第二話 討伐隊03
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ネオ・アルカディアのパーティーは最大六人だ。そして、四人以下だと隠密や行動にボーナスがつく。ボス攻略などは六人か、あるいはそれの組み合わせで行うが、常に六人が最善、というわけではない。
かくして。行動は支配者捜索・討伐隊が六人二パーティで十二人。大地を繋ぐ大橋の様子を見にいくのが四人二パーティーで八人。街に残って連絡係を務めるのが四人二パーティーで八人。それが二十八人の振り分けになった。
バックスとクレプスさんともう一人が、パーティーの振り分けについて話し合っていた。あの三人が、50か60か、あるいは70か。それだけのレベルを持ったトッププレイヤーなのだろう。レベル的には三人でも十分に支配者は倒せるのだ、と予想できる。いや、そうでなければ攻略自体不可能だとみるべきだ。ただ、ボスはサイズや手数が普通とは違う。人数は多い方がいい。それに――いや、その考えはよくない。
想像力とは他者の痛みを知るためのものであって、他者を疑うためのものではない、と信じろ。そうしなければ、その思考に至った、それを最善だと思う自分を許せなくなる。許す必要はない、というのが本音だが、しかし、それは不幸というものだ。
そうして分けられたパーティー。レベルやバランスを考慮して決められたそれ。俺は三番目の大地へ繋がる大橋を見に行くパーティーに振り分けられた。二十八人が一枚の大きな地図をのぞき込む。便宜上、パーティーには一から六の番号を振る。この街から大地の端が遠い北へ向かうパーティー一はバックスやクレプスさんがいる主力チーム。状況次第で見つけたそのまま支配者を討つことが可能、という編成にしてあるらしい。次に、ハイレベル三人の最後の一人、ライトと名乗った青年のパーティー二は南に向かう。こちらもそれなりに戦力はあるし、何よりライトのレベルは二人ほどではないにせよ、この大地にはオーバースペックだ。ただしこちらは支配者を発見の後ある程度の調査で引き返し、パーティー一と合流の上討滅に当たるらしい。俺の所属するパーティー三は、第三の大地がある西へ向かう。ライトを除いた平均レベルはこちらの方が高い。それは第三の大地に近づくからで、敵が強くなるからだ。もし途中で支配者のダンジョンを見つければ引き返し、街に残る連絡係に伝える。パーティー四は第一の大地との境になる大橋を見に行くチーム。支配者発見はこちらと同じく街へ報告。五、六パーティーは街で待機。伝達や街の警護を行う。
その動きを地図上で確認し、それぞれのパーティーで準備に入る、直前、クレプスさんが俺に近づいてきた。
「レイくん」
端の方へ座る俺の隣に来て、小声でささやく。聞かれたくない話だろうか、と俺も声を落とす。
「どうしました?」
「剣……はまあスタイル的にいいとして、防具って結構きっちりしてます? レイくん、この街から出るつもりないみたいでしたから」
「あー……云われてみれば。ある程度、レベル相応ではあるんで普段なら第三の大地に入っても問題ないとは思いますが……」
「やっぱりそうですか」
そういうと、片手で何かを操作した。ポーン、と俺にだけ聞こえる通知音。トレード申請だった。
「え?」
そこに提示されていたのは、中級者向けの防具一式で、装備基準値が俺のステータス限界の、かなりいいものだった。更に有用なアクセサリ類も一緒になっている。トレード条件はドラクマ。それはかなり高く、俺の手持ちをほとんど使いかねない勢いだったが、けれど本来ならとても手が出ないような価格の装備たちだ。
「これ、桁数一つ少なくありません?」
「お店をやっている以上無料には出来ませんけどね。九十パーセントオフセールはありです。状況が状況ですし、在庫処分の閉店セールって奴ですよ」
といたずらっぽく笑った。
「それに私も、NPCの店でアイテムとか買いたいですしね。ちょっとした資金調達です」
なんていってみせるが、それは明らかな嘘だった。だいたいこの価格なら、相場より安く買いたたかれるNPCの店でさえ、三倍以上では売れる。俺はありがたく、その好意を受けることにして、トレード承諾ボタンを押す。またポーンと電子音がして、トレード完了を告げた。
「……死なないでくださいね」
と先生は云って、パーティー一の方へ戻っていった。
俺は気を引き締める。パーティー三には、守ってくれる人がいない。第三の大地へむけて敵は強くなっていくが、ハイレベルプレイヤーは一人もいない。このパーティーは、多分、一番全滅しやすい。
けれどそれでも。
俺は恩に報いたい、と思った。
パーティー三のテーブルへ向かう中、俺は決意を固めた。
そうだ。俺たちが第三の大地へ到達すれば、連絡を取れれば、状況はずっとよくなる。レベルは底上げされるし、大規模な行動に人数は必要だ。
そして何より、分断された大地をつなげることは、広場に残った人間にとっても希望になる。もちろん第一の大地だってそうだ。けれど、それが自分たちより強い第三の大地とであれば、希望は更に大きくなる。
支配者を倒すほどではない。最前線ではないかも知れない。けれど、そこが自分の戦場だ。希望の一端は、自分の肩にものっている。
それはきっと、俺を強くする。そう思った。