞ。むしろ男前だ」


 え?


「お前は顔だけ見たら悪くないんだぞ?」


「で、でも告白されたこと一度もないぞ!?」


 そうなのだ。生まれてきてから16年間、一度も告白されたことはない。好きな子はたくさんできたし、告白は数え切れないほどやったが誰も答えてもくれなかった。あ……思い出しただけで泣きそう。


「それはな、簡単だよユージ。お前のかっこよさが理解できない女しかいないんだよ、今までには。だがこれから先絶対にお前のことを心から愛してくれる女の子が現れるはずだ。だから頑張れ!俺も全力で手伝う」


「親友……」


 コタロー、俺はお前が親友であることをこれほど誇りに思ったことはないよ。いつまでも俺たち友達だからな!


「とりあえずだ。俺は幼馴染みの恵子が今日、一緒に飯食おうと言ってきたので行くことにする。さらばだ、親友」


 は?


 幼馴染みの恵子ちゃんだと?あの可憐で愛らしい恵子ちゃんがコタローだけを誘ったのか?もしかして恵子ちゃんってコタローが好きなの?つまりえーと、コタローってリア充なの?つまり俺のエネミーなの?


「裏切り者ぉ!!」


 親友として俺たちはいつまでも友達だと思ったけど、やっぱり友情は愛には勝てないのかよ!はっ!?そういえばあいつ、両親は海外に出張中でいなくて、可愛い幼馴染みは隣の家で?席は窓側の一番後ろで?……主人公ってあいつっぽくね?でさぁギャルゲの主人公の親友ってヘタレで女好きとか多いじゃん。あれ、なんかおかしくね?俺は主人公じゃなくて、そいつの親友的ポジションなわけ?


「認めないんだからな!コタローが主人公なんて認めないんだからな!」


 コタローとは親友だけど主人公は俺だから。譲れないから。


 ……そういや昼休みだったな。一人で母ちゃんが作ってくれた弁当食べよ。あとコタローを軽く呪ってやろ。



「母ちゃん、いつもありがと。ごちそうさま」


 弁当を一人さみしく食べた昼休みはなんだかつまらない。今頃コタローは恵子ちゃんと仲良く弁当でもつつきあってるんだろうな。忌々しい!


「え、えーと山田君……」


 ん?あ、君は!


「俺がこの高校で3番目に告白した桜井美佳子さん!」


「え、えーと……うん……あはは」


「で、どうしたの?もしかして付き合ってくれるとか!?」


「ううん、それはないんだけど」


 うぅ……即答だよ。や、やっぱりそうですよねぇ……。でも俺はまだ今まで告白した女の子のことも全員あきらめてないから!俺、負けない!


「私、クラス委員じゃない?それであの国語の先生から、この前の提出宿題を出せって伝えとけって言われて……」


 あー、なるほど。ていうか宿題やってねーや。


「そっか、わざわざありがとね桜井さん」


 よ、よし。い、言うぞ。


「て、ていうか直接言えばいいのになぁ、先生も」


「え?」


「だって桜井さんに迷惑掛かるだろ?それは俺の『女の子に迷惑はかけさせない』っていう信条に反しちまうしさ」


「……」


「まぁ先生には感謝だな」


「?」


「ま、また、か、可愛い桜井さんと話をさせてくれる機会をく、くれたんだから」


 とまぁ自分としてはそれなりにかっこいいと思うセリフを言ってみたんですが……やっぱり恥ずかしいね着飾って言うと!


「ふふ」


「?」


「山田君、いきなり告白してきた時は変な人かと思ったけど結構かっこいいとこあるね。信条とか、そういうの良いと思うよ。これからも大切にね」


 笑顔で彼女は言った。


「……あ、うん」


 そしてその天使のような笑顔に俺は不覚にもボーッとしてしまった。


「そ、それよりもお、俺、宿題や、やってねーから、急いでやんないたぁ」


 テンパりすぎてしどろもどろになるだけじゃなくて最後に噛んじゃった!は、恥ずかしい……。


「? まぁいっか。宿題頑張ってね、山田君」


「は、はいっす!了解しました委員長殿!」


 そして微笑んだまま桜井さんはご自分の席へと戻られた。


 桜井さんて……やっぱりかわいーよなー。この前はフラれたけど、今の一件で仲良くなれそうな気がする。彼女にせめて『山田君、最近頼もしいね』ってくらい気になってもらえるように頑張ろう!



「は?意味わかんねー。なんでユージが昼休みに勉強してんの?」


 ほう。戻ってきたか、親友にして我が最大の敵・コタローよ。


「この前の国語の宿題だよ。俺、まだ提出してなくてなー」


 とりあえずお前には桜井さんのことは内緒だ。内緒にしてやる。


「らしくないな。お前はもっとこう、先生に怒られながらもいつまでも出さないまま自然と忘れてくれることを待つタイプだろ」


「俺ってそんな!?」


「基本的にそんな」


 ちょっとショック……。と、言うよりも今の駆け引き!確実に今、この部分だけを見た人はコタローが主人公って錯覚しちまうじゃん!?た、確かに顔はそれなりだし?基本的に優しいし?ボケよりツッコミだし……。


 ま、負けない!主人公は渡さんからな!


「なんでそんなに睨むんだよ」


「敵だからだ」


「は?」


「だからお前が敵だからだー!!えー、そりゃ俺には隣の家に住んでる料理上手の幼馴染みも両親が海外に出張中っていうおいしいシチュエーションもねーよ!!告白してもフラれるし、告白されたことなんて一度もねー!遠い昔に結婚を誓い合った女の子もいなけりゃ、男口調のお姉さんなんて夢のまた夢だよ!」


「後半俺関係ないよな?」


「とりあえず後半部分に該当するやつも俺の敵」


「ま、まぁ落ち着け親友。だいたい女の幼馴染みなんてろくなことな――」


「その発言は主人公っぽいから禁止!ダメなの!この話は俺の話なの!それにお前とは親友だけどポジション的にはお前が俺の親友なの!」


「さ、さっきから言ってる意味がさっぱりわからん」




「ふふ。山田君達、賑やかだね」


 ユージ達から少し離れた席で桜井美佳子は彼等を眺めていた。


「……うるさいだけ」


 美佳子の隣に座っている銀髪の少女が無表情で言う。


「もう、空ったら」


「でも山田結構面白いよな」


 美佳子と空と呼ばれた少女に話に混ざったのはボーイッシュな女の子。


「まぁ見ていて飽きはしないな」


 さらに黒い長髪の少女。


「うん!だよな」


「ま、まぁちょっと女の子に対して情熱的だけど……」


「……美佳子、告白されたもんね」


「マジで?」


 と、いうふうに。


 自分の話題を女の子達がしているなんてユージは思ってもみていない。



「あー!もう、いいよ!主人公なんてお前にくれてやるよバカコタロー!」


 やれやれ。



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