海賊と魔法使いと、聖夜
グビグビグビッッ・・・
「ぷはーーっっー! くーーっっっ、酒が体に染み渡るぜぇーーっ!」
穴の開いた、髑髏の印が特徴的な帽子をかぶり、色あせたコートを着た、いかにも海賊という格好をした
そのみすぼらしい男は、ウイスキーの大瓶を勢いよく飲み干した。
そして、空になった褐色がかったガラス瓶を机に半ばやけくそ気味に叩きつけたその男の背中からは、
なんとも言えない哀愁と悲壮感が漂っている。
ばんっ、という酒場に大きな音が響き渡り、客は一瞬どよどよしたがそんなの日常茶飯事なので、
客達は再び談笑に戻った。
しばらくすると、その海賊風の男は足で酒場のドアを蹴破って外に出た。
「ふぅーー、すっかり外はクリスマスシーズンだな・・・。どこもかしこもキラキラしやがってよ。
・・・はぁーー、俺のとこにもサンタクロース来ないかなぁ・・。
来る訳ねえか。俺は悪党だもんな・・。」
思わず同情、いや共感したくなるようなセリフを寒空の下、白い息と共に吐き出したこの男の名は、
“ヒーリア=ジュード”。しがない海賊である。
ジュードが歩いていると、後ろから先ほど飲んでいた酒場のマスターの怒鳴り声が聞こえてきた。
「おーーーい、ジュードぉ!まーたてめぇはツケる気かぁっ!?」
海賊稼業というのは不安定な職業。宝を手に入れてがっぽり稼げる時もあれば、今夜みたいに財布の中で閑古鳥が鳴いている日だってある。
「おうよー。年が明けたら払うからよー!」
「ーーーっったく、しょうがねぇなぁ。正月になったらてめぇの船に取り立てに行くからな!
甲板ぴかぴかにして待ってろよー!」
「望む所だよー。ちゃーーんとたんまり宝見つけてくるからよー!」
ジュードと酒場のマスターはもう20年来の付き合いになる。こんなことはこれまでに何十回、いや何百回と起きたこと。だからマスターはしつこくは言わないのである。
ジュードは12月の寒空の下、コートのポケットに両手を突っ込み何だか物悲しげな雰囲気を漂わせながら
酒場から自分の船へと戻って行った。・・・誰もいない船に・・・。
本日は12/23。季節はすっかり真冬で、街中はクリスマスムード満点で至る所にイルミネーションやら
クリスマスツリーやらが飾られておりきらびやかな様子である。
そんな幸福感に満ちあふれたクリスマス一色の街には全くそぐわない、ひどく傷つき陰鬱な空気を放つ
海賊船が港に停まっていた。
その海賊船の主こそがこの物語の主人公“ヒーリア=ジュード”なのである。
海賊船の船体には
【クルー絶賛募集中!!広大な海に出発して富と名声を欲しいままに!!】
というキャッチコピーと、意外と絵心のある男女の海賊2人が抱き合っている絵が描かれたポスターが
貼られていた。
そのポスターの前に酒のせいでほんのり頬がピンク色のジュードがやって来て、ため息をこぼした。
「はぁ・・・このポスターを貼って以来だっっれもクルーになりたいって奴は現れないなぁ・・。
一体このポスターの何がいけないっていうんだ!?」
ジュードは遠い目をして雲に覆われた空を眺めた。
「いけると思ったんだ、俺達なら大丈夫だって、あの海を越えられるって・・・でも・・・・
それが間違いだったんだよな・・・・。」
ジュードはあてもなく彷徨い続ける雲に自分を照らし合わせながら、
半年前に自分の海賊団に起きた出来事を思い出し始めた。
〜〜 回想 半年前 〜〜
ー とある海域 ー
バリバリーーンッッ!! ブワォーーーッッ!!
この日の海は大荒れで、大嵐に海賊船はまともに舵がきかず、その上雷も降っていた。
「キャプテーーンっっ!このままじゃ、この船はーー、うわああーーーっっ!」
ジュードの海賊団の船員の一人が暴風雨によりがたがたと激しく揺れる船体から海へ落ちてしまった。
「おいっっ、大丈夫かーーー!?・・・
ビカーーンッッッ!!!
