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第11話 模擬戦 前

遅れてすいません。

年末年始立て込んでおりました。

この投稿も合間を縫ってのものとなります。


「・・・どうしてこうなった?」


本日何度目か分からない答えの出ないこの疑問。


「どうしたんだ?早く始めよう」


目の前にいるのは俺と同い年の青年だ。


なんか訓練用の刃を潰した剣を構えながら「もう待てない!」とばかりに催促をしてくる。


両手剣なのに片手で軽々扱っているところを見るとかなり筋力はあるのだと思われる。


ちなみに催促の内容は模擬戦だ。

殺すのは無し、降参か戦闘不能になるまで続行だとか。


学園に来た初日にどうして模擬戦なのか。


もう一度言おう。


「どうしてこうなった?」



思い出すのは数時間前のこと。


宿屋で休息を取った翌日。

疲れも取れ、ようやく本来の目的である学院に向かう事になった。


昨日の反省も踏まえ、面倒だと嫌がるセラをどうにか説得してフードを被ってもらい、学院に到着した。

学院にも門番がいたので、ここでセラも顔を出し、学院長の元への行き方を聞いた所までは順調であった。


しかしその後が問題だ。


場所さえ聞けば俺は空間属性持ちの魔術師。

方向を見失うことは無い。

よって最短距離の道を進んで行くと、男子生徒に呼び止められたのだ。


「そこから先は立ち入り禁止だぞ?」


失念してたよ。

確かに行き方と空間を把握していても、ルールまでは分からないって。


振り返り忠告してくれた男子生徒にお礼を言う。


「助かりました」


すると男子生徒はニカッと笑い。


「いや、気にしないでくれ」


男子生徒の容姿は黒髪黒目。

身長体格共に俺と同じくらい。

その黒髪も視覚的に重くない黒だし、爽やかなイケメンさんだった。

前世の日本人しか同世代の人を見なかったから少し年上に見えた。

一応敬語を使っておこう。


「所で君たち、見た所この学院の生徒じゃないようだが?」

「まだ生徒じゃありませんね」

「ふむ?まだという事はこれから生徒になるという訳か」

「そのために学院長の元へ向かっている最中です」

「なるほどな、確かに学院長の元へ行くならここは一番近道だろう。後、立ち入り禁止というのは嘘だ」

「はい?」


なら何故俺たちを引き止めたんだ?

あれかセラ目当てか?

それなら許さない。


「いや、この先は少し道を逸れると急にひと気が少なくなるんだ。そこに2人組の男女が向かっている、となると、な?」

「なるほど・・・」


人が少ないという事は他人に見られるリスクが少ないという事だ。

貴族なんかで人目を忍んでということもあろう。

密会には適していると言える、のか?

人が少ないって色んな人が知ってるならば、あんまり意味なさそうな気もするが。


「さらに2人は見目麗しい若い男女。仲睦まじげで向かう先を考え、昼間から睦事でも・・・」

「そっちかよ!?」


思わず遮って素の口調で突っ込んでしまった。


いきなり何言い始めるのかこのイケメン!

しかも女子(セラ)もいる前で堂々と言っているのに、いやらしく感じない。

これがイケメンパワーか・・・


「思わず言葉が・・・。すいませんでした」

「いや、気にしていない」


するとセラがここで言葉を発した。


「昼間からはしない。けどベルがどうしてもっていうなら・・・」

「急に誤解加速させるような事言わないで!?」


モジモジしながら言うな!

後、昼間からは、とか言うのやめなさい。


「む、誤解なのか?」

「そんな気はありませんよ・・・」

「私もいきなり外はちょっと遠慮したい」

「セラさんは少し静かにしてて?」


何ぶっちゃけてますか貴女は!


「ははは!仲睦じいのは良い事だ。そう言えば名前をまだ聞いていなかったな。先ほどの会話で愛称は分かったが、いきなり私が呼ぶのも変だろう?」


ああ、そう言えば。


「私はベルクスです。そちらは?」

「私はセラリス」

「おお、そうだった。私から訪ねておいて名乗らないのは失礼だな。私はコルドラコ王立高等学院、高等部1年のエルムザードだ。気軽にエルとでも呼んでくれ。ああ、敬語はやめてくれよ?先ほどの砕けた口調くらいが丁度いい」


