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第1話 師匠との出会い

第1話です、どうぞ

知らない天井?


このセリフ、一度くらい言ってみたかったので心の中で言ってみたが、実際は野外だ。


近くから食べ物の匂いが漂ってくる。


俺の意識が覚醒したのが分かったのだろう。


「おっ、目が覚めたか?」


と俺を助けてくれた大男が声をかけてきた。

その横には先ほどは見なかった女性もいる。


薄い茶色の長髪に同系色の瞳。

10人中9人(残り1人はホモ)が振り返るであろう美貌だ。

ちなみに胸はでかい。


「急に気絶するからどっか怪我でもしてんのかと焦ったぞ?」

「貴方の姿の刺激が強すぎたんじゃない?」

「なるほど?」

「ま、それは置いておいて。キミ、怪我はない?確認はしたけど一応ね?」

「怪我はないです。助けて下さりありがとうございます」


そう言ってお礼をする。


「そんな丁寧な口調じゃなくても大丈夫よ?でも怪我が無くて良かったわ」

「ま、気にすんな。普通の口調でいいんだぜ?」


ならお言葉に甘えて。


「助けてくれてありがとう」

「それでいい」


そう言ってニカッと笑い、座っている俺の頭をその大きな手でワシワシと撫でる。


このまま握ったら俺の頭なんて潰れるんだろうな。

ザクロのように飛び散っちゃいけないものが出てくるだろう。


はっ!?

ウォーウルフに襲われるという命の危機が去ってまた新たな危機が!?


「まだ聞いてなかったけどキミ名前は?私はイルシェータよ。でこの無駄に大きいのが」

「グルヴァンスだ、よろしくな」


イルシェータさん、とグルヴァンスさんか。

俺はなんて名乗ろう?

