第二話 討伐隊02
2
「三十一人か」
酒場に集まっていた人間を見て、男が言った。俺たちが最後だったらしい。「リミット」の意味。俺と同じなのだろう。あそこに留まる人間は、もうダメだ。
意志があっても、力がなければ意味はない。だが、意志がない人間は最後の最後に敗北する。それはレベルの高低とは関係ない。自らが問われる場面で、敗れてしまう。酒場にいるこの三十一人が、今、この街で戦える人間たちだ。
「最終シナリオとはなにか。その全貌は定かではない。だが――幸いにして、まずすべきことは決まっている」
語りはじめた男の言葉。俺は酒場を見渡して、クレプスさんを見つけた。まあ、当たり前と云えば当たり前だ。多少強くなったところで、このあたりのモンスターに負けるはずがない。反対に、もし彼女が苦戦するレベルの敵なんてものがでてきたら、俺なんて一撃で消える。
「支配者の討滅だ。諸君らの中には気づいている者もいると思うが、『縮地の書』が使えなくなっている。つまり、七つの大地の支配者は、各大地に今いるプレイヤーで対応しなければいけないと云うことだ」
その言葉に、一同がどよめく。先程の、本来より強いモンスター。それよりも更に強い、ボスモンスター。果たしてそんなものに立ち向かえるのだろうか、と。
だが、俺が考えていたのは別のことだ。クレプスさんがこの街にいて、この場で支配者を倒すべきなのだと知っていて、残り三十人の中から使えそうなのを何人か連れて行けば、支配者は見つければいいだけのものだ。どこにいるのか、そこに時間はかかるだろうが、無理ではない。
問題は。
他の大地はどうなのか? である。
討伐隊を結成すること。それはここにいる人間で行われること。諸君らは優秀だ、少数精鋭だとたきつける男と、それにいちいち驚いてみせる他のプレイヤーを環境音にしながら、俺は思う。
転移不可、七つの大地という条件を考えれば、おそらく発動条件の一つは、『各大地に最低一人プレイヤーがいること』だろう。これが。七つ目の大地への橋の鍵として、今回は最前線のボスを倒すことではなく、六つの大地で支配者を倒すこと、ならまだいい。だが、沸き立った先日の、七つ目の大地を解放した、という噂話がその希望を打ち砕く。おそらく今日、七つ目の大地に先遣隊が入ったのだ。これは実にまずい。先遣隊はおそらくトッププレイヤーたちだ。規模はわからないが、少なくはないだろう。けれど。
彼らは次の大地に移動した瞬間から、本来より数段高いモンスターとの戦闘を強いられるのだ。どうだろうか。ここまで最前線で戦ってきた英雄たちがそう簡単にやられるとは思わない。だが、本来より強くなったモンスターの中で、果たしてダンジョンを攻略して支配者を倒せるだけの人数がいるのだろうか。それは戦力としても、消費量としても。
そして、四番と五番目の大地も危ういだろう。そこにいるのは中間層のプレイヤーたちだ。その中の何人が、真に冒険者たり得るのか。自らが現状大地の高レベルプレイヤーとなったことで、目覚めてくれればいい。だが、もし、最前線に立つつもりなど微塵もなかったら。既にもたらされた情報で、安全に強さをおっているだけだけの連中だったら。
ここは、二番目の大地は、一番難易度が低い。最大の街だから、本来より明らかにハイレベルなプレイヤーもいる。だが、他はどうだ。
と俺が考えている間にも当然話はすすんでいて、どうやらこの中から二パーティー、十二人で支配者の捜索や討伐を行い、残りで街を守護することになったらしい。
バックスと名乗ったリーダーの男は、これからステータスを考慮して振り分けを行うこと。賛同できなければ協力を無理強いせず、もう帰っていいことを告げ、それでも今この大地で戦えるのはここにいるものたちだけなのだ、と繰り返して、皆を見た。少しして、三人が席を立ち、二十八人になった。
「諸君、ともに剣をとろう。最終シナリオ、解放の時は近い! ここにいる我々で、この大地を、ネオ・アルカディアを解放するッ!」
その声に歓声が重なる。そうだ、今、俺たちは、俺が見るべきは、この大地だ。