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◆prologue◆
―ほのか、ごめん。
「どうして謝るの?」
―僕はいけない人間だ。
「どうして、そんなこと言うの?」
―君はこの世で生きて。必ず迎えに行く。
「何、言ってるの?」
―いつか、きっと。それまで待ってて。必ず救うから。
「ちょっと、待っ!」
私の目の前にいた‘誰か‘が消えていく。花のように散っていく。
私は手を伸ばす。散りゆく花に向かって。
言わなきゃいけないこと、聞かなきゃいけないことがたくさんある。
でも口が思うように動かない。そうして時が過ぎる。
散り終えた花。私は独り。座り込む。
そして、ただ一言呟くように、もう目の前にはいない存在に問うてみる。
優しい微笑みを浮かべながら散っていった彼に。
私の名前を知っている彼に。
『あなたは誰?』