高等部1年って事は15歳、同い年だ。

雰囲気で年上だと思ってた。

ならお言葉に甘えて敬語は使わなくてもいいか。


「なら俺たちと同じ歳だ」

「という事は高入生か。優秀なのだな。あの試験は難関だというのに。しかしこの時期にか?入学式は終わっているが・・・」


高入生とは高等学部から入学した生徒のこと。

小児部、中等部もあるのだが高入生の倍率は毎年かなり高いらしい。


というより入学式終わっているのか。

ちょっと気になってたんだけどな、異世界の入学式。

少し残念だ。


そこでエルが少し驚きながら呟く。


「まさか編入試験合格者か?それとも他国からの留学生か?いや、そんな話は聞いていないが・・・」


編入試験は途中から入学するのに必要な試験で難易度は相当に高いらしい。


ちなみに先ほどの高入生の話と編入試験の話は学院の門番が話していた事だ。

エルも門番の人もやはり俺たちの素性はきになるのだろう。

そのせいか思案顔だ。


「いや、編入試験なんて受けてないぞ?」


すると余計考え始めた様子。

このまま悩ませるのもなんなので答えを教える。


「なんだかこの学院に両親の知り合いがいるみたいでさ。その知り合いから学院に来いって言われたんだよ」

「という事は教職員からの推薦枠か?しかしその場合も入学時期が違う。なぜだ?」


門番はこの説明で納得した様だが、エルにはまだ疑問が残る様子。


「俺たちも突然両親から聞いた事だし、入学の時期と違うのは知らなかったよ」

「私は少し前から入学の事は知ってたけど理由までは知らない」

「・・・学院長に直接尋ねるのが早いか。私が学院長の元へ案内しよう」

「おっ、助かる」



そうして未だ思案顔のエルに案内され、学院長の元に来た。


「失礼します」


一礼して学院長室に入る。

セラも俺の見様見真似で一礼して後に続く。

エルの礼はとても様になっていた。


「はいはーい。おや、エルムザード君と・・・見ない顔だね。君たちは誰かね?」


やたらフランクな感じで迎え入れてくれたのはどう見ても俺と同い年くらいにしか見えない紫髪紫目の女性だった。

体型はキュッ、キュッ、キュッといった感じのスレンダーさ。

身長は座ってるから正確にはわからないけどセラより低そうである。


・・・学院長の孫かな?という俺の期待を裏切って自己紹介が始まる。


「私はこのコルドラコ王立高等学院学院長のフェリティア・ゼオレンですよ。よろしくねー」


またやたらフランクな挨拶をされた。


やっぱどう見ても10代なんだよな・・・

セラの方が歳上に見えるレベルだ。


「私はベルクス、こっちはセラリス。それで・・・」


ここから長々と説明するより手紙を見せた方が早いだろう。

そう思い手紙を渡す。


「ん?これは!って事は君たちヴァンとシェータの子供達!?」

「はい、そうなります」

「という事は私たちを呼んだのは学院長?」


セラさん平常運転です。


「セラ、学院長さん相手なんだからもうちょっと言葉使いをだな・・・」

「さっきのはベルに聞いたんだよ?」

「それはそれで問題だから」

「私はベルと話してたほうがいい」


俺以外の人ともっと会話する努力をしましょう。


「ははは!いいよ、気にしないで。ヴァンとシェータは面白い子供を育てたねぇー」


その評価はどうなんだろうか。


「お待ちください、学院長」


ここでエルが声をあげる。


「無粋かとは思いましたが、首を挟ませていだきます。先ほどの名前が挙がったベルクスとセラリスのご両親の名をもう一度お聞きしても?」


ん、親父と母さんの名前がどうしたんだ?

知り合いだったりしたのか?


「ヴァンとシェータの事?ああ、エルムザード君が思い浮かべた人であってると思うよ?」

「!!なんと!?」

「一応ベルクス君とセラリスさん・・・ベル君とセラちゃんでいいか」


よくないでしょ。

呼ばれるのが嫌だとかじゃなくて、学院長がそれでいいのか。


「ベル君とセラちゃんに聞いてみれば?」


そしてエルはこちらに向かい緊張した表情でこちらに尋ねた。


「それでご両親のお名前を教えていただいてもいいか?」

「グルヴァンスにイルシェータだが?」


それを聞いてエルが固まる。

・・・なんかしたのか親父。

母さんより親父の方がなんかやらかすとしたら可能性が高いしな。


「ふっ、ふはははははは!!!」


突然笑い始めるエル。


「なるほど!合点がいった!そうか!ベルクスたちは『炎熱王グルヴァンス』と『魔女帝 イルシェータ』の子供であったか!ならば学院長が、学院に入れたがるのもおかしくはない。いや、当たり前と言った方が正しいな!」


なんか炎熱王とか魔女帝とか小っ恥ずかしい二つ名的なものが聞こえた。

親父たち、有名人だったのか。


・・・ふむ、この二つ名みたいなの後で揶揄う材料に使えそうだな。


「しかし音に聞こえし冒険者の子供となると実力の方も相当なんだろうな」


何故だろう、エルの目が獲物を見定めた時の魔獣の目と重なる気がする。


「ヴァンもシェータも手紙に書いてあったけど、2人ともかなりの実力者みたいだよ〜」

「ほう・・・」


あっ、なんか嫌な予感。


「ベルクス」

「さっき言い損ねたけど、ベルでいいよ」

「私もセラでいい」

「では、ベル。私と模擬戦をしてくれないか?」


ある意味、予想通りの言葉であった。


「一応聞いておくけど何故?」

「かの有名な炎熱王と魔女帝の息子だ。普通に試験を受けても合格間違いなしだろうが、その実力を疑う者も現れるだろう。こう見えても私も少しは戦える方なのでね。私が認めたとなれば有象無造作の輩は減るだろう。後は私の純粋な興味だ」


よくあるパターンだね、この流れ・・・

でも俺の事を侮ってセラにちょっかい出す輩もいるかもしれない。

そんな奴らを減らせるなら、やっておきたい。


でも、学院に来て初日で今日知り合った人物と模擬戦。


とりあえず俺の心情を言葉にしておこう。


「どうしてこうなった?」

次話はまた間を空けてしまいますがご了承下さい。

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