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第4話 修行中の出来事

ヴァンとシェータのスパルタ教育回!

ではなくベルの個人的な修行です。

修行を始めて早2年。


つまり9歳になった俺は、現在暮らしている家のある山から、少し離れた別の山で1人修行をしていた。


師匠たちが住む山とかどんな人外魔境だ?

と思われるかもしれないがそんな事はない。


見た目だけ普通で、実はおっかない魔獣とかが跳梁跋扈していて、きっと2年前に連れてこられた時には俺に気づかれないよう始末してたんだ、なんてオチもない。



まあ、あの2人なら燃え盛る火山だろうが、凍える氷土だろうが暮らそうと思えば暮らせるだろう。

ただそんなとこに住みたいか?と言われれば大概の人は否と答えるだろう。


普通に滅多に人が来ないだけの山奥だ。

魔獣はいるけども。


何故そんなところに1人で修行をしているかって?

ここら辺の魔獣なら問題なく倒せるというのもそうだが、今俺が行っているのは空間属性魔術の修行。


認識できる空間を広げる修行である。


この修行は周りが静かな方がやりやすいのだ。

別に師匠たちがうるさいというわけではなく、より自然の中でやる方が修行しやすいからだ。


この修行をしている最中は目を閉じ、空間に意識を広げる。

まあぶっちゃけ瞑想みたいなものだ。



その姿を見て「獲物だ、ヒャッハー!」とばかりに襲ってくる魔獣もここ最近は減ってきた。


俺のことを危険だ、関わるなと他の魔物にも伝わっているかのごとくあまり襲われなくなった。

魔獣ネットワーク的なものでもあるのだろうか?


でも中には相変わらず襲ってくるのもいて・・・


今も一羽の鳥が俺に狙いを定めた。


結構なスピードで突っ込んでくるが慌てずに

対処する。



「しかし、こいつらも学ばないよな」


仕留めた鳥を持ち上げ、しみじみ思う。


この鳥の名前はアローバード。

大きさは鳩より若干小さいくらいだろう。

獲物を見つけ次第、矢のように突っ込んでくる事からこの名がついた。

その際に周りのことなど全く気にしない。

獲物を視界に捕らえた途端、加速し翼をたたみ回転しながら突っ込むのだ。


こいつらの事を知らない初心者などが痛手を受けたり、中には命を落とすやつまでいると師匠たちに聞いた。


ただし先ほども言ったが、この鳥は周りを全く気にしない。

獲物を見た瞬間、それしか頭になくなるのだ。

君の心臓(ハート)をロックオン!

絶対に逃さない!とばかりに襲ってくる。


例え標的の周りに木が生い茂っていようが、湖の上だろうが、岩がそこら中にあるような場所であろうが御構い無しである。


だから木に突き刺ささって、頭が抜けずにそのまま生き絶えたる。

湖の魚を狙い泳げもしないのに突っ込んで溺れる。

岩に突っ込んで首の骨を折って死ぬ。

こんなようにこいつらの死に様を挙げるとキリがない。


しかも一定以上の大きさの生き物は狙わないが、逆に人間サイズ以下ならどんなものでも狙うなんて特性も持っている。


そのためゴブリンに襲われた新米冒険者が追い詰められた時、アーローバードがゴブリンの頭に突き刺さり、冒険者が助かったなんて珍事もあるほどだ。




こうした特性を持つアローバードの対処法は慣れてしまえば簡単だ。


まず何故かこいつらは獲物を狙う直前に鳴くのだ。

「俺の獲物だぞ!」と自己主張しているのかなんなのかは分からないが、つまり前兆が分かりやすい。


初めて見たときなんか


「奇襲するのに音を出すなんて、三流の仕事だぜ」


と思わず言ってしまった。


「ん?そりゃあそんな事考える頭があれば、バカみたいな死に方しねぇだろ?」


ヴァン師匠には冷静なツッコミを入れられてしまった。

ごもっともです。



話を戻すとアーローバードは一直線に獲物を狙う。

この特性を利用して予兆に気付いたら一歩大きく前後左右にズレるか、盾などで身を守るかすれば勝手に自滅する。

急には方向転換できないのだ。




こんな傍迷惑な鳥だが肉は食える。

むしろちゃんと処理すれば美味い部類に入るだろう。



俺は雷でちょうどいい感じで焼く手加減まで覚えた。

先ほど仕留めたアーローバード。

よし(今日の昼飯)君に決めた!



生き物を殺すことについては、前世の記憶が戻る前にこの世界ですでに済ませてある。

祖母が(たぶん、おそらく、メイビー)鶏(っぽい生き物)を飼っていたので、それを締めるのをやったのだ。

記憶にある鶏より大きい気もするが・・・

異世界補正だろう、うん。


最初に見た時は衝撃的だった。

お手本にと祖母が鶏(?)の首を折った。

その時の「コケッ!?」という鳴き声が頭から離れない。

可哀想で食べられないなんてこともなく、普通に美味しくいただきました。



対人についてはまだ経験はないが割り切っている。

この世界で9年も暮らしていると価値観もそれに合わせて変わってくるのだ。




そんな事を考えている今のこの俺の人格は、前世のと今世のものが混ざり合わさったものなのだろう。

記憶に関しても前世のも今世のもあるわけだし、どちらの俺も俺であるという自覚もある。

説明するのは難しいけど。

強いて言うなはミルクと紅茶を混ぜても、ファミレスで中学生が作る謎ドリンクにはならないで、ミルクティーになる、そんな感じだ。


・・・説明するとさらに意味不明になるな。






おっと、思考が逸れまくってしまった。

修行再開せねば。


意気込み、意識を空間に広げる。


そこから1時間ほど後。

ジワリジワリと範囲を広げていたところ・・・


「ん?」


俺の探知領域ギリギリのところにに人の気配が現れた。

だいたいここから2kmくらいのところである。


1人のおそらく子供を5人の大人が追っている。

今の俺の探知制度だと性別まではわからない。

逃げている方も子供ではなく体が小さい種族という可能性もある。


「しかし、いったいこんな山奥で何を?」


ここは人里離れた(とは言っても2日もあれば街に着くが)山奥だ。

冒険者もFランクの人がたまにここより街に近いところの山に現われるのみ。


となると行商人くらいしか思いつかないわけだが。

先ほど気配を探知した場所はコルドラコ王国から隣国の商国イアナキに繋がる道から離れた位置だ。

道は1本のため迷ったとは考えにくい。


「きな臭いな」


このままでは逃げている方が捕まる。

追われている理由は分からないがとりあえず急いで様子を見に行くとしよう。

知らなくていい豆知識。


アーローバードは同族は狙わないとの特性があるので、風属性で鳴き声を真似すればあまり頭は良くないので騙されて狙われる事はない。


しかし繁殖期には使えない方法。

繁殖期には通常では狙わないような大型の生き物や、自分以外のオスも狙うなどと区別の付かないバーサーカー状態。

頭にたくさんのアローバードを突き刺したオーガなんて絵面になることも。


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