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猛火のスペクトラム  作者: 雪乃府宏明
第1幕第4部
52/88

1-4-24-3 【第三者視点】 悪との邂逅 3



◆ 視点変更『第三者視点』 ◆



??「……」



 静かに。


 その黒いステルラスーツをまとった存在は、倉庫街でも一際大きな倉庫の屋根に立ち、周囲を見回していた。


 闇の中に赫眼がゆらゆらと揺らめく。

 人がそれを目にすれば、僅かに遅れて光の尾が付いてくる様を見ることができただろう。



 ――二つの出来事が重なる事が偶然であるように見えることも、そこに一本の線が通る事で必然に変わる事がある。


 『倉庫街と言う場所にゲフリーレンが潜んでいた事』。


 『そしてゲフリーレンを追う『その存在』が、孔球となって倉庫街にあった事』。


 この二つに接点はない。

 両者は倉庫街に時を同じくして存在していたにもかかわらず、お互いがどこにいるか具体的には分かり得なかったからだ。


 しかし。


 ここに桜瀬七波と言う少女の存在を挟み込むことで、この両者がそこにあった事が必然へと化す。


 かの存在は、七波に最後に会ったタイミングで彼女に発信機を埋め込んでいた。

 ナノミクロン単位の微粒子のようなそれは、非殺傷型の銃の弾丸を介して七波の体に付着する。


 彼は、その発信機の動向を、冷静になって注視していた。


 病院で入院していた七波には手を出さなかった。

 目的は七波ではなく、七波と接点を持った目標――ゲフリーレンなのだから。



 発信機が動き出したことで、彼は行動開始しようとした。

 ところが、発信機は急に位置情報の送信を停止し、七波の姿が消えてしまう。



 彼は、これこそが合図だと思った。



 未知の技術。

 いったいどのような手段を使って姿をくらましたかは分からない。


 しかし、長年信用している発信機が、このタイミングで故障とはおよそ考えられなかった。


 だからこそ。

 ゲフリーレンと通じたあの地球人の女は、奴から手にし得た何らかの手段で消えたのだと判断した。


 そして、そんなものを使って動き出す先は、奴の元に他ならないと判断した彼は、辛抱強く七波に取り付けた発信機からの信号を待つ。



 ……感情の不安定さで有名な星人の彼だが、冷静さを保つことは難しくはなかった。

 『待つ』という行為に対し、自分の内側にあらゆる感情を押し込める術を、彼は体得していたから。



 そして時は来る。


 再び七波の信号が発信され、その姿はすぐに消えてしまったが、彼は検索したスーツの機能でこの星の地図を呼び出し、七波の消えた場所――病院からその現れた地点を線で結ぶ。



 その延長線上にあったもの――それが倉庫街。



 人気のないその場所を目視した彼は、その場所が潜伏に実に適した場所だと判断してゲフリーレンの捜索を開始する。


 七波から見れば重なった偶然に見えても、彼にとってこの状況は必然的なものであり、その結果に彼は至極満足していた。


 しかし。


??「……あ?」


 周囲に赤い回転灯を回した車両がやってくる。


 いくつも。


 いくつも。


 耳障りな音を立てながら、彼が成そうとすることの妨げとなるかの如く。


 七波に発信機と言う物を取り付け、同じ結果を導き出したのは自分だけではなかった事に、もちろん彼は気づけない。


 しかし、もはや関係ない。


 ふつふつっと、湧き上がる感情。


 冷静さを保つ術は彼にとって容易いことだ。

 彼の星の人間全てができる事ではないが、彼にはそれができた。


 ただし。

 ……その反動は凄まじいものとなる。


 鬱積などと言う生易しいものではない。正常な地球人が見れば、怒りで我を忘れた獣であるかのように、がたがたと頭を振り乱した。


??「めんどう……くせぇ……めんどうくせぇっ……ああああああああ!!!! めんどうぅぅるるぅぁぁぁぁっ!! ああAAAAAあああああxaxaxaxaxaっ!!!」


 闇の虚空に木霊する咆哮を、周囲の警官たちが耳にし、何事かとその声の所在を探る。


 腰から引き抜いた銃の調整項目のパネルに触れ――七波がフレイバーンと呼ぶその甲冑姿の存在は、一台の車に向かって、引き金を引いた。




 ……爆発。




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