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間話 師匠の心情

ヴァン視点の間話です。

「・・・行っちまったな」

「・・・そうね」


俺とシェータの共通の友人からの手紙で突然、王立高等学院に入学が決まったベルとセラ。


2人とも俺たちとの血の繋がりはない。


それぞれ偶然とは言え、ベルの場合俺たちが、セラの場合はそのベルが助けなければ本来は出会わなかったはずだ。


それにしても・・・


「親父と母さん、か」


弟子として、俺たちが教える事を余す事なく吸収した優秀な2人。

流石に俺たちはまだまだ負けるつもりはねぇが、同世代ならまず負けなしだろうぜ。


どんどんと技を覚えて成長していくもんだから、ついやりすぎちまったのは内緒だ。


「あれは驚いたわね」


シェータも俺と同じ様な事を考えていたのだろう。

長年の付き合いだ、表情でそれくらいは分かるってもんだ。


「ありゃあ、予想外だったわ」


俺たちは2人に俺たちの事を親と呼べとは一度も言ったことはない。

2人とも記憶にほとんど残っていないとしても、本当の親がいたのは確かだ。

木の根から生まれるだの、ある日突然現れたのでもないだろうしな。



ここに来る前、つまりベルに助けられる前はセラは孤児院にいたそうだ。


物心つく前にはある孤児院にいて、神父様が親として育ててくれたんだ、とセラは言っていた。


セラリスという名前は顔も知らない親が、金とともにあった置き手紙に書かれていたものだそうだ。


その時点で、本当の親がセラを少なくとも憎んではいなかっただろう事はわかる。

本当に子供をいらないと思っているような輩なら、奴隷として売っちまうからな。


胸糞悪いことだがセラが預けらた頃の歳を考えると、奴隷としても売れない。

結果として実の子供を手にかける様な奴もいるのだから。


そんなセラの育ての親の神父が天寿を全うし、孤児院は閉鎖する事になった。

自らの死期を悟っていた神父は、当時最年少で1人引き取り手が現れず孤児院に残っていたセラを、他の孤児院に託すよう遺言を残した。


その孤児院まで連れて行ってやると近づいてきたのが、ベル(アローバード)が倒した盗賊だった。

奴隷として売ろうと企んでいる事をたまたま奴らが話していたのを聞き、隙をついて逃げ出したところに現れたのがベルだった。



そんなセラと事情こそ違うがベルも天涯孤独の身だ。

しかもベルの場合はある程度は産みの親の記憶があるようだ。


祖母に育てられたとは聞いたが、セラが来た日にシェータと共に聞いたベルの心意気の話の最初の方に親の事を言っていたからな。


確か「親父に女の子には優しくしろって言われた」っだったか?

ったく、ベルの顔はかなり整ってるしその大元の容姿を持っていて、そんな言動をする父親ってとんでもないジゴロだったんじゃねぇだろうな?


その理由で納得しなかったセラが問いただし、ベルを傷つけたと思い落ち込むセラの頭を撫でる自然な動作。


俺の想像した通りのベルの父親なら、しっかり引き継がれてるだろう。


俯いてベルからはセラの表情は見えなかっただろうが、シェータの魔術で多角的に見ていた俺たちにはセラの表情が変わるのを見ていたからな。


「あっ、落ちたな。これ」

「見事に落ちたわね」


俺たちの意見が揃ったのは仕方ない事だろう。


しっかし未だに、ベルも自分の容姿に自覚が無い様子なのはどうにかならないもんかね?


透き通るような銀髪に吸い込まれるような蒼の瞳。

目つきはちとキツイが、鼻の筋も通っているし、声もよく通るいい声だ。

修行で鍛えらた無駄のない身体つきをしている。


こうして考えてみると、男の俺が言うのもなんだがかなり容姿に恵まれているよな。


それで出会った当初から大人を相手にしているような感じもあるが、結構年相応の行動をする事もある。

そしてさりげない気遣いと、優しさを感じる行動もできる。


そんなところが堪らないとセラがシェータに言っていたそうだ。


自覚を持て、ベル。

このままだと学院でとても苦労しそうだ、主にセラが。


いつものベルがセラに対する言動を他の女子にもやったりしたら陥落する子続出するぞ?



思考が逸れたな。


そんな2人、ベルには祖母、セラには神父という立派な親代わりがいたのだ。


だから俺とシェータは2人に親と呼べとは言ったことは無い。


なのにさっきの2人の言葉。

俺を親父、お父さん。

シェータを母さん、お母さん。

ベルとセラにそう呼ばれた時はかなり驚いた。


むず痒いが、悪くねぇ気分だ。


「ふふふ、母と呼ばれるのがこんなに温かい気持ちになれるものだなんてね」


シェータも満更でもないようだ。


「ああ、それにしても空間転移でとっとと行っちまったのは照れ隠しかね?」

「その時の顔見てみたかったわ」


案外向こうも同じ様な事を考えているのかもな?


「だな。よし今夜は2人の新たな旅立ちを祝って取って置きの酒でも飲むか!ドワーフの火酒だ!」

「飲む口実が欲しいだけじゃないの?まあ、お祝いには賛成ね。火酒は強すぎるし、私はエルフの里の果実酒でも出そうかしら」

「おっ、いいね。なあ俺にも後で少しくれよ?」

「ヴァンの少しはかなり多いから嫌だわ」


まあなんでもいい。


学院で生活、楽しんでこいよ?

俺たちもお前らが更に成長してくるのを楽しみにしているからな。


そんな2人を祝い仲間ら飲む酒は美味いだろう。


行ってこい!

俺たちの子供(ベル、セラ)

ベルの親父(今世)「なんか酷い誤解を受けてる・・・」



更新不定期ですが、当作品と今後ともお付き合いいただければ幸いです。

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