1-4-27-2 【桜瀬七波】 起稿 2
夕暮れ時の、電車。
あたしはそこに、ただ一人座っていたはずだった。
でも、ふと顔を上げる。
あたしの目の前に、一人の女の子……。
七波「っ……!」
ハッとして振り返る。
その子は遮断機に行く手を遮られていた。
そしてあたしの乗るこの電車が動かないから、遮断機は永遠に降りたままだった。
でも、
がたんごとん……がたんごとん……
気がつけばもう、
がたんごとん……がたんごとん……
――電車は動き出していた。
道を塞ぐ遮断機は既に無い。全ては、動き出していたんだ。
七波「あんた……どうして……」
あたしは思わず口にする。
その女の子は、あたしだった。
――心の向こう側においてきたはずの、あたしの感情。
今のこのあたしは、全てをどうにかするまで。
決して弱音や諦めを吐かないと誓った心。
心をかき乱して、絶叫し、あたしは全てを無理やり自分の中心に押し込めて、今のあたしになったんだ。
でも、目の前のあたしが、にこりと微笑んで。
そして……あたしに手を差し出している。
そのあたしが消えた先にあったのは……
あたしを守るように立つ、作家の背中だった――。




