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猛火のスペクトラム  作者: 雪乃府宏明
第1幕第3部
33/88

1-3-18-3 【桜瀬七波】 Nadiaの導き 3

??「ちょ……あなたっ! どこから入ってきたのよぅっ!!?」


七波「……なぬ?」


 視界がはっきりする前に聞こえてきたのは、絹を切り裂くような甲高い声――っぽい、野太い声。

 そして白い紗がすべて取り払われたところであたしが認識したのは……いくつ並んだロッカー。


 そしてあたしに周囲には、見事なキレッキレボディを晒しながらも、内股で股間を隠す、筋肉隆々のむくつけき男たち。


男1「きあああああああぁぁぁぁっ!?」


男2「いやあああああああぁぁぁぁっ!?」


七波「にゃああああああっっっ!!?」


 あたしは大慌てで両手で目を覆い、悲鳴を上げる男たちの間をすり抜けて、視線の先にあった出口らしき場所へと向かう。


七波「ごめんなさいゴメンナサイ! ……おぉ……! ゴメンナサイゴメンナサイ!!」


 時折指の隙間からちらりと見えるものに若干の感動を覚えつつ、あたしは何とかその場を後にした。



 『男子更衣室』



 あたしはいつの間にか、あの街路からこんな所へと迷い込んでいた。

 周りには小型の体育館みたいな部屋が見え、色んな運動器具が並んでる。


 多分、オフィス街にあったと記憶しているスポーツジムじゃないだろうか? 利用したことも、する気もないから全く興味はないんだけど、多分そんなものがあったような……。


七波「……ぁ……」


 でも、それら全てを思い出す前に、あたしの体力は尽きかけていた。

 がくりっ……と膝から崩れて、手で何とか体を支えるけど、そこから体が動かない。


男3「お、おい、お嬢ちゃん……大丈夫かい!?」


 ……どう……だろう……? ……大丈夫と言えるの……あたし……?


??「え……七波ちゃん……!?」


 ふと声を掛けられる。

 ……あたしの名前……誰かあたしの、知ってる人が……。


七波「萌唯もい……さん……?」


 顔を上げて、声から認識できたのはその人の名前までだった。

 後はもう、あたしは自分自身の事しか考えられない。

 残念ながら声だけで認知してるから、その姿も詳しくお伝えできない。


萌唯「どうしてこんなトコに……! ってか、大丈夫? 救急車とか呼ぶ?」


七波「……大丈……夫……ボーっとしてるだけ……」


 本当に意識は朦朧とした状態で、言葉は自分の本能に沿った言葉だけが出る。


 『この人の世話にはなりたくない』


 ――その気持ちだけで、あたしは意識を保っていた。


萌唯「でも、そんな状態……。……ううん、分かったわ。……ごめんなさい、手伝って下さい……!」


 萌唯さんの声が、意識の向こうに遠ざかっていく。

 そんな状態でも……あたしは意識をギリギリで途切れさせる事なく、ぼんやりと考え事をしていた。




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