船のマストに雷が直撃した。
「うおっっ!!」
「ぎゃあーーー!!」
海賊船中は大パニックである。
つい1時間前は雲一つなかったのに、いまや視界もかすんでしまうほどの嵐である。
「キャプテン!あそこに何か船の影が見えますっ!」
「なんだって??おい、双眼鏡を貸してみろ!・・・・・・ん??
あれはーー“キャプテン・ジャッカル”の海賊船じゃねえかあっっ!!」
「え!!!???」
キャプテン・ジャッカルというのはこのあたりの海域を拠点に置く残虐で凶暴な海賊である。
とてもじゃないがジュード海賊団では太刀打ちできる相手ではない。
「おいおい、あんな所にひよっこ共がいるじゃねぇかよ・・。てめぇらにこの海はまだはえーよ・・・。」
ジュード海賊団の船に鋭い視線を向けながら、キャプテン・ジャッカルは不敵な笑みを浮かべた。
この日ジュード海賊団にとって最も不運だったのは、大時化でも大嵐でも雷でもなく、
キャプテン・ジャッカルの海賊団に遭遇してしまったことだったに違いない。
この日、ジュード海賊団は壊滅したのである。
〜〜 回想 終わり 〜〜
「・・・・くっ・・・・・」
ジュードの頬を伝って落ちた一粒の涙は、乾いた冷たい風に吹かれ散った。
「あんなところにさえ行かなければ・・・・俺は今頃あいつらとまだバカやってられたんだ・・・・っっ!ちきしょーーーっ・・・・1人が・・・こんなに辛いとはよ・・・・。」
ジュードは半年前のあの日以来、ずっと1人で海賊をやっているのである。
すっかり陽が落ちて、辺りは暗くなりしんしんと雪が降っている。
船のへりに若干積もった雪を見つめながら、ジュードは一人ウイスキーを飲んでいる。
「今年はホワイトクリスマスかー?・・・俺はもうすっかりおっさんになっちまったから無理だと思うけどよ・・・」
ジュードはウイスキーの角瓶を飲み干し、天を仰いだ。
「もしサンタクロースがいるってんなんならよ、この不幸な俺にプレゼントを届けてくれよ・・・・
はは、なーに言ってんだよ俺は。」
たとえそれが冗談だったとしてもーーー願いであることには変わらないーーー
「すいませーーん!!」
「ん??」
声である。まぎれもなく少女の声である。
「私、海賊になりたいんですけどーー!!」
「・・・・・嘘だろ・・・・? おいおい、まさか・・・さっき俺が冗談半分でサンタにお願いしたからか?」
今起きている事は果たして現実なのか。
まだ事態を素直に飲み込めないジュードは、戸惑いながらも船の外にいた声の主を船室に招き入れた。
ー 海賊船 「船室」 ー
ジュードと少女はテーブルの椅子に腰掛けている。
「・・とりあえず自己紹介してくれ。」
「私は“ミカ”って言います。ぴちぴちの15歳です。」
「うーーん、、15か〜〜。毛の生えてないような処女を仲間にするのはさすがになーー。」
「私、特技があります!」
「ほう。なんだ?」
「・・・・・【魔法】です!」
「・・・・・・今、なんつった?」
「特技は魔法なんです!」
「魔法だって・・・??あのなぁ、頭でもぶつけたのか?」
「いいえ、私はいたって健全で健康的でお肌ぴちぴちです!魔法使いなんです!」
「・・・おいおい、いくら海賊になりたいからって嘘はだめだよ、お嬢ちゃん。」
「嘘じゃないです!今から証拠に魔法を見せます!」
そう言ってミカは立ち上がり、ポケットからナイフを取り出した。
「いいですか、よーく見てて下さいよ・・・。」
「・・・ゴクリ・・・。」
「・・・・はぁっ!!」
サクッーーー!
