宿の女将の腕がすごかった…
本日2話目投稿です。 宜しくお願いします。
…だらしなく寝ているフェアをそのままに、素振りをしようと小楯と剣を持って部屋から出る。
まだ朝食の時間まで余裕があるようなので、女将さんに一言告げ、裏庭に出て素振りを始める。
…イメージは碧ラクーンと一緒に出てきた紅ウルフ2体だ。
戦っている時は考える余裕が無かったが、今にして思えば、紅ウルフ2体は同時に襲ってこず、常に1体が自分を引き付け、もう1体が自分の横や背後から飛びかかって来た。 2体同時は1体がやばくなった時だけだ。
…目を瞑り、頭の中にある戦った紅ウルフの行動を思い出し、襲って来る方の軌道を小楯で受け流すように体を動かす。
小楯で受け流して剣で斬りつける。 ただそれだけの動作を1時間程続けると、汗だくになる。
少し休憩にと、快適魔法の水を出し、持って来ていたタオルを濡らし、体を拭こうとする。
タオルを濡らした所で宿から女将さんが出てきて「あんた! もう朝食の時間だよ! 妖精呼んで着な!」と相変わらずのデカい声をかけてくる。
此方も「わかりました!」とデカい声で返し、急いで体を拭くと、部屋に戻り何故かうなされているフェアを起こす。
「フェア~。 起きろ~。」
「う…ぅがす…後…無理です…中でも西が…。」
「…女将さんが来るぞ~(ボソッ)」
「…村の…ぅぃの…はっ!! おはようございます。マスター。」
…そんなに女将さんイヤか…
「うん。おはよう。 もう朝食だってさ。裏で顔洗ってさっさと食べよう。」
「わかりました。 …マスター。もう平気何ですか?」
「あぁ、心配かけてゴメン。 自分で決めた道だしさ。取り敢えず行けるとこまで頑張ってみるよ。」
「昨日の今日で、大分雰囲気が変わりましたね…。 何か良いことでもあったんですか?」
「ん? まぁ良いことって言うか…良い夢だね。 その内話すよ。」
まだ少し納得してないようだが、「ほら、急がないと女将さん来るぞ?」と言うと、慌てて裏庭の方に飛んでいく。
顔を洗い、フェアの為にカウンターから一番離れた席に座る。
頼んだメニューは、自分が[赤麦]から作られる赤パンに野菜のサラダ、[黒ラクーン]の香草蒸しにリンゴのような果物。
フェアが頼んだのが、[跳ね魚]と呼ばれる魚の塩焼き3匹に赤パン、黒ラクーンの香草蒸し2つに果物を絞ったジュース。
…フェアさん朝から大食いです。
後から聞いた話だと、[跳ね魚]はモンスターではなく普通に漁で取れる魚で、[黒ラクーン]はラクーン系の一番下、紅ウルフよりも弱いモンスターとのこと。
フェアの食べる量が体のサイズに合ってないので思わず「それだけ食べて大丈夫か?」と聞く。
返事を返してきたのは女将さんで、「あんた何言ってんだい! 妖精の食べる量にしちゃそれが普通か少し少ない位だよ!」とのこと。
…相変わらずの女将さんの大声にビビるフェアに、「この宿にいる間は諦めろ…」と小声で伝え、
食事を始める。
この宿で初めて食べる食事は、一言で言えば旨かった。
赤パンは外がカリッと、中はモチッと焼き上げられ、野菜サラダは野菜独特の苦味等は一切ない。
黒ラクーンの香草蒸しは口に入れて噛むと、肉から肉汁が溢れ、しかし蒸した事で肉の油っぽさが消え、香草のサッパリとした風味と肉の旨味のみが口に広がる。
フェアが頼んだ跳ね魚も一口貰うと、まるで地球で言うブリの塩焼きのような感じなのに、余計な脂分が無く、薄くかけてある塩と見事にマッチする。
思わず2人して女将さんを見ると、「どうだ!」と言わんばかりに此方を見ている。
食事に集中していて気付かなかったが、それぞれの部屋から続々と宿泊客が出て来て混雑し始める。
自分はリンゴ?を、フェアは果物ジュースを最後に堪能し、女将さんに「ご馳走さまでした。」と告げ部屋に戻る。
「フェア…。 この城下にいる間はこの宿に泊まり続けるぞ…。」
「絶対ですよマスター。 …あの大声はツラいですけど。」
「…うん。 まぁ、朝食も食べたことだし、今日は午前中から依頼を受けよう。次は討伐以外のも受けて、色々経験を積みたいよ。」
「…そうですね。良いと思います。 採取やその他の依頼をこなしてみましょう。 …旨く行けばーのスキルも手に入るでしょうし(ボソッ)。」
…?最後良く聞こえなかったけど、まぁ今日も気合い入れて行こう!
此処までお読み頂きありがとうございます。




