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四神守護隊の日常。  作者: きりしま。
5/5

◇Ⅰ‐4◇始まり

玄武が立ち去った後、ほのかはある人の部屋へと導かれた。



「遠藤さん、いるか?」



久方は部屋の前で声をかける。部屋の中で何やら慌ただしい音がしばらく聞こえた後、



「おおっ!いるぞ!」と大きな声が聞こえた。



「ったく、入るぞ。」



呆れた表情を見せたあと、久方は襖を開ける。



そこに座っていたのは、大柄な男性だった。ここは男性だらけだ。女性であるほのかはそのせいか、息がつまりそうになる。



「局長。また饅頭ですか?」



吉野が少し笑いながら久方の後ろから入ってくる。それに続いてほのかも中へ入った。



「遠藤さん、あれだけやめてくれって頼んだだろうが。」



「いや、食べてないぞ。よ、吉野もいらんことを言うな!」



そう叫んでいる彼の口元には饅頭の欠片らしきものが付着していた。それに三人とも気づいている。



「まぁ、今日はそんなことじゃないんだ。こいつなんだが。」



久方はほのかに前へ出ろと命令した。ほのかは歩いて遠藤という男性の前へ座る。



「ん?新入りか?珍しいな、駿河がスカウトするなんて。」



スカウト?あ、さっき言ってた特殊能力に関してのことだろうか。そして久方の下の名前は駿河というらしい。



想像するに、この組織は、特殊能力、すなわち昨 夜ほのかが目の当たりにした久方のような能力を持った人たちを次々とスカウトして、暗殺をもくろむ団体ということだ。


「いや、それが。能力は持ってない。」



「え?」



「玄武様が直々に彼女をここに入れて欲しいと頼まれたんですよ。」



「は?」



遠藤は、意味不明だと言いたげな表情をしていた。ほのか自身も今まさに同じような心情だ。



「荒木ほのかと言います。昨日、偶然殺人現場を見てしまってここに連行されました。」



「殺人現場って。いかにも俺ら犯罪者みたいじゃねえか。」



久方が後ろで小さく呟いている。そうではないのだろうか。



「あぁ、話は聞いていたが、確か人透班が活動してなかったとか。」



「そうなんだ。何やら昨日の敵の狙いは人透班だったんだ。」



「それにしても、不思議な団体ですよね。四神ではなく、人透班を狙うなんて。」



しじん?なんのことなのだろうか。三人が繰り広げる会話に私はついていけなかった。それも当たり前のことだろう。



「人を見えなくする能力なんて数奇だからな。奴らもそういう人材が欲しかったんだろう。」



「人透術は、紗々(ささ)一族特有のものだからな。まぁ、狙われてもしょうがないといえばそうだな。」



「あの...」



ほのかは限界になってきたので、口を開く。



「あぁ、すまないな。えと玄武様から直々にここに置いてくれなどと…何か玄武様と関係があったりするか?」



「いえ、初対面でした。でも、玄武様は私を以前に会ったことがあるとおっしゃっていました。」



「うーん。何か訳ありのようだな。玄武様の考えは時々意味深なことがある。まあ、今は取り敢えず従っておこう。」



遠藤はほのかの後ろにいる二人をこっちに来るよう手招きする。まるで四人で円を作るような形になった。



「取り敢えず、自己紹介しておこうか。俺は遠藤三良えんどうみつよしという。四神守護隊の局長を務めている者だ。以後よろしくな。」



「四神守護隊?」



ほのかは遠藤の言葉を繰り返した。



「まぁ、俺たちは四神を守るという職業をしているんだ。具体的な内容は後でいいだろう。俺は、久方駿河ひさかたするが。ここの副長だ。」



「僕は吉野賢よしのけん。役職は、まぁ局副長補佐といったところかな。まぁ、殆ど副長の奴隷になってたり...」



そこで久方の鋭い目が自分に向けられてたのを察すると吉野は口を紡ぐ。



「私は、荒木ほのかといいます。柊学園1年です。」


「あったりぃ!やっぱJKだったんだね!」



「おい、賢も確か...」



「はい、DKですよ!」



遠藤に向けて笑顔で吉野は答える。どうやらほのかと彼は年が近いみたいだ。



「おい、さっきから、じぇいけい、やら、でぃけぃやら、何のことだ?」



久方がむずがゆそうな顔をしていると、襖が開く。


「JKはジョンのケツ。DKはデニスのケツですよ。久方さん。」



そう冗談混じりに発言しながら、一人の少年が何の了解も得ず四人の円の中へ入ってきた。



