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猛火のスペクトラム  作者: 雪乃府宏明
第1幕第4部
75/88

1-4-29-5 【熾堂紅蓮】 痛覚の理由 5

紅蓮「……全く宇宙警察の技術力って奴は侮れないね。ありがたい限りだよ。これなら俺でも戦えるから……」


コロナ『違います』


紅蓮「え?」


コロナ『その真紅の装甲は、あなたの友人を想う心が形となったものです』


紅蓮「……俺の……心が?」


 一瞬、何の事か分からなかったけど。


コロナ『このスーツの製作過程には数多くの失敗がありました。その赤い装甲――フルヘクサ・ロンズデーライトとは、ベイキング・グラファイトに熱と圧を加えて変質させるものです』


紅蓮「……うん」


コロナ『ですが宇宙警察の技術開発部は、フルヘクサ・ロンズデーライトを生成する事は出来ても、強度がありすぎたために、それをステルラスーツに成形する事がどうしてもできなかったのです。悩みぬいた技術開発部は、最後に残った机上の理論のままの機構をスーツに埋め込みました』


紅蓮「その机上の理論っていうのが……?」


コロナ『それこそが、人の心によって内側から放たれる熱と圧でベイキング・グラファイト材質を変質させる手段です。この技術は外部からもたらされたという事なのですが、そのために公にできませんでした。それでも技術部はこの技術に賭けたと言う事です』


紅蓮「……そっか、技術部の人たちにしてみたら、黒いこのスーツは完成形じゃなかった。でも宇宙警察は……」


コロナ『はい。ベイキング・グラファイトの装甲でも、一定の成果は得られ、宇宙警察はこのステルラスーツを採用しました。ですが、技術部の悲願はそこで終わらず、最後のギミックとして、この真紅の装甲を装着者の心に託したのです』


紅蓮「装着者の……心……」


コロナ『誰かを救いたいと願う心、本当に守りたいと祈る心の熱と圧。私にはよく分かりませんが、あなたにそれがあったからこそ、今そのステルラスーツは真紅の姿を取っている。……彼らだけでは成し得なかった。あなたがいなければこの装甲はあり得なかったのです』


紅蓮「……そう……なんだ……」


 手を見つめ、握りしめる。


 子供の頃からずっと、誰かを助ける事を忘れていた。


 でも、その心は確かに俺の中に眠っていてくれて、今、七波の心を救うために、形を伴って目覚めてくれた――


 俺はその事に、僅かな高揚を感じずにいられなかった。



紅蓮「……ありがとう、コロナ」


コロナ『……その感謝の言葉の理由が図りかねるのですが』


紅蓮「色々あるんだよ、地球人……ううん、俺には、ね」


コロナ『そう、ですか』


 コロナの返事の一瞬の間に、AIとして、ただただ理解不能なことを受け流すのではないというニュアンスが篭められているのを聞いて、それだけで俺はちょっと嬉しくなった。


紅蓮「……フレイバーン。これだけ好き放題やられたんだし……今度は俺達の番でもいいよね?」


フレイバーン「誰も止めねェよ。お前には少しそういうトコが足りねェからな……!」


フレイバーンは、やれやれと言うように笑っていたんじゃないかと思う。


フレイバーン「でも紅蓮。……オメーで良かった!」


紅蓮「何が?」


フレイバーン「俺の寄生した奴が、痛みの意味を理解できる奴でよ!」


紅蓮「……。……漠然とって感じだけどね」


 唐突な誉め言葉に、照れ隠しでそんなことを言ってみるけど。


フレイバーン「頭で理解するより、感じる方がよっぽど大事だってこった!」


 やけに機嫌よく、フレイバーンは言い放った。


コロナ『あのカーシェル星人の体組織の解析が完了しました』


フレイバーン「チッ、先を越されたか。どうなんだ!」


コロナ『体組織の構成がガルゴア星人の遺伝子と酷似しています』


紅蓮「ガルゴア星人って……」


フレイバーン「ワハトブールか!? ……って事は、あのカーシェル星人は……!」


コロナ『ワハトブール刑事の体を乗っ取ったヴァーグの体が変質して、カーシェル星人の形態をとったと推測されます。過程、手段は不明。ここに関与する情報を宇宙警察本部サーバーで検索していますが、該当すると思われる情報に高レベルの制限が掛かっています。情報権限の取得を要請中です』


フレイバーン「……何がなんだか分からねェが、ダチの体使って好き勝手させられるか! そっちは任せる! ……それともう一つ、申請を頼むぜ!」


コロナ『申請内容は』


フレイバーン「あのデカ物を一発でブッ千切る!!」


コロナ『了解しました』


紅蓮「どうするつもり!?」


フレイバーン「ちっとばかし、時間を稼ぐぜ!? 行け、紅蓮ッ!!」


紅蓮「……よく分かんないけど分かったっ!!」


 どう生まれたにせよ、あいつは七波を傷つけた奴から始まった。

 ならあいつも……俺が倒すべき相手だ……!




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