ミカは自分の腹にナイフを刺した。
・・・・しかし、ミカの腹からは血が流れ出さないし、ミカも痛んでいる様子もない。
そして、ミカはナイフを腹から抜いた。
ナイフには血は一切ついておらず新品同様の綺麗さだった。
「どうですか!?これが魔法です!!」
「・・・・・それってただの手品だろ。ガキの頃に見た事あるぞ。腹に刺す寸前に先端が引っ込むようになってるんだろ?ったく、ちょっと期待しちまったが、とんだ子ども騙しの手品かよ・・。」
「・・・・・・ムッ」
ミカは不機嫌になった。
「ほらほら、さっさとお家に帰りな。いい子にしてないとサンタクロースからプレゼントもらえないぜ?」
「・・・・・・本物を見せてあげますよ・・・。」
そう言ってミカはジュードに掌を向けた。
「ん??」
「・・・『炎呪文』!」
突然ジュードの体が発火した。
「!!??
あっちぃっっあちっあちっ・・・・・うわぁ〜〜〜!!」
「どうです?これが正真正銘の魔法ですよ?」
「あっつっっ!!んなこたぁどうでもいいから、火を消してくれ〜〜〜〜!」
「・・・・『水呪文』!」
ミカが呪文を唱えると、ジュードは頭上から大量の水を浴びた。
「・・・ふぅ・・・・。偉い目に遭ったぜ・・・・。」
「これで私が魔法使いだって信用してくれますか?♪」
「・・・俺をこんな目に遭わせるような危ないガキを仲間にするのはちょっと気が引けるが・・・、
仲間にしないと殺されそうだからな。」
言葉を切って、ジュードはため息を吐いた。
「・・・はぁ・・・・、仕方ねぇ、サンタからのプレゼントだと思って仲間にしてやるよ。
よろしくな。」
「やったーーー!!よろしくお願いします!!♪」
こうして、サンタクロースからの贈り物なのかどうかは分からないが、【魔法少女ミカ】がジュードの仲間になったのである。
そして翌日。
ー とある島 ー
ビュオオオーーー・・・・・
ジュードとミカはしっかりと防寒着を着込み、吹雪舞う雪原を歩いている。
「うぅぅ、寒過ぎ・・・べっべっ!! ちっくしょう、雪が口の中に入りやがる。おい、魔法でこの吹雪止められないのかー?」
ミカはジュードの言葉を聞こえない振りをして、先を歩き続ける。
「・・・おいっっ!!ま・ほ・う!!ふ・ぶ・き、と・め・ろ!!」
わざとらしくゆっくりはっきりと大声で叫んだ。
「聞こえてますよーー!」
「なら返事をしろよ!で、どうなんだ。魔法でこの吹雪何とかならないのか?」
「残念ながらこれだけ広範囲の吹雪は私の魔法ではどうにもならないわ。基本的に魔法って自然には
逆らえないものなのよ。」
「ふーーん、意外と魔法って役立たずなんだな。」
今の一言がミカの癪に障ったようだ。
「・・・『雷呪文』!」
「・・・げふっっ・・!?」
ジュードに強烈な雷が落ちた。
まさしく、ミカの“かみなり”が落ちたのである。
それはそうと、なぜこの二人がこんな猛吹雪が降りしきる島なんかにいるのか。
その真相は今から5時間ほど遡ると明らかになる事である。
〜〜 5時間前 〜〜
ー レストラン「ターキーデイズ」 ー
むしゃむしゃ・・
ジュードとミカは朝食を食べている。
「船長、今日ってクリスマスイブですね♪何か予定あるんですか?」
「ん?クリスマスイブが何だってんだよ・・・俺みたいな非リア充にとっちゃあたただの平日と変わんねぇよ。ちなみに、予定は・・・・ない。」
「がっくし・・・・。せっかく海賊になれたのにー、海賊初日から暇だなんてーー。」
「大体よぉ、昨日は聞きそびれちまったが、どうしてお前は海賊なんかに・・・・
ドダーーンッッ!!