「何だ?最近は外人のケツが流行ってんのか?」



私は少年の冗談と久方の真面目さに呆れる。吉野も左に同じであるようだ。



「女子高校生と男子高校生の略ですよ...。」



吉野がぼそっと呟いた。どうやら、久方には聞こえてないようだ。



「李誠、久しぶりだな!」



「そうですね、遠藤さん。」



遠藤と会話をする少年は、細い体つきをしている。肌も青白くどこか体が悪いように見える。



「何か、騒がしいようで何かあったんですか?あれ?誰ですか?」



少年はほのかに赤い瞳を向けた。その瞳に恐ろしさを感じた。それでもなんとか自己紹介しようとしたが、その前に久方が口を開く。



「荒木ほのかだ。こいつは、沖風李誠。一番隊隊長だ。」



「どうも。沖風です。よろしくね。」



何だかゆるい感じの口調で話す人のようだ。



「よろしくお願いします。」



「えと、本題に戻すが、遠藤さん、こいつをここに置くのはいいのだが、玄武様の頼みがもう一つあるんだ。」



「なに?玄武様は普段控えめな方なのに本当に珍しいことだな。よほど、気にかかったのだろうか。んで何だ?」



「もしかしたら、恋心芽生えたのかもね?」



吉野がほのかの耳元でニヤニヤしながら囁く。ほのかは引きつった表情を見せた。冗談だよ、言い、彼は舌を少し出した後、態勢を戻した。



「どうやら、四神屋敷に参ることができるような役職についてもらいたいらしい。」



「何だと!?そんな無茶な。屋敷にいけるのは特殊能力を持つことのできる者たちだけだぞ。」



「それは俺も勿論承知なんだが。玄武様の頼みには否とは言えんだろう。」



「あの、さっきから玄武様というのは一体どういう方なんですか?王様か何かですか?」



ほのかは皆に尋ねる。なぜか沖風と吉野が吹き出せば、笑い出した。



「え、何?」


「まぁ、王様みたいなものだけど、玄武様は四神の一人なんだ。」



吉野は腹を押さえて教える。どうやら王様という単語に二人はツボにはまったらしい。



「あぁ、そうなんですか。」



ということは、この人たちは四神の一人である玄武様の守りをしているということだ。



「ぶっちゃけどうする?遠藤さん。」



久方は相変わらず真面目な表情をして遠藤に尋ねる。



「うーん...急に言われてもな。」



「あ、じゃあこれはどうですか?」



ツボから抜け出した李誠が口を開く。一斉に彼の方へ向く。



「うちの弟のとこに配属させたら。隊員が欲しいって嘆いてましたよ。」



「あぁ、それはいいな!」



「監察はああ見えて危険だぞ。それだったら、食堂の手伝いとかやらせた方が。」



「副長。家事班は、屋敷へは行けないでしょ。」



吉野の冷静なツッコミに久方は、そうだったなと黙り込む。



「監察はスパイみたいなもんだ。敵の人数や目的などを隠れて探し出すのが目的だ。」



「はぁ。」



何であれ、ほのかは彼らに従ってないといけないように感じた。何もここについて理解できてないほのかにとっては反論の台詞などちっとも出てこなかった。



「まぁ、多ければそれだけ情報も集まるかもしれんしな。それで決まりだな。」



久方が腕を組みながら言う。



「あの、ちょっといいですか?」



吉野が隣で手をあげながら言う。



「何だ、賢。改まって。」



「ほのかちゃんは、特殊能力がないでしょ。でも学生だし。朝から晩までというわけにはいかないよね。」



どうやら仕事は24時間営業のようだ。



「あぁ、確かにそうだな。」



遠藤は忘れてたというような表情をする。



「え、吉野さんはどうしてるんですか?」



ほのかは先ほど吉野はDKだと言ったことを思い出して、言った。



「あぁ、僕は特殊能力持ってるから、まじない師に分身を作ってもらって、そいつを通わせてる。」



現実にはありえないことだが、思えば便利なものだなと思う。



「分身だけど、頭の中にはきちんと授業で学んだこととかが入ってくるから一石二鳥だよ。」



「すごいですね。でも私は能力がないから分身を作れないということですね。」



「そういうことだ。だから、お前はまあいえば”バイト”としてここに雇うことにする。李誠、弟に連絡を。」



「了解でーす。」



こうして、ほのかの四神守護隊のバイト人生が始まったのだった。





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