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猛火のスペクトラム  作者: 雪乃府宏明
第1幕第4部
61/88

1-4-26-4 【桜瀬七波】 世界は、斯く在れと 4

フレイバーン「……ぐぁはっ!!?」


 あたしや警察の人たちが束になってもピクリとも動かない、不動の要塞のようだったフレイバーンが、あっさりと吹き飛んで、派手な音を立てて地面を転がる。


 そして……フレイバーンを吹き飛ばしたもの――



 それは鋭利に研ぎ澄まされた槍のような、空中からの蹴りだった。



 その蹴りを放ったその人物が、あたしの眼前に――それまでの喧騒からは想像もできないほどの静かな音を伴って、両足で地に立つ。




 黒い、甲冑姿。




 あたしはそれを知ってる。


 なぜなら、それは今、目の前で地べたに転がっているそれと同じものだから。


 でも、違った。


 背中を向けてあたしの前に立つそれに感じるのは、ただひたすらの頼もしさ、勇猛さ。


 ――それが、全ての答えだ。




七波「……『黒甲冑は、二人いた』……」




 そして――


??「……コロナ、ステルラスーツを」


七波「っ……!」


 その声に、あたしは……。


??『了解。ステルラスーツ、キャストオフ』


 バンッ! と音を立てて甲冑が全て、外側に外れたように見えた。空中に浮く、いくつもの黒い装甲。

しかし、すぐにその空中に浮いたまま、光り輝き、その場で回転しながら畳まれるようにして全てが消える。


 そして……その中心にいたのは。




七波「さっ……か……!」




 あたしの声を聞いて、そいつは。




 ――作家は。




 すっと顔をあたしに向けると、小さく、はにかんだような微笑を浮かべた。






 ああ、なぜあたしは忘れていたんだろう。



 それがそうであることを、あたしはすっかり忘れていた。



 ……当事者にすれば迷惑極まりないのだけれど。



 そうだ、それでもそれはそうであるべきなんだ。






 あたしが望むべき『ヒーロー』は、



 こうして、いつも通り、



 世界がそうあれと望む通り、



 正しく、遅れてやってきた。




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