silver network
私は、黒崎真。職業は「老人ネットアドバイザー」だ。
老人ネットアドバイザーとは、近ごろ増えて来た、ネットを利用する老人をサポートする仕事である。
今日もさっそくであるが、数分前に依頼が入ってきた。
なんでも「知り合いにメールを送りたい」のだが、送り方がわからないそうだ。
さっそく俺は、彼女のお宅へ向かった。
「どうもー。アドバイザーの黒崎です」
「おや・・・。ありがとうねぇ・・・。」
依頼人の女性は、お茶を出してくれた。だが、世の中こんな方ばかりではない。
俺が前に担当した女性は「遅い」などと言い、トラブルを解決した後に転び、その慰謝料を俺に請求して来たのだ。あぁ、考えただけでも寒気がする・・・。
とりあえず俺は、作業を開始した。
-----数分後
よし・・・終わった。
「終了しました。送信したい文章を言ってください。」
「ありがとう・・・じゃあ読みますねぇ。」
○ちゃんへ
おばあちゃんは、もうすぐ、みんなの知らないところへ行きます。
おばあちゃんがいなくなったら、おばあちゃんの家は○ちゃんの物になります。
大人が喧嘩していたら、○ちゃんはこのメールを見せてあげて下さい。
○ちゃんは賢いから、これからも精いっぱい生きて下さい
それは、自分の15歳の娘に向けた遺言状であった。
女性は、しわがれた声で読み上げた。
「・・・こんな、後味の悪い仕事をしてくれてありがとう・・・。」
「・・・いえ。それでは。」
女性は、ずっと手を振ってくれていた。