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猛火のスペクトラム  作者: 雪乃府宏明
第1幕第4部
85/88

1-4-31-1 【桜瀬七波】 『猛火のスペクトラム』

クレシダ『サインアウト処理、正常完了ー』


 悪孔空間からぱたぱたと周囲が折りたたまれる風景を経て、元の空間にサインアウトしてきたあたしは、ふっと作家の真横に現れたらしい。


紅蓮「……うわおっ!?」


 唐突に表れたあたしに気付いた作家が、二度見でビビるなど。


七波「よ、作家、お疲れ様」


紅蓮「はぁ……七波かぁ……良かった……。また何か出てきたのかと思った」


七波「シツレーな。こんなかわいい怪物がいるか」


紅蓮「ある種怪物……」


七波「なんつった?」


紅蓮「いえ別に……」


 重厚な甲冑をまとったままの作家が小さくなる。


紅蓮「……とりあえず、終わったんでいいのかな」


七波「一応ここは、ね」


紅蓮「……そっかぁ……」


 その安堵したような声で、作家の真紅の甲冑が、バンッと外れる。

 そして空中で回転して光の中に消えていき、その中からあたしの良く知る作家の姿が再び現れた。


紅蓮「ふぁぁ……つっかれた……」


 作家はしゃがみ込んで、へなへなとした声を漏らしながら、顔を伏せる。

 連戦に次ぐ連戦を重ねてくれた結果だ、情けないとは言ってやるまい。


 あたしも、終わったとは思っていてもどこかでまだ緊張していたらしい。

 作家のそんな姿を見て心で安堵を感じたようで、一度大きく深呼吸を漏らした。


七波「……まさかこの一件に作家が関わってるとは思わなかったよ」


紅蓮「そりゃお互い様だよ。……体、大丈夫?」


七波「うん、大丈夫。作家は? 肩とか平気?」


 と、作家は左肩を触ってみて。


紅蓮「つつっ……!」


七波「大丈夫っ!?」


紅蓮「はは、問題ないよ。まぁちょっとは痛いけど、そのレベル」


 作家は心配ないところを見せるように、立ち上がりながらそう口にした。


七波「……なら安心だけど」


紅蓮「うん。バンバン撃たれて、ざんざん斬られまくって、故障したとか言われたけど、結局スーツのお陰でどうにか無事みたいだね」


七波「アレを耐え切ったってことだよね? 凄いじゃん」


フレイバーン「当たり前だ、宇宙の最新鋭技術体の結晶だぜ?」


 また作家の胸辺りからする声。


七波「あの甲冑、あんたが作ったの?」


フレイバーン「作れる訳ねーだろ」


七波「じゃあんたが胸張るトコじゃないでしょーよ」


フレイバーン「うるせーな。予備知識だっつんだよ。紅蓮が守れりゃ誰が作ったって一緒だろ」


 ……不満げにそんなことを言うフレイバーンだけど、悪い奴じゃないみたいだね。


紅蓮「巡洋艦から撃たれても平気らしいよ」


七波「まじでか。艦娘たちと共演できるか。……すげぇ、『かんむす』で『艦娘』って一発変換できた」


紅蓮「ブラウザでもスマホでもどっちでもいいけど、フツーの人は艦砲で撃たれたいとは思わないと思うよ……」


 と、周囲がにわかに慌しくなる。

 ……警察のサイレンが遠くから響いてきた。


七波「……で」


紅蓮「ん?」


七波「これから、コレってどうなるのかな」


紅蓮「コレって?」


七波「この物語」


紅蓮「括りが広い。レイヤー一つ越えてる」


七波「じゃ、この事件」


紅蓮「……分かんないけど、こういう事って当事者のはずの俺らの方がどうにもできないで、状況に振り回される事になるんだよね」


七波「あんたのソレも十分メタ発言だと思うが、どうか」


紅蓮「客観的な発言って言ってほしいトコだけど」


 でも言い分は分かる気はするな。

 何も知らない一般人が過剰な力を持たされたって、『権力』に使われるのがオチ。


 あたしも、それと戦うキャラになっちゃうのかなぁ……。



 ……そんな事より、まだあたしにはやらなきゃいけない事がある。