勢い良くレストランの扉が開けられた。
「号外だよ、号外ーーー!『極寒の島“コールドプレイ”に宝の噂あり!!』。気になる奴はさっさと島に向かっちゃいなーー!早いもん勝ちだぜーー!!」
ばらばらーーーっっっ!!
新聞記者はそう言い終わると、宝の地図らしき紙をレストランの入り口付近にばらまいた。
ジュードがその紙を拾った。
「・・・・・・」
真剣なまなざしでその紙を見つめるジュードの手は震えていた。
「・・・船長、どう?」
「・・・・来た・・・・。神様は俺を見放しちゃいなかったんだ・・・。
おい、新入り!今から宝探しに行くぞ!!」
「やったーー!!!どこまでもついて行きますよ、船長♪」
〜〜 そして現在 〜〜
船長であるジュード(負傷中)と新入りのミカ(魔法使い)はしばし休憩のため、運良く見つけた仄暗い洞窟の中で横たわっている。
「うーーううーーーーうーーー」
「船長、いつまでうなってるんですかー。女々しいですよ。」
「いつから俺とお前の力関係は逆転したんだ?朝までは従順でかわいい部下だったのによ・・・。
いててて・・・。」
「今でも十分かわいい部下ですよ? きゅぴ♪」
「・・・・・熱が出てきそうだぜ・・・。」
「それなら冷やしてあげますよ^^ 『水呪文』!」
バシャーーンーーー!!
昨日と同様水浸しになったジュードであった。
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吹雪が静かになったのを見計らって洞窟を出たジュードとミカ。
二人は宝の地図が指し示す宝の在処に向かって歩いている。
「ふぅ、ふぅ、地図によるとあともうちょっとのはずだ・・・。最後まで諦めるなよ、新入り!」
「私は若いんでまだまだ元気でーす。」
ビュオオオ・・・
ミカは魔法で風を操り空を飛んでいる。
「てめぇ、自分の足で歩けよっ!!ずるだぞ、ずる!!」
「なんでですかー?もしかしたら宝を守る世にも恐ろしい怪物が待っているかもしれないじゃないですか。だから体力を温存しとかないとー、ですよ♪」
ジュード「だったら俺も風で飛ばしてくれよ!」
「んーーーー、さすがに二人飛ばすのは魔力の消費が多くなるんでお断りします!
魔力も温存しとかないとー、ですから♪」
「ぐぐ・・・・。」
完全にミカにあしらわれてしまっているジュードである。
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ーーーそして、二人はついに宝の在処に辿り着いたのである。
そこには冬島には全く似つかわしくないほどの鮮やかな橙色の葉を生い茂らせた巨木が堂々と立っていた。
二人はその巨木の根元を掘ると、宝箱が眠っているのを発見した。
「宝だああーーーっっっ!!!」
「やったね、船長!!♪」
「!!?」
ズーーーーン・・・・ッッ!!
何かが、二人の元へ近づいてくる。
ズンッッ、ズンッッ・・・・!!
その足音は次第に大きくなってゆく。
二人は視界にとてつもなく巨大な黒い影を見つけた。
「・・・・来るぞっっーーー!」
「・・・・『防御呪文』!!」
ミカの魔法により、二人は体長4mほどの真っ白な毛に身を包んだ怪物の攻撃を防いだ。
「おいおい、なんだコイツは・・・。」
「やっぱりいたんですね・・・、怪物。」
「ぐわおおーーーーーっっっ!!!」
怪物のけたたましい叫び声が響き渡った。
「こんな奴に一体どうやって勝てばいいんだよぉっ!」
「何うろたえてるんですかっ、船長っ!」
ズンズンッ・・・
「おいおい・・・・あんな奴に敵いっこねぇよ・・・・。」
到底敵いそうにない怪物を目の前にして、ジュードの脳裏にはあの日の出来事が蘇っていた。
キャプテン・ジャッカルによって海賊団を壊滅させられ、仲間を失ったあの日が・・
ズンズンッ・・・・
『炎呪文』!!
