NO,6 「綺麗な秘密」
小屋の中に入るや否や、冷鷲は思わず歓喜の叫びを上げた。
「やっと、……やっと着いたぞっ!」
それは長時間にわたって森の中を彷徨い、モンスターと戦い、迷い、迷子になり、迷い、そして迷い、挙げ句のはてに幻想が打ち砕かれた……。
その全てを乗り越え、彼は今。
己が生きてきた証を眼にしているのだ。
……まあ、ゲームの中の話なのだが。
それでも、喜ぶなというほうが酷だろうというもの。
一頻り歓喜に打ち震えたところで、今度はじっくりと小屋の中を眺めてみる冷鷲。
端的に言ってしまえば、室内は埃一つ無いきれいな物だ。
勘の良いそこのあなたなら分かったかもしれないが、キャラクターの身嗜みに関するシステムまであるMSだ。
当然、そのキャラクターが拠点とするホーム(宿屋は関係なし)にも無駄にシステムが設定されてある。……その名も。
《整理整頓・お掃除システム》だ。
……だれとく? ……と、皆がそう思った。
だからあまりそのシステムを重要視する者は多くなかった。
しかしだ。このシステムを蔑ろにしたがために多くのプレイヤーが驚愕することになる。
それというのも、長い間ホームを清掃しなかった場合のペナルティーが半端ではなかったから。冗談抜きで。
その、ペナルティーとは、《ランダムボックス》と、《ランダムロスト》だ。
《ランダムボックス》はホーム内に設置してあるアイテムボックスの中身の並びが、めちゃめちゃになるというもの。
この嫌がらせ……は、ホーム内に設置されているすべてのアイテムボックスに適応されるため、いくつ者アイテムボックスを利用していたプレイヤーにとっては途轍もない悪夢だっただろうと容易に想像できる。
何を隠そう、冷鷲自身がその悪夢を体験したのだから間違いない。
武器をしまっているはずのアイテムボックスから防具が出てきたり、回復アイテムをしまっているアイテムボックスに何食わぬ顔で、毒薬が混ざっていたりと、ついつい運営を呪いたくなるほどだった。
それに加えて、《ランダムロスト》は、もっと酷い。
名前からも想像できるかとは思うが、このペナルティーは{物を無くす}という事象をゲーム内で発生させたのである。
鬼のようだ。
そう、皆が口をそろえて言う中運営はこう言った。
『このMSと言うゲームはできる限り、実際の世界を再現したいのです。そのためにはこの《整理整頓・お掃除システム》は必須だと言っても過言ではありません。寧ろ、この程度は当たり前。そう思い、より一層リアリティーを追求して行きたいと私共一同、日頃より強く考えております。そのためにも皆様にはまずこのシステムに慣れていただき、その後のさまざまな追加システムにご期待下さればと考える支台であります。』
……鬼のようだ。
と、だれもがいったそうな。
兎にも角にもそんな理由で小屋の中は埃一つ無い綺麗な状態だった。
「……少し休みたい……」
過去のことに思いをはせるのに満足した冷鷲は、そう呟いてからのろのろとベットがある寝室へと向かったのであった。