次の敵
…
いやー。怪物さんは強敵でしたね。
激戦を制して残さず後片付けが終わったつう通常業務に戻ろう。
あー。通常業務…。嫌な響きですな。
いやいや。余計なこと考えていると死ぬぞ!主に精神的な面で。肉体的にはとっくに死んでるし。もう、ドキがムネムネしないんだなぁ。そう考えるとしんみりしちゃうね。
はー。なんか湿っぽくなっちゃったけど、武器を探さなきゃイケナイナー。ぶっちゃけ、ステゴロの方が強いんだけど、怪物に見られないようにしないとイケナイカラナー。
と言うわけで、今度はバックヤードに来てみました!ナイフショップで使えそうなものはほとんど回収しちゃったからね。
バックヤードでは主に鈍器が手に入った。
そんなわけで、こんな装備になりました。
ハンマー(大)×1
バールのようなもの×2
ククリナイフ×1
ちなみに、バールのようなものは名状しがたくはないのであしからず。
ククリは壊れていなかったのでそのまま腰の後ろにつけてある。バールはザックに適当にさして、ハンマーを手に持って出発する。
さて、また通路の掃除をしながらふらふらと進む。今度は聴覚と嗅覚を総動員して捜索をしている。
すると、どこかからすすり泣く声が聞こえてきた。もちろん、その瞬間位置の特定はできたので、真っ直ぐ向かうことにした。
うむ。迅速な行動は大事だからな。
音に近づくにつれ、異変が見えてきた。
バリケードが出来ている。生存者たちが隠れているのだろうか?
「おーい。助けに来たぞー!」
「あ゛ー。」
ん?バリケードの中から聞こえたんだけど…。
「逃げ遅れてる奴がいるのか?今助けるぞ!」
ハンマーを振り回してバリケードを破壊していく。
「あ゛ー!」
…なんだか、ゾンビの声がなにすんだって言っているように聞こえる。…気のせい?
「あ゛ー!あ゛ー!」
(何しやがる!止めろ!)
…気のせいじゃなーい!
ゾンビ語的な物なのか?もしやして、俺みたいに意思のあるゾンビとは意志疎通可能とか?あー。怪物さんとも話せたしな。うむうむ。どれ。
「あー。こっちの言ってることは解るかー?」
『おぉ!話ができるとは!とりあえず、バリケードを壊すのは止めてくれ!ゾンビが入ってきちまう!』
むぅ。そうか。下手に意識が残ってるから、現実を受け入れられないのか。ショックを与えて狂気に陥られるのも困るからな。ここはやんわりと行こう。
「そういうあんたも、もう腐ってるじゃねぇか。一回鏡でも見てみたらどうだい。」
良し。やんわりと伝わったはずだ。
『何言ってんだ。俺みたいなイケメンを捕まえて失礼な奴だぜ。』
「まぁ、冗談は良いとして、ここいらのゾンビは掃除してあるぞ。安心して良い。」
『はぁ!?信じられるかよ!』
イラッ
「ちょっとバリケードの隙間から覗くだけでわかるじゃねぇか。それに、奥にも彼女が居るんだろ?このままじゃ餓死しちまうぜ。」
『むぅ。それもそうか。ちょっと覗いて…ダメだ。なんだか知らないが、体がふらついて良く見えないな。』
イライラッ
「見えなくても、こうして落ち着いて話せるんだ。安全だと思って良いだろ?」
『いや、自分の目で確認しないとダメだ。』
イライライラッ
「どうしてもダメか?」
『ああ。ダメだ。』
「そうか…フンッ!」
ドカンッ!
どうせ見てる奴は奥のゾンビだけだし、本気で壊しにいって良いよねー。このゾンビが出てきたところで頭を叩き潰すだけだし。
…決して交渉にイラついてとかじゃないよ?そんな短気じゃないよ?
『あぁ!ばか!止めろ!』
「やめろと言われてやめる奴はいないってね。」
そう嘯きながら破壊を続ける。
『止めないならこちらにも考えがあるぞ!』
「ほー。その腐りかけた体で何ができるってんだ。」
『仕方ない…。』
その呟きから数秒後、目の前のバリケードが轟音と共に内側から吹き飛んだ。
いやいや。自分で壊してんじゃん。
残心を見ると、大声を出したみたいになってる。音で攻撃してくるのか?
…うはっ。体の組織がズタズタにされてる。回復しとこ。
『止めろって言っただろうがー!』
「おー。すまんすまん。でも、ほら。周りになにもいないだろ?」
『うるせぇ!これを造るのにどれだけかかったと思ってやがる!てめぇの命で償いやがれ!』
あー、まー。…ですよねぇ。言ってる意味はワケワカメだけど、問題はそこじゃないもんねぇ。これだけの武器を持ってても引きこもってたんだからなぁ。流石サイコさんだぜ!俺達に理解できないことをやってくれる!そこに痺れる!!憧れるぅ!!!
ふぅ。様式美、様式美。
さてと。雑魚だと思っていたキャラが、思ったより強かったでゴザルの巻、始まるよ!
『お前みたいのがいるからああぁぁぁ!』
うっさいな。攻撃も音だし、訳のわからん事を言うから、壊れたレイディオ君と呼ぼう。
レイディオ君は、こちらに走り寄り音波砲を使ってくる。
飛び退きつつ左手でズームパンチ!
顔の側、破裂した。
大体一メートル、内部が引き裂かれる。
三メートルぐらい、衝撃(強)。
それ以降、衝撃(弱)。
と言ったところか。
三メートル以内でくらうのはあまりやりたくないなぁ。感覚的に、全力疾走で壁にぶつかった位はあるからな。
うむ。指向性があるなら後ろから、なければ隙をついて攻撃するしかないか。
レイディオ君がまた大きく息を吸い込み、音波砲を撃ってくる。それに対し、左手をその場に残しながら右にかわす。
左手の肘から先に向かって衝撃を感じる。
大体、半径六十センチ位か。三メートル強の距離感だったから…sinX=60/300か?すると、角度は……解らん。そんなこと覚えてないぜ。
ま、範囲はそれほど広くない。避けて物理で殴れば良い。
そうと決まれば!
まず、左手を回復。
レイディオ君が音波砲を撃つのに合わせ、姿勢を低く保ち真っ直ぐ突っ込む。右手を引き絞りぶん殴る!ハラパンや!
その瞬間、レイディオ君の腹に口が発生した。
ヤバイ!と思う間もなく右手が弾かれる。視線を上げればレイディオ君と目が合う。
目と目が合うー瞬間すきーだと気づーいたー
何て言ってる場合じゃねえええええ!
左手で腰からバールを引き抜き、地面に突き刺して強引に横に飛ぶ。次の瞬間、今までいた所を衝撃波が通過する。
あっぶねー!
体に口が出せることは予想しておくべきだったな。まぁ、良い。口が小さくてちゃんと息を吸ってなかった分、弾かれるだけですんだからな。
さてと。どうしようかな。