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第5話 出会い

初の戦闘回?です。

どうぞ。

先ほど俺が探知した現場に行くのには、空間属性の十八番である空間転移は使えない。


この2年の修行で空間転移と亜空間収納、つまりはテレポートとアイテムボックスは使えるようになった。


しかし空間転移は『一度行ったところにしか転移できない』という制限がある。


まさにルー◯。

こっちの空間転移は天井があるとこでも使えるけどね。



空間転移の理屈としては空間歪曲型ワープ。


まあ簡単に言えば紙の上の点Aと点Bを結びつけるのに、紙を折りたたむ事で点を繋げるという方法だ。


亜空間収納はその名の通り、亜空間に物を収納するものだ。

この亜空間の広さは魔力量によって変わる。

入れた物の時間は停止したりしないので食べ物を入れて、放置すると普通に腐る。


話を戻そう。

空間転移で一度行ったことのある場所にしか行けないのは、先ほどの例えで言うと自分(点A)から見て、移動したい所(点B)がイメージできないからだ。



まあ別の方法の空間転移もある。

でもその方法は魔力を無駄に食う上に、師匠たちから


「今は打つ手が無くなって、命の危機を感じた時だけ使う事」


とのお達しがあったので使えない。



という訳で今回移動するのには空間転移は使えない。


ならばどうするか?

答えは単純、走ることにした。

もちろん魔術を使ってだ。


師匠たちに教わった身体強化。

単純に筋肉だけでなく骨や内臓、皮膚に満遍なく強化を施す。

これは属性に関係なく魔力があれば使えるものだ。

もちろん適性もあるので使えない人には使えない。


更に俺はその身体強化に加えて雷でもう1段階強化を施している。


電気信号自体を加速させているために、脳の指令を受けてから、筋肉が動くという一連の流れそのものが早くなっている。


普通こんなことをやれば神経が無事でいられるはずも無い。

これは通常の身体強化を使うのが前提の技だ。


おかげでスピードだけは師匠たちになんとかついていけるようになった。

ここまでにして「なんとか」なのは、俺の体がまだ出来上がっていない事、そして身体強化の精度がまだまだ師匠たちに追いつけないからだと思う。


師匠たちは


「おいおいこの速度についてこれんのかよ!?その年でそれなら十分すぎる。ってか速すぎだ!」


とお墨付きをもらい


「雷属性にそんな使い方が!」


と驚いた後


「電気で体を動かしているって理屈が最初は分からなかったけど、今は分かったわ。確かにヴァンに雷を撃ち込んだ時、体が動いたりしてたわね」


と納得してくれた。


シェータ師匠が理解してくれて何よりです・・・

方法ってか理解する理由があれだけど。




と、まあこんな風に速度には割と自信があるのだ。


そしてそのスピードなら2kmなど直ぐに詰められる。

木々を避けながら進み到着する。


追われているのは少女。

その少女が足を縺れさせ転んだ。


このままでは追っ手に捕まるな。


ここまで確認すれば十分。

追っ手の先頭を走るリーダーっぽい男に向かい


「へっ手間かけさせやが「ライ◯ーキック!」ぶべらぁぁ!?」


セリフをぶった切って飛び蹴りを食らわす。


蹴った勢いを利用し空中で向きを変える。

回転しながら位置を調節し、ちょうど少女と男たちの間に着地する。


ふっ、我ながら見事な着地ができたな。

決まったぜ・・・!