ボウンッッ!!
ミカが繰り出した炎は怪物に対して全く効いていないようだ。
ズンズンッ・・・・・
(・・・あんな化け物にどうやって・・・
いや、でも待て・・・・・
ここで逃げたらまたあの日のように・・・・
仲間を、この新入りを失ってしまうんじゃないか・・・・?)
『雷呪文』!!
ビカーーンッッーー!!
シュダッ!
怪物は華麗に避けた。
ビュンッッーーー!!
怪物がミカに迫る。
「!!!」
(もうそんなのは・・・・ごめんだっっ!!)
ズバシュッッッ!!!
ガブッッッーーー!!
「・・・・・・・・ふぅ・・・・はぁ・・・・・」
ミカが目を開けると、信じられない光景が広がっていた。
ジュードの右手には剣が握られており、その先は確実に怪物の心臓を貫いており、
怪物の鋭い牙はジュードの首に突き刺さっていた。
ポタポタポタ・・・・
ジュードの首筋から流れ出すおびただしい量の血により、地面は見る見るうちに赤く染まってゆく。
「船長ーー!!」
「はぁ・・・はぁ・・・・よかった・・・・
今度はちゃんと・・・・・・
仲間を守れたみたい・・・・だ・・・・」
ドサッッ・・・
ジュードは地面に倒れた。
「うっ、うっ・・・・ぐすっっ・・・・船長、だめだよ・・・。死んじゃやだよ・・・。
私にとって初めての船長なのに・・・・うぅ・・・・」
「・・・・はぁ・・・・・・」
ジュードの息は絶え絶えとしていて、口を開くことさえも辛かった。
「・・・船長・・・・そういえば今日ってクリスマスイブだよね・・・。」
「いい子にしてたらサンタクロースからプレゼントもらえるんだよ・・・
だから・・・・・・・
私がサンタクロースになってあげるね・・・・」
ミカは涙を止め、何か決意した強い表情になった。
「・・・・それは・・・・どういう・・・・意味・・・・・」
ミカはジュードの体に両手をあてた。
「・・・・私の全身全霊をかけたプレゼントだから・・・・・」
ミカは目を閉じた。
次第にミカの体が淡い光を帯びてゆく。
「・・・・・!?・・・・・お前、まさか・・・・・」
ジュードはミカが今から何をしようとしているのか分かった気がした。
と同時に、嫌な胸騒ぎがした。
「・・・・しっかり受け取ってね・・・。 きゅぴ♪」
そこにあったのはミカの最高の笑顔だった。
「ばかっ・・・・・やめっ・・・・・・・
辺りはまばゆい光に包まれた。
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「深夜」
ー 海賊船 甲板 ー
ジュードは一人甲板で星空を見上げていた。
空はしんしんと雪を降らせている。
ホワイトクリスマスである。
「・・・・・・何がプレゼントだよ・・・・・。」
星が綺麗な夜である。
きっとサンタクロースもこんな日は気分よく仕事ができるのだろう。
「・・・・なんで俺なんかにお前の命くれんだよっっ!!」
そう、ミカが全身全霊を込めて行ったのは、己の命と引き換えに1人の人間の命に光を灯す
『蘇生呪文』だったのである。
「結局また1人になっちまったじゃねぇかよ・・・・
俺1人が助かっても意味ねぇんだよ・・・・・・」
「12/25 早朝」
・・・・わーー・・・・・わーーー・・・・
ジュードは甲板で目を覚ました。
「ん、もう朝か・・。気づかないうちに寝ちまってたのか・・・って、ん??なんか外が騒がしいな。」
わーーわーーがやがや
「・・・・!!??」
ジュードが船の外を見ると、そこには船に近づいてくる見覚えのある連中の姿があった。
「・・・・おい、まさか・・・・」
ジュードは急いで外に駆け出した。
この日、ジュード海賊団は見事復活を果たした。
かつてと全く変わらぬメンバーで。
ジュードは今、心からこう思っているーー
“ミカは俺にとってのサンタクロースだった”
ーーと。