1-4-31-2 【桜瀬七波】 『猛火のスペクトラム』――駄文 2
……って終わり方は、一体どーなんだろーか?
まー、身も蓋もないあたしの逃亡から始まったこの物語だけど、そこからあたしは走りに走って、今ようやく一つの区切りへと辿り着くことができた。
誰も目にすることがなかったら。
あたしは延々と逃亡を続けなければならなかったけど。
あたしはたくさんの人たちの、ここまで読んでくれたその情熱を持って、どうやら今、一つのゴールへとやってくる事ができたらしかった。
励ましの声が聞こえた。
おバカな日常生活を楽しんでくれた声もあった。
あたしと一緒に、最初の夜の恐怖に身を寄せてくれた人もいたっけ。
叱咤のお言葉も一つ一つ、誠に感謝です。
そんな人たちの想い――暖かさがあったからこそ、この物語の始まりとなったあの駄文を、こうしてもう一度ここに書き連ねることができたんだと、あたしは思ってる。
そう、暖かさ――熱だ。
人の心に熱が、熱さがなければ、人はきっと動くことはできない。
冷え切った心で、人はどこへも行けないんだ。
あたしはここへたどり着くまでの間、いつだってそれを目にしてきた。
お兄ちゃんのあたしを守ろうとする心に――信じてくれる心に、静かな火のような信念を見て、あたしの心はそこから前に歩み出すことができた。
穂積の常連たちは、あんなんだけど、いつだって前向きに何かを成そうと頑張ってる。
あたしはそれを、羨ましいって思ってる。
莉々菜ちゃんも、何かを始めるといつも一生懸命。
頑張ってるみんなと一緒にいることが、暖かいって思ってる。
なくしたくないって思ってる。
咲子の情熱は本当にすごい。
あれに当てられたから、あたしは咲子の絵の監修なんて大それた事を引き受けるに至ったんだ。
ゲフリーさんも。
もしかしたら、あんな冷静、カチカチな頭の中に、あたしがまだ見ていない火を持っているんじゃないかって思ってる。
だからあんな無造作にとんでもない事をしでかすんじゃないかって。
あたしはもしかしたら……それに……。
……。
……そして。
――悲しみで生まれた火。
負の感情ではあるけれど、怒りという火はあたしを強く揺り動かした。
咲子に必ず、胸を張って会うためにも。
自分で自分を許せなかったその心のままに、どんな無茶であってもあたしはあたしの戦いの火を望んだ。
でも……敵わなかった。
どんなに憎しみの火を燃やしても、あたしの力は足りなかった……。
そんなあたしを助けてくれた人がいた。
遅れてきたヒーロー。
彼はあたしの内で、力なく燻ることになった無念の火の全てを聞いて、それを受け取めてくれた。
そして彼は――作家は。
その火を種火に、その身を戦うための猛火に変える。
未熟であっても、窮地に陥っても、決して諦めることなく。
最後の最後まで……あたしの内にもう一度燃え上がった火と一緒に炎となって、脅威に立ち向かってくれた。
それが今にして思えば、初めて生死をかけた戦いに臨むあたしにとって、どれだけ心強かったかしれない――。
……ね?
人の熱は、伝わるんだよ。
魂が燃やす炎が、本気ならばこそ。
本当に何かを成したい、何かになろうと強く想えばこそ。
人は、誰かの心に火をつける。
それが、人が人を動かすという事。
それが人を繋げるという事。
あたしの知ってる、
猛火で生まれる、連鎖――
◆◆ 宇宙警察フレイバーン ◆◆
第一幕『猛火のスペクトラム』
-了-




