第 三 話
階段を上り廊下に立つ。一階の研究スペースとは違い、暗い木目調の落ち着きがある空間だった。向かい合うように五つのドアが見える。
「一番奥の正面がナナキで、その右が僕の部屋。千晴ちゃんの部屋はここだよ」
メリザが案内したのは、左手にある、手前から二番目の部屋。ポケットから鍵を出して、開錠する。ドアを開けると、ギギっと静かに音がなった。部屋は六畳ほどで、ベットやクローゼットはすでにおいてある。女性が好みそうな、カラーでまとめられたカーテンやベットシーツはとてもセンスが良く見えた。
「ずっと使ってなかった部屋だけど、ちゃんと掃除して、家具とかも新しいから、安心して使って」
その言葉に千晴は驚いた。「新しく用意してくださったんですか?」
「そんな驚くことじゃないよ。それに、家具のチョイスは知り合いの女性でね、さすがに僕にこんなセンスはないから。また必要なものがあったら遠慮なく言って」
ありがとうございます、と千晴は頭を下げる。
「そうだ、忘れないうちに渡しとくね、この部屋の鍵と、この建物の鍵。あと裏口の鍵も渡しとく」チャリと一本づつ千晴の手のひらに置いていく。「一応、これも渡しとくね」そう言って、メリザの手に握られていたのは銃だった。「あくまで護身用。さすがに丸腰は危険だからね。打ち方はわかる?」
その問いに千晴はゆっくり頷いて、銃を受け取った。
「使わないで済むのがベストなんだけどね。まだ夕飯まで時間あるし、部屋でゆっくりしてて。荷ほどきもしたいだろうし、何より疲れてるだろうから。ご飯は基本的に外食とかでね、また時間になったら呼びに来るから」
そういってメリザは部屋から出て行った。
一気に緊張が解けた千晴はベッドに腰を掛ける。そのまま力を抜くとボスン、とベッドに転がる。その感触がベットの高級さを表していた。そのまま千晴は睡魔に襲われ、意識を手放した。