1-4-25-5 【桜瀬七波】 炎禍の先に披く孔 5
◆ 視点変更『桜瀬七波』 ◆
フレイバーン「なん、だってんだ、こいつは……!?」
……あたしがサインアウトした直後に聞いたのは、目の前にいるそいつが這いつくばってあたしに背中を向け、震える声で漏らしたその一言だった。
七波「……」
呼吸を止めてる。
してたら気付かれない保証なんかどこにも無くなるほど、息が乱れてたから。
――ピィンっ! という甲高い音が、フレイバーンの眼前のモニターから鳴り響く。
フレイバーン「……っ……!?」
やっぱり、あのままこっちに出るわけには行かなかった……その音があれば、フレイバーンは機敏にその位置から飛び退る事もあっただろう。
でも、フレイバーンは動けない。
それが『あたしの狙った結果』だった。
七波「くっ……!」
よろよろのまま、スイッチを入れた装置を振り上げる……!
フレイバーンが緩慢な動きで顔だけこちらに振り返り、あたしの姿を捕らえた。
フレイバーン「なっ……にっ……!?」
でも、それでもフレイバーンは動けないんだ――向けている背中もあたしの眼前から動かないまま……!
だからっ……!
七波「ぐぅぅっ……!」
……消えろっ……!
七波「ううううぅぅぅぅっ……!!」
消えろっ……!
七波「ぅ……ぁぁぁああああっ!!」
フレイバーン「テェェメェェぁぁぁぁぁっ!!」
消えて……帰って来いっ!!!
七波「……作家ぁぁぁあああああああああああああああっ!!!」
脊柱に……叩き……つけるっ!!!
――ガシャッ!!
フレイバーン「あぎああああああああああああああああっ!!!!?」
七波「うああっ!!?」
バリバリという電気ショックのような衝撃の奔流が、龍のごとく荒れ狂ってあたしを弾き飛ばし、あたしは地面を転がった。
詩遥「……七波ちゃんっ!!!」
詩遥ちゃんが駆け寄って来て、あたしを抱き起こしてくれる。
七波「詩遥……ちゃん……。……んっくっ……」
視線の先では、四つん這いのままその電流に巻かれて、痙攣するように体を震わせるフレイバーンの姿。
フレイバーン「GAAAAAaaaaaaaaaaaa! Kishiiiishishiisiiiihihihihiiiiigigiiiiiii!」
多分、機械で翻訳不可能な、あいつ本来の声。
それはこの世のものとは思えない、異世界の悪魔があげる断末魔に聞こえた。
そして、それはやがて掠れるように消えて行き。
フレイバーンは、そのまま突っ伏すように。
フレイバーン「……」
がしゃりっ! ……と重厚な音を立てて倒れ、動かなくなった……。