突然の出来事に男たちも足を止める。


「な、なんだ!?」


突然の俺の登場に混乱して相手の動きが止まっているうちに確認をする。


追っていた5人は・・・うん。

いかにも盗賊というか一目であまり素行がよろしくない輩なのが見てとれる。


そして追われていた少女、年の頃は俺と同じくらいであろう。


流れるような薄い金の髪、神秘的な紫の瞳。

顔は年相応の可愛らしさの中に、綺麗さが混在し、将来は男なら放っておけないどころか、下手したら同性まで魅了するのでは?と思わされる美しさ。

ようするにとんでもないレベルの美少女だった。


・・・シェータ師匠で美人を見慣れていなければ危ないところだったぜ。

見惚れて固まるとこだったわい。



ともあれ詳しい事情は分からない。

十中八九は男たちの方が危害を加えようとしているのだろう。


というよりこの状況で少女の方が悪いパターンは俺の頭ではあまり思いつかない。


そこまで確認したところで男たちが再起動を果たした。


「いきなり現れてなんだテメェ!!」

「通りすがりの9歳児ですよ」


少女の方が小さく「あっ、同い年」と言ったのが聞こえた。

この状況で余裕があるのはすごいと思う。


「クソッ、そんな事を聞いてるんじゃねえよ!!」

「ん?なんだって言うから答えたんじゃん。あんまり怒らない方がいいよ、ハゲるから」

「余計なお世話だ!!!」

「だから怒るなって。ほらカルシウム」


そう言ってアローバードの骨を渡す。


「いるか!こんなゴミ!ってかテメェ、痛い目見たくなければそこを退け!」

「よし、退けって言うなら退こうか」


少女の手を取りそのまま立ち去ろうと・・・


「待て待て待て待て!何、自然にそのガキも連れてこうとしてんだ!?」

「いやそこを退けって言うから、ここ通りたいのかなって」

「テメェだけ退けって事だよ!!そのガキは渡せ!」

「この子、嫌がってるし断る」

「はあ!?いいからそいつを渡せ!!」


そう言って焦れたのか男の1人が少女の腕を掴もうとする。


「させるか!ダボが!!」


その前に俺が一瞬だけ身体強化をして男を殴り飛ばす。


男はさっき蹴り飛ばしたリーダーっぽい男と同じ位置まで吹っ飛び動かなくなる。


今の出来事に残り3人の男は飽きもせずまたフリーズしている。

今回は前回よりも早く再起動したようで1人の男が叫ぶ。


「グゲスがぶっ飛ばされたぞ!?」


グゲスって今の男か。

ピッタリの名前じゃないか。

名は体を表す、名言だなこれは。


「テメェなにしやがる!」

「あの男がこの子に乱暴しようとしたからだ」

「テメェとそのガキになんの関係もないだろうが!!すっこんでろ!」


関係ないだと?

こいつらも馬鹿だな。

何もわかっちゃいねぇ。


「関係ある無しはどうでもいいのさ」

「はあ?何言って・・・」


俺が教えてやるさ。


「女の子が困っていたら優しくするのが当たり前だろ!!」





前世の義叔父さんが俺に良く言っていた。


「女の子には優しく。僕の義兄さん、つまり君のお父さんが良く言っていた言葉なんだ」


ということは、これは顔も覚えていない親父の言葉でもある。

記憶もない、けれどもそれが唯一の俺と親父の絆だと信じて前世では行動していた。


今もそれに恥じない行動ができているはずだ。





「い、意味わからねぇ。そのためだけに飛び出してきたのかこのガキ」

「もちろん」


追われてたのが男だったら助けない、なんてことはないけど、多分。

それと言いたいことがもう一つある。


「それにオッサン、あんたらがこの子が嫌がってるのに追いかけ回した時点で、俺の敵だ」

「はあ?今度は何を・・・」


少女を大人が5人がかりで追いかけるなんてあり得ないだろ。

そんな事をしている奴らは俺の敵だ。

どういうことかというと、つまりは



「可愛いいは正義!!そんな可愛い子に危害を加えようとしている。つまり貴様らが、悪だッ!!!」



ということだ。

悪は敵だよ。


裁くのは俺のスタン◯だ!

スタ◯ドいないけど。


少女も男たちも呆気に取られているが、気にしてはいけない。


「という訳で悪党ども。その命が惜しければ即刻立ち去れ」


手で追い払うジェスチャー。

通じるか知らないけど。


「む、無茶苦茶だ」

「いきなり出てきたと思えば訳の分からねぇことを・・・」

「テメェみたいなガキに何ができる!」


さっき2人ほど戦闘不能にできましたが?