少し考えた後に答える。


「ベルクス、7歳。前世も含めて彼女はいません」

「おおう?彼女がいない?もしかしてシェータに惚れたか?それに前世?なんでそんな事を?」


前世って言って見たのはどう反応されるか見てみたかったからだ。

異端扱いされたりしていたら危険かもしれないし。

この人たちなら異端でもすぐに殺そうとしたりはしないと思って試したのだ。


「いや、なんとなく気分で」


特に反応を見る限りは異端だとかそういうことはなさそうだ。

まあ自分から言いふらす気などないけど。


「なんとなくかよ!?」


グルヴァンスさんとイルシェータさんが笑いだした。


「ヴァン、私、こんな名乗りをあげる子初めて見たわ」

「シェータもそう思うか?まったくおもしれぇやつだ。なあベルって呼んでいいか?お前さんの事気に入った」

「あっ私も」


断る理由もない。


「どうぞ。俺もヴァン、シェータって呼んでいいかな?」

「おう」

「よろしくね、ベル」

「よし自己紹介もすんだし、色々話もあるがまずは飯だ!」

「そうね。さ、ベル。ご飯にしましょう」


談笑しながら食事をとる。

その後少しの休憩を挟んでからヴァンが話を切り出す。


「ベル、突然だがお前さん。現状は理解しているか?」

「ちょっとヴァン!?」


もちろんしている。

俺がヴァンとシェータに助けられたという事も、俺が最後の生き残りであったという事も。


「落ち着け、シェータ。ベルは理解している」

「だからって聞き方があるでしょう!?」


そこまで言ってヴァンはこちらに向かい頭を下げた。


「すまない。ベルも理解しているだろうが助けられたのはお前さん1人だけだった」


この人本当にいい人だ。

本来助ける義務もない、助けに来てくれただけで凄いのに助けられなかった人の分まで謝る。


「ヴァンが謝ることじゃないよ、助けてくれただけ十分だよ」

「だがそのせいで・・・」


だからそんな気にすることじゃ・・・

と言おうとして気がついた。

ああ、なるほど。

俺の家族を助けられなかったと思ったのか。

確かに俺の年齢で一人旅なんて事はしない。

普通に考えたら行商の家族だと思うだろう。


「いや、あの商隊に俺の家族はいないよ」

「・・・!ならなんで行商と一緒に?」

「俺、孤児なんだよ。今回同行してたのは育ててくれていた婆ちゃんが亡くなったから、都市の孤児院に行くためだよ」

「そうか、すまねぇ・・・辛いこと聞いちまって」

「気にしてないから大丈夫」


気にしているのはこの後どうするかである。

1人で都市まで行く事はできない。

すぐに魔獣の腹の中だ。

そうなるとヴァン、シェータに送ってもらうしかないのだが、助けてもらった上でそこまで迷惑をかけるのも気がひける。

どうしたものか・・・


悩んでいると、その表情が落ち込んでいるように見えたのか?

シェータが突然俺を抱きしめた。


正面からなので大きな胸に顔を埋める形だ。

感触は天国だが、圧倒的に酸素が足りない。


「ごめんね?辛かったでしょう」


抱きしめる力は強い。

抜け出せない。

ギブアップの意味を込めてタップするが離してもらえない。


い、意識が・・・

命の危機part3だ。


「おーい、シェータ」

「なによ、ヴァンが悲しい事思いださせるからいけないのでしょ?」

「いや、それは悪いと思ってるが。そのままだとベルが死ぬ」

「あっ、ごめんね」


やっと解放される。


「ベル、大丈夫かよ?」


倒れている俺に心配するようなヴァンの声。

ちょっとお花畑が見えた。

遠くから婆ちゃんがまだこっちに来ちゃダメだよ〜って言っていた気がした。


その問いは愚問だよ、ヴァン。

大丈夫かそうじゃないかは関係ない。

男として


「これで死ぬなら・・・後悔は、無い、ぜ・・・」


通じるか分からないがサムズアップしながら弱々しく腕をあげる。

そして力尽き気を失う。


「おい!ベルゥゥゥゥゥゥ!?」



もちろん演技だけど。




そんな寸劇の後、ヴァンの正面に俺、シェータとという位置に落ちついた。


俺はシェータに人形抱きされている状態だ。

後頭部に当たる感覚が幸せです。


そして今度もヴァンが話を切り出した。


「なあベル突然なんだが俺の弟子にならないか?」

「あっ、私も言おうと思ってたのに!」


その話に対してシェータも反応を返す。

えっとつまりどういうこと?


「いやな?実は俺もベルと同じくらいの時に師匠に拾われてな。そんで鍛えてもらって今の俺がいるわけなんだ。だからお前さんの事が他人と思えなくてよ」


つまりヴァンも孤児だったのだろうか?


「いや、まあ俺の場合はまたちっとばっかし事情が違うんだがな。それは置いておいて、んでどうする?」


そこで一拍空けたのち言葉を続ける。


「もちろんこれで断っても構わないし、その場合も放り出したりしねぇから安心しろ。俺たちこれでもそこそこ(・・・・)名が通ってるんだ。街まで送った後も力になってやる」

「決めるのはベルよ。私としては一緒に来てくれると嬉しいけど」

「どうしてそこまでしてくれるの?」


俺にとっては破格の条件だ。


「まあ、さっきも言った通り他人事だと思えねぇってのもそうだが、一番の理由はお前さんのこと気に入ったからだな!」

「私もよ、抱き心地がちょうど・・・」

「いや、シェータさん。それ気に入ったの意味が違う」


思わず突っ込んでしまう。


「もっかい同じ質問になるが、どうする?」


弟子になる事に心の中では決定済みだ。

でもこんな時でも俺は俺。

冗談を挟みたくなる。


「残・・・」


念だけど、と繋げようとしたところでシェータの視線に気づく。

泣きそうである。

流石にこのまま言うのは俺の良心が保たなかった。


「冗談だよ、これからよろしく師匠!」

「おう、よろしくな!」

「ねぇ?私は?私のことは?」


確かに師匠だと紛らわしいな・・・


「ならヴァン師匠とシェータ師匠で、改めてよろしくお願いします!」

「うん、よろしくね!」


こうしてこの日、俺は2人の師匠を得た。



シェータはヒロインじゃないです。

あしからず。

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