 面倒な事に振り回されるよりも、あたしにとって大切な、大切な事。


 咲子に会って……そして……。


 ……。


 ……そして……あたしは……。



紅蓮「……コロナ、この状況ってこれからどうなるワケ?」


 と、作家が胸に視線を落として、誰かに何事か聞く。

 ……実に奇妙な、見えないお友達と喋っている風だが……。


コロナ『本惑星の、惑星外事象対策本部とコンタクトが取れています。私が対応しますので身近な警察機関に問い合わせを願います。お二人の今後については、そこで具体案を提示されると考えられます』


紅蓮「……やっぱ今は分からないか……」


コロナ『この星の司法機関が、本件をどのように考えるかは、現状私も把握できません』


七波「まぁ、そりゃそうだよね」


 よその家の人に、我が家の都合なんて理解できるはずもないし。


 それにしても、対策本部、か……。

 咲子を連れて行った、あいつらの事かな……。


七波「えっと……コロナ?」


 あたしも思い切って声をかけてみる。


コロナ『はい。宇宙警察機構・特務捜査官捜査支援システムCLN型1728547号機。コードネーム『コロナ』です。ナナミ、初めまして。先ほどの戦闘、お見事でした』


七波「あ、いえ……それほどでも」


 急に丁寧に褒められることに慣れてないから、実はリアクションに困ったり。


七波「コロナ、こちらこそよろしくね。……まぁ……戦闘って言っても、こっちじゃあんなのは無理っぽくてさ、あの……悪孔空間? あの中ならあんなとんでもない戦いができるらしいんだけど。……あたし的には非常に不本意なんだけどね」


コロナ『その点については、恐らく同一要因で私としても不本意です』


??『同一要因ねぇ』


 コロナのシステムを通じてになるんだろう、作家の胸からそいつの声も聞こえてくる。


七波「見計らったみたいに出てくんなよ、同一要因」


クレシダ『あはは、まぁまぁ。ボク的には最初のお膳立てが、ばっちりマスターの意図にハマって大満足だけどねー』


七波「……」


 あっけらかんと言われるその一言に、少し考える所があって。


 ……マスターの、意図、ね……。


コロナ『あなたは銀河連邦政府における電子計算機損壊等業務妨害罪に始まるいくつかの犯行の現行犯です。しかるべき処置を執らせていただかなければなりません』


クレシダ『ふふ、処置って言ってもメインサーバーからの一時アクセス遮断が関の山でしょ』


コロナ『……対応は即時行っていくつもりなので、そのつもりでいて下さい』


クレシダ『宇宙警察の支援システムの腕前、篤と拝見させてもらうよ♪』


フレイバーン「コロナ、そのスケコマシ野郎、どうにか引っ剥がせねェのか?」


コロナ『防壁内の絶対アドレスを変更する必要がありますが、申請から承認、対応まで単純計算でひと月かかります。その間に別の対策を講じられる可能性は大。残念ですが、破られるはずのない防壁と高を括っていた本部の軽慮が裏目に出た部分と言えます』


フレイバーン「ちっ、役人どもが……」


 その辺は宇宙も地球も一緒って感じだねー……。


クレシダ『あのねぇ! さっきから女の子のお尻を追っかけるってのはまだしも、スケコマシだの野郎だのって、失礼だからね!? 『ボク』なんて言ってるし、声も結構な少年ボイスだけど、ボクは一応女性性を与えられてるの!』


フレイバーン「……はぁ!?」


七波「え、まじで!? 擬人化したらショタキャラだと思ってた!」


コロナ『データベースによれば、地球における『クレシダ』は確かに女性名です』


クレシダ『ふふ……七波についてるボクは『クレシダ』。マスターについてるのが『トロイラス』だよ』


紅蓮「え……それって……」


七波「……何?」


紅蓮「……いや別に」


 何か言いかけた作家の言葉が気になるが、それを問い質そうとした所で、サイレンの音は最高潮となり、この広い敷地にパトカーが何台も入ってきて、次々にスキール音を立てて止まる。