アローバード頭なのか、こいつら。


「よく見ればこのガキも見た目はいい。こいつもとっ捕まえて物好きにでも売っちまえ!」


やっぱりあんたら悪者じゃないか。

捕まえるとか言ってるし、非合法な感がすごい。


こいつらは簡単に返り討ちできるが、今回はそれをする必要もない。


「あんたら、一つ勘違いをしている」

「「「何?」」」

「別に俺がやるなんて言ってないだろ?」


こいつら興奮し過ぎて気づいていない。

こんなところで大声を出してたら、やつら(・・・)に「狙ってください!」って言っているようなもんじゃないか。


「ほら、死にたくなければ横に避けて」

「さっきから何を?」

「一応忠告はしたからな?」

「意味のわからねぇことを!」


そう言って男たちがこちらを捕まえようと一歩進んだ。

次の瞬間、アローバードが男たちの肩や足に突き刺さる。


おっ、運がいいなこいつら。

もう一歩遅かったら頭に突き刺さって即死だったろう。


俺と少女を狙っていた奴は雷で撃ち落としてある。


突然声にならない悲鳴があがる。

その発生源はグゲスからであった。


倒れていたグゲスの尻にアローバードが刺さっていた。

アローバードの狙いが外れたのか。


思わず目を背ける。

天罰だな、冥福を祈ろう。


これで男たちという危機は去った。


今の段階では死んでないが、止血しなければその内死ぬだろう。


生き残れるかはこいつら次第だ。

助けてやる気はない。


頭を切り替える。

この男たちの事よりも少女の事だ。


「大丈夫?怪我はない?」

「ちょっと転んだ時にケガしちゃっただけ」


見ると綺麗な肌が傷ついて、膝から少し血を流している。


「参ったな、俺は光属性使えないんだよな」


治癒系の魔術は光属性の専売特許なのだ。

・・・光属性ならシェータ師匠がいるな。


「君・・・そう言えば名前聞いてなかったな。俺はベルクス。君の名前は?」

「私、セラリス」


名前を聞き出すことに成功した。

ナンパじゃないよ。


「じゃあセラリス、その足のケガを治せる人に心当たりがあるんだ」


するとセラリスの顔が曇る。


「・・・もしかして街に行くの?」

「いや、どちらかというと山奥」


街に嫌な思い出でもあるのか?


「なら良かった。でもなんで山奥に?」

「俺の師匠たちが住んでるんだ」

「助けてもらった上に、治療なんて迷惑じゃないかな?」

「いや、大丈夫。子供がそんな心配しなくていいんだよ」


そう言って頭を撫でる。

前世の時は何故か子供に好かれる体質だったので、ちょくちょく近所の子供たちの面倒を見ていたりしたのだ。


その時の癖が出てしまった。

慌てて手を離す。



「あっ、ごめん。嫌だった?」

「嫌じゃないけど、子供って言うけど、ベルクス君9歳なら私と同い年でしょ?」


そういやそうでしたね。


「あっ、私大切なこと言うの忘れてた。助けてくれてありがとう。今お礼はできないけど・・・」

「いやいや、気にしないで。さっきの頭撫でたので満足したから」


素晴らしい撫で心地でした。


「ふふふ、変なの。ベルクス君、変わってるって言われない?」

「そんな言われるほど知り合いはいないから大丈夫!」

「ほらやっぱり変」



実際、村に住んでいた頃は他の子と遊ぶより祖母から色々教わったり、1人で遊ぶ方が好きだったし。

師匠たちに拾われてからは、師匠たち以外の人に接触したのは今日が初めてだ。

考えてみると俺、ぼっち化している気が・・・


驚愕の事実に気づかされ驚いていると、ひときしり笑った後、セラリスが


「友達いないんだ?」


と笑顔で言ってきた。


笑顔が可愛い!じゃなくて結構きついこと聞いてきたよ!

ぼ、ぼっちじゃないよ!

友達ちゃんといるよ!


前世にだけど。


「最近は魔術が友達です」

「なら私が友達になってあげる。私の事はセラって呼んで」


手を差し出してくる。

俺もその手を握り返し


「俺のことはベルって呼んで、セラ」

「よろしくね、ベル」


そうして笑顔で握手を交わした。

セラはメインヒロインです。

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