 そしてそのパトカーから飛び出して来た人たちが、周囲にテープを張ったり、何やら機械を使って計測のようなことを始めたりしていた。


 その制服……警察のものにしては不思議な形状をしている。

 機動隊のものとも違う、それをさらに頑強な形にしたような……どちらかと言えば全身プロテクターと呼ばれるようなその装備に……どこかで……見覚えが……。


 ……。


 ……あれ? もしかして……。


七波(この人達……咲子を連れて行った……あの……)


??「七波ちゃん、熾堂君!」


七波「えっ?」


 パトカーの間をすり抜けて、駆け寄ってくるその人は……。


七波「詩遥ちゃんっ! 良かった、怪我とかない?」


詩遥「大丈夫よ、これでも警察の訓練受け……って頭撫でんな、子ども扱いかっ!!」


七波「だって心配したんだもん! 思い余って自決までしようとするんだから……」


詩遥「あ、あれは……気の迷いよ……! ……あいつの言うとおり……多分実際には引き金引けなかったと思うし……」


七波「うん、良かった……ホント良かった……」


詩遥「……ごめんなさい、心配かけちゃったみたいね……。……ってかアレ、見てたの? ってことはあの時七波ちゃん、どっかにいたって事よね?」


七波「まぁ……その辺は話すと長くなるのじゃが、聞くかね、お嬢さんや……」


詩遥「悪いけど、この後その話をする時間はちゃんと取ってもらうわよ」


七波「う……」


詩遥「と、その前に……」


 と、詩遥ちゃんはポケットからコンビニの白い袋を取り出す。……変に親近感が湧いたりして。


詩遥「ハイこれ」


七波「何?」


七波「え……!?」


 と、ビニール袋の中から現れたのは……。


七波「……やったぁ! 煮卵おにぎり! ……って潰れてますが?」


詩遥「文句言わない。ちゃんと食べられるわよ。……絶対食べるって言ったでしょ?」


七波「……うん、言った」


詩遥「だから……これを渡すトコまでちゃんと生きなきゃって。引き金引けるわけないし……生きてこうしてもう一度会えるって信じてた」


七波「……詩遥ちゃん……」


 ……こんなトコにフラグ立ててた。

 あたしはあの時から、ここに帰って来れるって決まってたって事なのかね……?


七波「うん! 詩遥ちゃんのおにぎり、ゲット♪」


詩遥「……誰からもらったってそう変わらないでしょ」


七波「ふふーん……♪ そうでもないんだよね、世の中の法則ってのは……」


詩遥「言うわね、全く……」


 そんな事を口にする詩遥ちゃんだけど、喜んでるあたしを見る詩遥ちゃんだって嬉しそうだしね。


 と、作家があたしと詩遥ちゃんの横に歩いてきて。


紅蓮「えっと……卍山寺さん、俺ら、これからどうしたら……」


七波「……あれ? 二人もしかして……知り合い?」


紅蓮「知り合いって言うか……」


詩遥「まぁ、さっき警察が大掛かりに動き出そうとした時に、桜瀬さん――人治郎さんが署に連れてきてくれて少し話をしたぐらいだけど……まさか熾堂君が、宇宙人に関係してるとはあの時は思わなかったわ」


七波「お兄ちゃんが、作家を……?」


 ん……なんか変だぞ?

 さっき電話した時、お兄ちゃんは、会わなきゃいけない人と会って病院に行くとか言ってなかったか?

 どういうシチュエーションで電話を受けたのかな? ってか作家を警察に連れて行ったって事は……これはつまり……?


詩遥「人治郎さん、お店で七波ちゃん待ってるって言ってたわ。……不思議な方よね、こういう時、結構当事者の家族の方って、連れて行ってくださいとか言うもんなんだけど……凄く七波ちゃんの事信じてる風だったから私もその場は自然に頷いちゃったんだけどね」


七波「……うん」


 信じてくれてる。あたしはそれに凄く満足してる。


 ……そうだね、帰ろう。帰ってお兄ちゃんと話をすればいい。

 そうすれば色んな事は氷解するんだと思う。


 ……すぐに帰れればの話だが。


紅蓮「で、俺らどうします?」


詩遥「とりあえず署に来てもらうのは確定だけど」


紅蓮「……やっぱり。今日は童話書きたかったのに……」


 あたしもやっぱりって感じで少し落胆。まぁこればっかりはしょうがないか。


フレイバーン「諦めろよ、紅蓮」


コロナ『先ほど申し上げた、惑星外事象対策本部とコンタクトのため、またゲフリーレンの捜索について、地球の警察との連携方法を模索する必要があります』


七波「あ……ゲフリーさん」


 コロナの言葉に触発されて、あたしは周囲をキョロキョロと見回しながら、一歩二歩。


 もちろんそんな事をしても、見つかるはずもないけど……どこへ逃げたかな……?


七波(……あたしを観察するって言ってたっけ)


 そうだ、あたしはあの人の研究サンプル。

 あたしにわざわざ『力』を与えて、悪に立ち向かう――悪に抗うそのさまを観察するって言ってた。


 なら多分、そう遠いトコにいない気がする。そう遠くない先に、また出会える気がする。

 でももしも次に会う事があったら、あたしは一体どんな立場であの人と顔を合わせるつもりなんだろう。

 とりあえず、文句の一つも言ってやら――




紅蓮「……七波っ!!」




七波「えっ……?」


 その瞬間。


 ゆらり、と前触れもなく視界の端に黒い影が映った。


 それを目にした瞬間、あたしはそちらへと視線を向けて……!


七波「……っ……!?」


 その顔の動きに合わせて、『その人』の指が……あたしの眼球を……!











 ――!!











 ……貫く直前。


 その指の先端にあった黒い物体が、あたしに突きこまれる直前。




 その指は止められていた。




 眼球の先――1cmもない先で、鋭い突起物があたしの目を抉る直前で止められている。


 『あたしは、それを』――。




ゲフリーレン「……やはりか」


七波「っ……」


フレイバーン「ゲフリーレンっ、テメェっ!!」


紅蓮「七波っ!!」


詩遥「七波ちゃんっ!!」


 詩遥ちゃんの切羽詰った声で、周囲の謎のお巡りさん達が一気に振り返り……30人ぐらいで取り囲んでゲフリーさんに向かって拳銃を構えて……!


七波「待って作家! 詩遥ちゃんっ!!」


 ゲフリーさんにはあたしを殺す気はない。


 もちろん相変わらずこの人が何を考えてるのかは分からないけど、今はどういうわけか、この人のこういう雰囲気は感じ取れるようになっていた。


七波「……。なに……かな……?」


 もう殺されないと分かってても、この緊張感のある姿勢では呼吸が荒くならざるを得ない。

 そんなあたしの顔を見つめたまま……ゲフリーさんは口を開いた。


ゲフリーレン「ナナミ、お前はなぜ――」


七波「……」




ゲフリーレン「……『危機に対して目を閉じない』」




七波「……っ……」


 ごくりと、あたしはのどを鳴らす。


ゲフリーレン「この星の動物に限らん、眼球に目蓋を持つ生物は、その眼球を守るために、危機を目の当たりにすれば必ず反射と言う手段で目を閉じる。しかし……お前にはそれがない。むしろ、その危機に対して、眼球を広げようとする傾向にある」


七波「……知ってる」


 その通りだ。あたしは。



 ボールが顔に飛んできても。


 目の前で、咲子に猫だまし宜しく手を打たれても。


 人の死体が、眼前でどんなにエグい有様を呈しても。



 この目を閉じることはない――閉じることが出来ないんだ。


ゲフリーレン「どうやら過去にその原因があるようだが」


七波「……」


 それも、その通り。

 あたしの『封じられた記憶の奥底』に、このあたしの異常性の理由があることは知っている。


ゲフリーレン「もう一つ、研究のテーマが出来た」


 ゆっくりと、そのあたしの目に指を突っ込もうとした緊張感のある姿勢を解き、右手で左の耳たぶをいじりながら言う。

 あたしの周囲は緊迫したままだというのに、悠然と。


ゲフリーレン「お前のその反射なき反応を元に戻す術は、知的生命体の精神の構造を解き明かす一つの鍵になるだろう」


 それはつまり、あたしの心の奥底にある記憶を呼び覚ますという事にも等しいんだろう。


 ……興味がないとは言わない。


 でも、今のあたしにはそれを知る理由がない。――そんな必要なんてないんだから。


七波「余計な事すんな、犯罪者」


ゲフリーレン「フン……いかなる呼び方であっても、お前が呼ぶならそれが俺の正しい姿なのだろう」


七波「『めざし』とか、『靴下』とか、『雨雲レーダー』とか」


ゲフリーレン「お前が本心から俺をそう呼ぶなら、そうであっても構わんが」


七波「良かったよ、最初にちゃんと名乗りあって」


ゲフリーレン「……それは真理だ」


 ……ゲフリーさんが僅かにホッとした様な表情を浮かべたのは、あたしの勘違いだろうか……?




 ゲフリーさんはそれ以上、何もする事はなかった。


 抵抗の一つもない。


 最後にあたしに一瞥をくれた後、取り囲んでいたお巡りさん達に一気に取り押さえられ、大人しく手錠をかけられて詩遥ちゃんに連れて行かれた。


 それ以降は、もう――あたしに顔を向ける事もなく。


 ……ただ、その背中を見てあたしは思う。


七波「……ったく……何を始める気なんだか……」


 ゲフリーさんは犯罪者だという。

 事件というのは、その犯人を捕まえればそれで終わりのはずだ。


 ……でも。


紅蓮「……追ってる犯人が捕まったはずなのに……なんで胸騒ぎしかしないんだろう」


七波「あー、作家」


紅蓮「何?」


七波「多分、それ正しい」


 あの飄々とした姿で連れて行かれるゲフリーさんの姿は、逆に舞台袖からどこかの表舞台へと出て行こうという颯爽とした様子すら伺えた。


 そんな人の背中に、終わりなんて感じられるはずがないじゃんって話で。



 ……あたしに与えられたあの力。

 それについて詳しく聞かなかったのも、まぁさっきの状況は切羽詰まってたってもあるし、それに――



 多分、あたしが何かを納得していて。



 そして、今聞かなくても心配ないって、心のどこかで感じているからだったんじゃないかって、今にして思う。



七波「……あ、作家!」


 くるっとあたしは振り返って。


七波「ちょっとあんたには色々聞かなきゃいけない事とか、言わなきゃいけない事とかがある!」


紅蓮「……まぁ、そうなるよね」


 苦笑いの作家。


フレイバーン「言っとくけどな、そりゃ逆に俺らも同じだからな! お前、ゲフリーレンとどういう関係だ!?」


七波「ンなの、後回しだ! まずあたしが先!」


フレイバーン「先も後もねェだろうが!」


七波「あんたちょっと黙ってろ。……作家!」


 指を突きつけて、全てを思い出す。






 作家が口にしてくれたこと。


 その身を賭けてしてくれたこと。






 それを思い返した時。


 あたしが言わなきゃいけないこと、しなきゃいけないことはたった一つ。












七波「……ありがとうっ」












 死にかけた時に、伝えたいって願った言葉。




 そしてあたしの浮かべた表情は




 その言葉を超えて




 きっと作家にあたしの全ての感謝を伝える事の出来る、




 笑顔だったはずだ――。




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